本格的自動化時代の到来、次の10年を乗り切るヒント

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COVID-19とも呼ばれる新型コロナウイルス感染症が終息しても、社会や生活のあり方が、すっかり元どおりになるというわけにはいきません。たとえば、何千人もの人々が長時間密接して座るスポーツイベントやコンサートは、当分、行われないでしょう。開放的なオフィスの間取りも、過去の遺物となることが考えられます。先ごろニューヨーク・タイムズでも指摘されましたが、これまでは当たり前だった経済が終わりを告げようとしているのです。

今、我々が目にしているのは、サバイバルのために急激な変化を要するような危機的状況の喩えである「燃え盛るプラットフォーム」の縮図だといえます。まるで戦時中のような雰囲気が漂う今、世界各国で国民皆保険制度やベーシックインカムの導入といった変化が、にわかに現実味を帯びてきました。

引き返すこともできず、将来に目を向けても次に何が起こるのかさえ不透明で、見えてくるのは根本的な不確実性と、現時点で考え得るシナリオだけです。まさに暗色のガラスの向こうを透かし見ているかのように思えます。

社会が「ニューノーマル」、つまり、次なる日常へと向かう中で、今後数年間は深刻な景気後退に見舞われ、激動の情勢が続くことでしょう。私たちにわかるのは、仕事や生活をするうえで新たなトレンドが生まれてくるのと並行して、現在の流れも純粋に経済的必要性によって変化が加速されていくだろうということです。こうした急速な変化の中には、企業におけるDXや業務の自動化の加速も含まれます。

その間にも、コンピュータービジョンやIoTセンサーアレイ、そして広範囲にわたる接続性の実現によって促進されたAI主導型の自動化が、生産プロセスにおいて人間を置き換えていく流れに拍車をかけるでしょう。なぜなら、単にそれらの作業が自動化技術で代替できるようになっただけでなく、人間とは違ってマシンならば、病気になることも、ストライキを起こすことも、生産を止めることもないからです。

最近発生した、自動化率の低い食肉加工工場の閉鎖の例は、この問題を浮き彫りにしています。「システム全体が、連鎖的に台無しになりました。農場や加工業者のみの部分的な影響には留まりません。すべてがチェーンのようにつながっているので、どこかで発生した問題が、全体に波及するのです」と、アイオワ州立大学の農業経済学者であるダーモット・ヘイズ氏は、USAトゥデイの記事で述べています。

2025年:AI主導型の自動化がニューノーマルの要素に

DXが加速することによって、数年後にはそのようなチェーンの様相がガラッと変わっているかもしれません。現に、雇用する人員を抑えて高度に自動化された食肉加工工場は、閉鎖することなく営業を続けています。より完全な自動化を達成した食品サプライチェーンならば、店舗の棚から商品が消え、フードバンクに長蛇の列ができ、田畑では作物が腐りかけているような光景を、将来的に減らせかもしれないのです。そのため、今後5年間でAI主導型の自動化は格段に進歩し、ニューノーマルの特徴を色濃く反映するようになるでしょう。

先行する例としては農場に関する話から始めると、ドローン、トラクター、センサーをはじめとする7,500万ものコネクテッド型農業用デバイスが、すでに大量のデータを生み出しており、農作物や土壌の分析や洞察に役立っています。たとえばベア・フラッグ・ロボティクスでは、自律走行型のトラクターとコンピュータービジョンを組み合わせて、運転手がいなくても現場で24時間稼働できるシステムを作り出しました。このシステムに採用されたセンサーは、公道を走る自律走行車に搭載されているのと同じような製品です。

また、ネイチャー・フレッシュ・ファームズの従業員は、自動化のおかげで、185エーカーにわたる温室の通路を巡回して作物が熟したかどうかを確認する必要がなくなりました。代わりにロボットカメラが作物の画像を収集し、そのデータをAIのアルゴリズムで解析します。すると、花から完熟の野菜へと変化する正確な時期をはじき出してくれるのです。

作物の収穫や選別にも、AI主導型の自動化が活用されています。より大量の作物を、これまで以上に迅速に収穫したり、雑草をより正確に見分けて取り除いたり、コストを削減したりといった目的で、通称「アグリボット」と呼ばれる農業用ロボットの利用が始まっているのです。たとえば、ハーベストCROOロボティクスでは、イチゴ収穫用のアグリボットを開発。また、BBCテクノロジーズでは、1秒間に最大2,400粒のブルーベリーを分類・選別するために、コンピュータービジョンを利用しています。これにより、1週間以内に食べるべきものと、南米から米国への長距離輸送に適したものとを瞬時に判定できるようになりました。

