コロナ禍の小規模事業者が見せた驚異の回復力とは

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2020年、オーストラリアのメルボルンの中心街の風景は様変わりしました。カフェやレストランの窓には、事前に注文して店員と接触せずに注文品を受け取るよう促す手書きの貼り紙が掲げられています。また、小売店は閉まっており、買い物客は新しいオンラインの店舗を案内されるのです。オーストラリアのあらゆる通り、郊外、都市に混乱が広がりました。しかし、その静けさの中で、これらの企業からは「何とか切り抜けてみせる」という声が聞こえてきそうです。

オーストラリアの小規模事業者は、重なる危機によって大打撃を受けました。壊滅的な山火事の被害を受けた多くの企業が、今度は新型コロナウイルスで新しい困難に見舞われています。物理的な制約、国境封鎖、経済危機、繰り返されるロックダウン、これらすべてによって、今年は同国の小規模事業者にとって、これまでに直面したことのないような最も厳しい年となりました。

オンライン会計事務所であるゼロ・オーストラリアの最高経営責任者、トレント・インネス氏も、問題の大きさを理解しています。「全国の小規模事業者は、現在も続く新型コロナウイルスの混乱の中でビジネスの舵取りをしながら、不透明感が急速に標準となったまったく新しい世界に直面しているのです。」

小規模事業主の59%が、回復力を発揮している

しかし、小規模事業主がしばしばそうであるように、彼らは絶望の段階を経て、不屈の精神、度胸、そして希望を見せ始めています。「私たちは、生来の不屈の精神を持ち、事業主を務めるために要求され、また、事業主を務める中で育成されてくる、『改革を実践する底力』を目の当たりにしてきました」とインネス氏は言います。

新型コロナウイルスが小規模事業者に与えた影響を理解し、オーストラリア全土で芽吹く復活の兆しを明らかにするため、ゼロ・オーストラリアは英語の資料「オーストラリア再興リポート」を発表しました。このレポートの情報源の一部は、1,000社以上の小規模事業者を対象とした6月初旬の調査です。この調査では、61.6%の企業が新型コロナウイルスによって利益に悪影響が出たと答え、59.2%が新型コロナウイルスの大流行は短期的に悪影響をもたらしたとしています。しかし、ロックダウン規制の第1段階半ばという、このどん底の調査時期にあっても、小規模事業主の半数以上にあたる59%が、将来の新たなビジネスの機会に胸をときめかせていたのです。

その中で、残念ながら倒産した会社もありますが、ビジネスモデルを変えて目まぐるしく変わる環境に適応できた会社も存在しています。

これは、つまり、「回復力を発揮した」といえるでしょう。

目まぐるしい経営環境においても回復力を持つために求められる姿勢は、劇的な変化に備えることです。企業のスタッフとオーナーがチャンスをしっかりつかむ態勢を整え、ポジティブに対応するための業務システムを確立することを含めて、あらゆることに備える姿勢が、経営手法の一部となります。それは、事業継続計画、リスク管理の枠組み、および業務システムの基本にいたるまで、高い対応力と適応力を持とうと希求することにほかなりません。

強固な業務継続計画の重要性

今年の新型コロナウイルスの世界的流行と経済活動停止の教訓は、『企業が、様々な厳しい状況でも持ちこたえる底力を持たなければならない』ということです。制約や政策が日々変化し、時には予測不能なほど変わる中では、強固な業務継続計画の重要性がかつてないほど高まりました。誰も、今回の複合的危機を予想することができず、結果的に小規模事業者は、この危機によって将来の計画立案の再考を余儀なくされました。

「小規模事業者は、長い間オーストラリア経済の屋台骨となってきたため、新型コロナウイルスが大流行すると、その矢面に立ちました」とインネス氏は言います。

これは、新たな種類の「回復力の出現」を意味します。危機前に作成済みだった業務継続計画を支えにする場合も、あるいは、問題が発生してから対応する場合も、事業主はすばやく行動して状況を評価し、今までと違う将来に向けて勇気ある変化を起こす必要があったのです。

既存の知識とシステムを活用して新しい業務形態を始めたオーナーもいれば、新たなスキルを習得し、試行錯誤を通してチャンスを得る必要があったオーナーもいました。もちろん、どちらの戦略もすぐには結果の出ない、長期的な取り組みです。それでも、ゼロ・オーストラリアの調査は、すでにほぼ半数となる48.8%の小規模事業者が、この時代に経営の舵を取るうえで役立つように、ビジネスモデルを適応させたことを示しています。

