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「コンピュータ・ビジョン」で自社を変革できるかどうかを見極める

メインビジュアル : 「コンピュータ・ビジョン」で自社を変革できるかどうかを見極める

2000年代初頭、筆者がフォード・モーターズでカー・エンジニアをしていた頃には、すでに世界クラスの視覚システム技術が、プログラムと生産関係の各種用途で日常的に使用されていました。当時、解析関連の自動化は、まだ、その能力をフルに発揮する段階には達していませんでしたが、現在では実現しています。また、最近では、顔認証機能などを備えたスマートフォンの新機種も続々登場しており、ほぼすべてのスマートフォンユーザーはすでにコンピュータ・ビジョンを使用するデバイスを所有しているといえるでしょう。マシン/コンピュータ・ビジョンは、衛星地理分析、食品安全と食品加工、農業、AR、感情分析、医療診断、ロボット誘導、品質管理、交通調整、電気・水道・ガス、安全監視などの用途でも使用されるようになりました。

この技術が新しい分野で急速に勢力を広げる中、ビジネスリーダーは、自社のロードマップにコンピュータ・ビジョンが与えうる影響を考えてみる必要があります。そこで、現在見られる現実世界の使用事例を掘り下げてみましょう。なお、コンピュータ・ビジョンとマシンビジョンには微妙な違いがありますが、この記事では説明のために、事実上同一の用語として使用します。

基礎知識:コンピュータ・ビジョンはAI分野のサブカテゴリーの1つ

まず、AIの世界におけるコンピュータ・ビジョンの位置づけを、ざっと確認してみましょう。AIのサブカテゴリーであるマシンラーニングのさらにサブカテゴリーとして、ディープラーニングというものがあります。コンピュータ・ビジョンおよびマシンビジョンでは、通常、このディープラーニングのアルゴリズムを使用して、AIに学習させる視覚データの正しい重みづけとトレーニングを行いますが、特にマシンビジョンでは、希望の出力推論レベルに到達するために、各種のマシンラーニング手法を組み合わせて使用することもあるのです。ビジネスの観点からは、コンピュータ・ビジョンが現実世界での応用に向けて最も急速に成長しているAI分野の、サブカテゴリーの1つであるということを知っておくとよいでしょう。

マシンビジョンによって、ハードウェアは「視覚的に認識した」内容から、実際の環境の観察や解釈を行うことができます。これには、何らかの視覚システムからの入力が必要となりますが、この仕組みは、多くの業界ですでに数十年も使用されているものです。

企業にとって、売上高の増加は重要ですが、利益の増加も同様に重要です。実は、コンピュータ・ビジョンを活用することでその両方を実現できるため、この技術に対する市場の見通しはこれほどまでに明るいといえます。各市場調査会社の調査によると、2019年のコンピュータ・ビジョンのグローバル市場は100億ドルで、アイザではこの市場が2025年までに140~330億ドルに成長する見込みです。また、地域的には、アジア環太平洋地域と米国が、グローバル市場占有率で他地域をリードしています。

今、目を向けるべき理由: 市場推進力

私の妻はコンタクトレンズを使っていて、今週、ある業者に再注文を行いました。彼女は、その業者がスマートフォンやラップトップのカメラを使って直近の処方箋の情報を認識して注文を受け付けてくれる、といいます。これも、コンピュータ・ビジョンの応用です。

このケーススタディを詳しく見ると、すべての顧客にコンピュータ・ビジョン技術を提供するために、昨年12月、この業者がイスラエル系新興企業の6オーバー6 ビジョンという企業を買収したことが分かりました。業績が非公開のため、コンタクトレンズ業者のコアビジネスについての売上高への影響や利益への影響は想像することしかできませんが、このような規模と速度でこのような成果を会社にもたらす技術は、多くはないでしょう。もちろん、コンタクトレンズのような日用品は、わざわざ外出して病院に行かずにオンラインで注文するほうが便利だとしても、です。

同じく、コンピュータ・ビジョンのコア技術をエネルギー公益事業に使用した別の例では、グリッド監視のための画像認識、分類、応答時間が 80% 短縮され、グリッド上の検査範囲が 15 倍に拡大したケーススタディもあります。この技術には、もちろん、電力会社のエコシステムにもたらす日々の運用上のメリットがあります。しかし、それに加えて、山火事、洪水、停電、その他の重要な課題に対応するために複雑化したグリッド運用に圧倒されている地域に、プラスの恩恵をもたらすことを想像してみてください。

コンタクトレンズと電気・水道・ガスでは、まったく異なる業界ですが、コンピュータ・ビジョンの応用により両方に有意義な効果がもたらされています。また、これらは増え続けるケーススタディのうちのたった2つの例にすぎません。実際、コンピュータ・ビジョンの応用例は現在多くの分野で大きく増加しています。

