【中国Watch】加速する「新基建」への投資、5Gに10年間で45兆円

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中国政府が本腰を入れる経済対策のキーワードとして、「新基建」が中国ウォッチャーの注目を集めています。「新基建」は、新型コロナウイルス後の立て直しという名目を掲げることで、中国経済と技術発展をけん引する存在になっています。このような背景から、新基建に関する投資は間違いなく加速していくことが考えられます。

目次


投資計画で重視される「新基建」、5Gに10年間で45兆円

では、具体的にどれぐらいの投資が行われようとしているのでしょう。中国銀行研究院の調べでは、2020年の1年間に行われる投資額は都市間鉄道で6200億元(約9兆3000億円)、5Gで3000億元(約4兆5000億円)、超高圧送電線で1500億元(約2兆2500億円)等、新基建で1兆2000億元(約18兆円)を超えると予測しています。

もちろん、投資は1年で終わる訳ではありません。例えば5Gの基地局は、中国工業情報化部のデータによれば、2019年までに13万個建設されましたが、2020年には70万個、2022年には110万個の建設が予定されていると言います。中国情報通信研究院は、2020~2030年の10年間で、5G関連の投資はトータルで4100億ドル(約45兆円)を上回るだろうと予測します。これは4G関連の投資の3.5倍の規模です。

絶対額はそれほど大きくありませんが、産業インターネットも安定的に成長が期待されています。産業インターネットは、中国製造2025の重大プロジェクトとして掲げられている「スマート製造」を実現するための基盤となります。中国工業情報化部傘下のコンサルティング会社CCIDによれば、産業インターネット関連の市場規模は2020年が約7000憶円。今後10年間は安定的に年15%程度の成長が見込まれ、その結果、2025年には約1兆4000億円、2030年には約2兆8000億円にまで市場が広がると予測します。

2020年に入って新基建という言葉が国内政策において何度も言及されたことをうけ、各地方政府は2020年の主要なプロジェクトにおいて新基建を重視した枠組みを作っています。また、全人代の方針を受け、今後の投資計画においても随所で新基建が重視されるでしょう。例えば四川省の省都である成都市は、全人代の最終日にあたる2020年5月28日に会見を開き、新基建に関する34のプロジェクトを発表しました。その投資額は、合計で180億元(約2700億円)に上ります。

参入を狙う外資企業が急増、日本企業も波に乗るためには

このように巨大マネーが動くため、中国企業は新基建がらみの産業育成に多くの期待を寄せています。例えば、通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)。米中対立の最前線にいる同社は厳しい環境にいますが、新基建を背景にして、これまでの通信設備の供給はもとより、AI家電等の新事業、新エコシステムを構築・推進することが肝要だと判断。今後5年間で、新基建を推進するために5000億元(約7兆5000億円)を投入することを決めました。

もちろん中国企業だけでなく外資企業も多くの期待を寄せています。新型コロナウイルスが既に終息していると断言している中国では、経済活動もいち早く始めており、グローバル企業であれば活動を再開するには格好の場となります。一方で、中国としても外貨は少しでも稼いでおきたい所。このため新基建において、自社の技術が何に役立つのかをアピールする外資企業が多く出てきました。

そこには日本企業にも多くのチャンスがあります。新基建の波に乗るには、新基建の動向に目を配り、主要地域におけるプロジェクト等に注意を払うことが必要となるでしょう。

新規参入に重要な3つの技術領域

新基建では、新たなデジタルインフラを創出するために、新たな技術が必要となります。市場に進出するためには、中国企業と組んで出る必要がありますが、重点領域は3つあると考えられます。

1つは、新基建を支えるための半導体や端末。例えば、5Gでネットワークを構築するためにはネットワーク機器や端末が必要となりますし、基地局用のパワーアンプやプリント基板も必要になります。またAI制御やIoT端末には、専用の半導体を搭載しなくてはなりません。現在、中国では国策として半導体産業の育成に力を注いでおり、半導体自給率を2025年には70%まで高める目標を掲げています。とはいっても、中国が自給自足を達成するまでに不足している部分はまだまだあるのが実情です。

2つ目は、プラットフォーム。データセンター用や各種の5G基地局用、また産業インターネットに接続される各種機器用等、幅広い用途のプラットフォームが必要となります。コンピュータというハードはもとより、データ管理やセキュリティの確保等、用途ごとに様々な要求を満たさなくてはならず、プラットフォームとして確立するためには、経験が必要とされる領域です。

そして最後は、アプリケーション。良いハードが用意されていても、サービスとの組み合わせがなければ、期待する効果は何も得られません。必要とされる要件を正しく実装できるアプリケーションの存在が不可欠となります。

リーマンショックの際の経済対策は、不動産バブル等のマイナス面を中国にもたらしました。その一方で、例えば新興産業の1つとして指定した新エネルギー車に関しては、この10年間で見事に花開き、今や新エネルギー車大国となっています。この事実に代表されるように、中国には全てを覆すパワーを秘めており、新基建がグローバル経済の姿を大きく変える可能性をも持っています。中国市場への進出を検討するかどうかに関わらず、新基建が中国経済にどのように貢献し、グローバルにどのような影響を及ぼそうとしているのかは理解する必要があるでしょう。

著者情報
木村 知史

日経BP 総合研究所 上席研究員

1990年、日経BP社入社。「日経メカニカル」編集記者として、主に先端の加工技術および生産管理システムの分野を取材・執筆。その後、CAD/CAMやSCM等製造業におけるコンピュータ技術の活用誌「日経デジタル・エンジニアリング」の創刊に参画。2008年1月、Webサイト「Tech-On!(現日経xTECH)」編集長。2012年7月、「日経ビジネス」編成長、2014年1月、「日経ビジネスDigital(現日経ビジネス電子版)」編集長。2019年1月、「日経ビジネス電子版」を企画・立ち上げ。2019年4月より現職。大手企業のコンテンツコンサルティングや「Beyond Health」等のメディアのコンテンツ企画を担当。