新型コロナウイルスの災禍の中で、不幸中の幸いを見つけるとすれば、「現在、企業が模索している変化への対応は、新型コロナウイルスの大流行が収まった後も、長期的に成長し成功するために役立つことだ」と、インネス氏は言います。すべての小規模事業者は、それぞれに異なる特徴を持つため、危機への適応戦略も様々です。例えば、調査対象企業の4分の1は業務の変更によって適応したのに対し、34.9%は新たな小売市場を見つけて適応しました。そのような適応を完了、もしくは、適応を計画している企業の半数以上となる53.3%は、「こうした変化が、新型コロナウイルスが収束した後も続く持続的なものになる」と感じています。

また、デジタル技術のプラットフォームが、従業員管理と、新たな顧客基盤確立の両方の領域において、事業主にとっての業務改革の好機の1つとなったこともわかりました。例えば、小規模事業者の39.8%が「リモートワークに移行した」と回答しているのです。こうした転換には、各種のアプリ、製品、ツールが役立ちました。例えば、ゼロ・オーストラリアが運営するアプリ市場でも、eコマース用のショッピファイ、スタッフ管理用のデピュティタンダ、オンラインカード決済用のストライプをはじめ、ビジネスをオンライン化するためのツールが提供されています。

「オンラインにおける企業のプレゼンスは、あれば役に立つというものだった状態から、突然、絶対必要条件へと変わったのです」と、インネス氏は指摘しました。「そうしたオンライン・プレゼンスは、以前からすでに拡大傾向にありましたが、新型コロナウイルスの大流行のおかげで、小規模事業者によるデジタルトレンドの採用が一気に進みだしたといえます。」

新たな回復力によって将来を切り開く

オンラインで成功している小規模事業者の例として、インネス氏が引き合いに出すのは、食品デリバリーです。オンライン注文へのシフトと外部の配達パートナーは、客足が途絶えたレストランに新しい利用者をもたらしました。商業施設を利用できる卸売業者は、露天ではなく施設内で高品質な食品を販売する店を開き、「ダークレストラン」と呼ばれています。

インネス氏によれば、コロナ危機の中で成長したことが分かっている企業のうち35%が、今後3カ月でテクノロジー関連の投資をさらに増やす予定です。事業転換を完了、または、予定している企業の半数以上は、そのような自社の事業転換を、今後も持続する長期的変化であると、とらえています。

「オンラインで行動を起こすということは、単なる企業ウェブサイトの制作以上のことを意味します」と、インネス氏は語り、こう続けました。「それは、顧客獲得の拡大から、顧客へのサービス提供、支払プロセスなどの管理業務までのすべてをデジタル化し、事業主の日々の生産性を高めることなのです。」

インネス氏は、事業転換を図ったかどうかにかかわらず、不屈の精神で事業を続けているという点において、すべての小規模事業者が賞賛に値すると考えています。そして、次の段階における支援を目的に、ゼロ・オーストラリアでは、実践的な方法と励ましを提供する英語のガイドブック「より強くスマートに:スモール・ビジネスのためのハンドブック」を制作しました。

「ビジネスを新たな環境に適応させるにあたって、完璧には達成できないかもしれないと思っても問題ありません。特に、変わり続けることの大変さを考えれば、急速な回復期と停滞期があるのは当然だからです。しかし、この時期を通して学んだすべての教訓を活かすことで、今後とも、課題があっても前に進む方法を見つけることができるでしょう」

小規模事業者は大変な苦境に立たされていますが、それぞれが、今、進めている変化は、「新たな回復力によって将来を切り開く」という、次の課題に適応するために役立つはずです。楽観的な明るい兆しと前進の証しは、ゼロ・オーストラリアのレポートにも示されています。企業は、事業のオンライン化からデジタル決済の採用、仮想空間での顧客へのサービス提供、地域での新たな機会の把握などにいたるまで、この危機の終了後も長く続く新しいアイデアやシステムを開拓しているのです。

孤立と恐怖の時代にあっても、未来への希望のうねりがあります。それが、オーストラリア人の起業家精神に火をつけたのと同じ、回復力なのです。

インネス氏の言葉を借りれば、「この危機で分かったことが1つあるとすれば、オーストラリアは回復力を無限に持つ国だという事実でしょう。そして、これが最も顕著なのは、小規模事業者のコミュニティにほかならないのです」

 

この記事はThe Guardianに掲載され、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願い致します。