では、なぜ「今」それが起こっているのでしょうか? それは、経済基盤に目を向けると、市場推進力が導入に関わる技術的障壁を上回っているからです。以下に、それぞれのポイントをまとめてみました。

コンピュータ・ビジョンの市場推進力

  • 検査、安全、およびセキュリティーの必要性の高まり
  • 日常業務活動を最適化する必要性
  • 利益を増加させるために自動化を拡大する必要性
  • 技術の購入および拡大コストの低下
  • 世界クラスのコンピュータ・ビジョンおよびマシン・インテリジェンス・アプリケーション構築にかかる時間の短縮
  • コンピュータ・ビジョンおよびAIアルゴリズムの精度向上
  • 製品開発に資金を提供する資本市場の活動の活性化
  • 新型コロナウイルスが世界的に流行しリモートワークの必要性が高まる中で、この技術が離れた場所での出来事を働く人が「視認」するソリューションを提供しているという事実

採用の障壁

  • 意思決定者である企業幹部の勉強不足による、組織に対する著しいプラス効果の啓蒙の不徹底
  • コンピュータ・ビジョンの専門企業が、依然として適正価格を検討中であることに起因する、標準的なビジネスモデルの不在
  • 正しい構築や拡張が容易ではないことから生じる、スキルの高いチームの必要性
  • 中小企業の全社的な開発および導入を阻む、依然として高い初期段階のコスト
  • リアルタイム処理に求められる高品質の通信接続の必要性

コンピュータ・ビジョンの将来性

デジタル医療や遠隔医療分野でも、コンピュータ・ビジョンの応用のさらなる進歩が見られます。人的交流に関する新しいルールが、対面での健康診断に影響を与えていますが、コンピュータ・ビジョンは、さまざまな医療診断および一次診療オプションで医療提供者を支援できる優秀なソリューションだからです。また、放射線画像の解釈などの臨床診断でも使用されていますし、バイオテクノロジー分野では、遺伝およびプロテオーム解析でもコンピュータ・ビジョンが人気を博し始めています。さらに、農業技術分野では、トラクターで知られるジョン・ディアーなどが技術買収を行っており、農業従事者がアプリケーションを活用して、わずかな時間とコストで農作物や収穫量を評価するといった、流行の最先端を行こうとしているのです。こうした動きが広がれば、世界の食糧供給と食糧不足緩和にも多大なインパクトを期待できるでしょう。

成功させる真の要因は「現在の企業文化に合っている」かどうか

あなたと御社が、イノベーションと変革を実施するためのプロセスをまだ持っていないのであれば、今が最高のタイミングです。コンピュータ・ビジョン分野のリーン開発やアジャイル開発に関して多くの情報が提供されており、まさに、そうした開発に役立つデザイン思考の構成概念もあります。また、既存のコンピュータ・ビジョン技術で使えそうなものがある場合は、パイロット版で小規模に始めて、そこから広げていきましょう。さらに、あなたが組織の幹部であるならば、イノベーションが最も影響を与えるのはどの事業部門か、そして、どのように事業部門内や事業部門全体で適切に実施するかを、常に考慮する必要があります。企業のDXでは、技術よりも人材管理のソフト面に対処すべきハードルが多く存在しますが、筆者の経験上、技術が制約になることはまずありません。採用を成功させる真の要因は、それが、現在の企業文化や、利用とする文化に適した導入になっているかどうかです。あなたの部下やチームは、生活をより良くするすべてのツールと同様にコンピュータ・ビジョンを気に入るはずですが、経営陣に対してDXを実施するとなると、微妙な違いもあったりします。

根回し段階で、自社にとっての新たな機会の推進にAIの応用が役立つ領域や方法についての検討、またはブレインストーミングを行っている場合は、自然の仕組みを思い浮かべてください。自然からの学びは、応用を理解する最適な道筋となるからです。本当に自問自答すべきは、視覚、触覚、聴覚、嗅覚、味覚などの五感を、ほぼ無限の計算機能力と組み合わせた場合に、コアビジネスの機能を変革するうえで、どこにコンピュータ・ビジョンを利用できるのかということになります。もし、あなたの会社が変革を実現するために視覚技術を必要とするならば、組織の継続的なイノベーション・ジャーニーの重要なポイントとして、コンピュータ・ビジョン技術を使ってその自動化を合理化する方法を見つけることができるといってよいでしょう。

エイドリアン・ウォーカーはAI戦略と製品開発を専門としており、現在、マシンビジョンおよび自律システムの企業であるアイザCEOと、できたばかりのベンチャー企業テレスコピック・ベンチャーズの業務執行社員を務めています。それ以前は、自動車エンジニアおよび公共施設検査品質エンジニアでした。

 

この記事はVentureBeat向けにエイドリアン・ウォーカーとアイザが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願い致します。