農場や牧場以外では、小売業者も顧客の希望を正確に知ることができるようになるでしょう。つまり、どの商品が、どれだけの量、どこに、いつ必要かといったようなことが事前にわかるのです。それらのアプリケーションの多くは、今も成熟度合いや導入の進捗の面では初期段階にありますが、今回の非常事態による自動化へのニーズが急速な進歩の原動力となり、数年以内にはより成熟し、過酷な運用にも耐え、幅広い実装が実現するような状態へと近づける可能性が出てきました。おそらく2025年までには、アグリボットや「完全自動」倉庫無人レジ、そして自律走行車による宅配が、「珍しいもの」から「ありふれたもの」へと変化していることでしょう。

業界や社会への広範な影響

この危機的状況によってAIの導入や自動化が加速される業界は、食品関連だけではありません。同様のトレンドが、銀行小売消費財保険製薬などさまざまな業界で起こっているからです。

コンサルティング会社のバイン・アンド・カンパニーが、世界中で800人近くのエグゼクティブを対象に行った調査では、自動化技術を拡張する企業の数が今後2年間で2倍になると推定されています。同社は「多くの企業が新たな日常業務に適応し、差し迫った景気後退への準備を整えている。その中で、数か月前までは何年も先になるだろうと考えていた自動化ソリューションの実現が、突如としてすぐそこまで迫りくることになった」と指摘しており、そうした自動化の取り組みを加速させる計画を立てているメーカーには、LGエレクトロニクスVW、現代自動車などの大企業が含まれているのです。

AI主導型の自動化が仕事や労働者にもたらす影響についての議論は、それが起こる時期や範囲を含めて、これまでのところ概ね理論上の仮説の域を出ていません。というのも、今までは、業界のサプライチェーン全体にわたるほどの大規模な自動化など、技術的に実現不可能だったからです。しかし、状況は目まぐるしく変化しているうえ、この危機的状況によって、企業は生き残りをかけた問題として低コスト・高効率のテクノロジーの採用を進めざるを得なくなります。その結果、こうした自動化が進めば、多様なシステムが強い回復力を備えることになり、将来のパンデミックや予測不可能で甚大な被害をもたらすような状況にも、よりうまく対処できるようになることが期待されるでしょう。

マイクロソフトのCTOであるケビン・スコット氏は、今後の雇用に関して楽観的な見方をしており、AIが新たなチャンスを生み出すはずだと主張しています。同氏の見解は、AIやロボット工学が経済的成長を促し、ありふれた、退屈でむなしい作業から人々を解放すると同時に、人間には新たな役割が生まれるはずだというものであり、彼のほかにも同様の未来を信じている人々は少なくありません。しかし、今はまだ、それらの新たな役割が具体化していないのに対して、自動化自体は、現在の危機的状況が後押しとなって加速度的に前進するものと思われます。

いずれにせよ、待望されている新たな職種も、近い将来には必ず出現してくることでしょう。たとえば、レッドランズ大学の経済学教授であるヨハネス・モエニウス氏は、景気回復後に企業が必要とする労働力は、これまで必要とされた労働力とはまったく違ったものになりそうだと述べています。これからは、自動化ツールを開発し、管理できる技術的能力をはじめ、ソーシャル、コラボレーション、デザイン面でのスキルを兼ね備えていることが、ますます重要になるだろうということです。

AIは、過去70年間にわたってさまざまな形で存在してきましたが、これからの10年が本当の意味で表舞台で活躍する時代の幕開けとなり、専門職のような状態を脱して、業界で広く採用される存在へと大きな進化を遂げるはずです。そして、このAI自体の変容が、社会に大きな影響を及ぼすものとなっていくことでしょう。

ゲイリー・グロスマンは国際的なコミュニケーションサービス企業、エデルマンのテクノロジープラクティス担当シニアバイスプレジデントであり、エデルマン・AIセンター・オブ・エクセレンスのグローバルリーダーでもあります。

 

この記事はVentureBeatの向けにエデルマンとゲイリー・グロスマンが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。

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