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製造業がスマート工場を実現する3つのポイントとは

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目次


この記事はFujitsu Blogに掲載された「Three ways for manufacturers to make the smart factory a reality」の抄訳です。
本記事の文中のリンクは英語ページに推移します

スマート工場実現への障壁とは

伝統的な工場を思い浮かべてみて下さい。たぶん、工業団地の静かな一角に立っている巨大な建物をイメージするのではないでしょうか。ここで重要なことは、これまで工場というものが、製造業の他の部門から切り離され、孤立して存在しがちであったという点です。これは単に「位置関係」だけではなく「運用」、そして最近では設備やシステムを最適に動かすための「制御・運用技術」、さらには「ITネットワーク」についても言えることです。

近年、製造業ではそのような工場のモデルを変えようとする動きが見られます。先行き不透明な経済情勢の中、企業は工場内での効率性と生産性をさらに向上させる必要があります。また消費者は商品について、原産地や企業のサステナビリティ等、将来に渡って存続可能なビジネスを行っているかどうかにも、これまで以上の関心を寄せています。つまり目先の利益を優先するだけでなく、環境や社会に配慮することが、企業にとっては、商品と共にサービスを販売する、全く新しい収益の流れを推進するチャンスでもあるのです。

このような機会を利用するために、製造業は今、自社業務をデジタル化し、実用価値のあるリアルタイムデータを生み出そうとしています。言い換えれば、スマート工場を構築しようとしているのです。それは隔離されて片隅に存在するのではなく、コネクテッドエンタープライズのど真ん中に位置するものです。ブロックチェーンから量子コンピュータに至る新たな技術もまた、この領域において新しいチャンスをもたらしています。

ただ、スマート工場構築とは段階を経て越える道のりであるため、最適な進路を見出すのに困難をきたすことがあります。富士通フィンランドの最近のリサーチによると、調査したメーカーの58%が、現在の景気状態でスマート工場に取り組むには、コストが最大の障壁であると述べています。ここで注目すべきことは、現時点では大半の(56%)スマート工場プロジェクトがいまだ投資利益をあげていないという点です。このような実情が、プロジェクトの進展に歯止めをかけているのかもしれません。

この記事では、最新の技術を活用してトレンドをつかむことにより、スマート工場が製造業により有意義な価値をもたらすための3つのポイントを探っていきます。

「繋がること」と「効率化」がスマート工場実現のカギ

「繋がること」から生まれる、消費者への新しいサービス

工場がインターネットで人や企業、技術等と繋がり、新しい価値を生み出す「コネクテッドファクトリー(connected factory)」。その構築は、製造業が消費者に全く新しいサービスを提供する機会をもたらします。

実際、企業がスマート工場の取り組みとして掲げる最も共通した社外目標は「顧客体験価値の向上」(62%)です。もちろん、その形式は対象顧客によって異なります。そして、消費者が、個人の好みや仕様に合わせたコンテンツや経験、機能を提供してくれる生産者や企業に魅かれるようになるにつれ、市場のパーソナライズ化が高まる傾向にあります。

そのような動きの中で、Lot Size One(一品生産)の実現、つまり、企業が顧客一人ひとりの要望に沿った製品やサービスをカスタマイズ生産しながらも廉価で提供することを実現するには、工場における接続性(connectivity)と効率性(efficiency)の両方が重要なポイントになるでしょう。製造業者の半分弱(47%)が、製品をより効率的にカスタマイズすることを目的に、スマート工場化を推し進めています。

この接続性は、製品独自のセールスポイントを消費者にもたらすという面でも役立っています。例えば、Jim Beam社では、ウィスキーを樽の中で数年ねかせ丁寧に熟成させていますが、今日、IoTを活用して個々の樽の生産状況を監視するだけでなく、消費者にその来歴も提供することが可能になっています。

一方、B2Bの分野では、しばしばメーカーの競争力がservitization(商品や製品と共にサービスを販売すること)から生まれることがあります。製品を売ったら終わり、ではなく、製品販売後のサポートやフィールドサービス、製品や部品の購買後のas-a-Service(製品機能のサービス化)型サプライが、製品の差別化要因になりえるのです。

このLot Size Oneとservitizationのいずれの場合も、工場と企業の間の「繋がり」がカギとなります。消費者が商品購入を決定する際には、その有用性や物流について、より詳細な情報が必要となります。工場側も、より高度にカスタマイズした商品を提供する必要があります。そこで、企業と消費者の間のニーズを適格に満たすことにより、スマート工場の導入は双方の関係性を発展させるチャンスを提供してくれるでしょう。

機械学習や量子コンピューティング技術の活用で工場の「効率化向上」

歴史上、どのメーカーも経営効率の改善を追求してきました。その結果、スマート工場に取り組む上で、企業は共通して製品の品質改善(50%)を最大社内目標に掲げ、その次に資産活用の改善(47%)を掲げていますが、これは当然と言えます。

特に、技術性の高い製造業では、時間とコストがかかってエラーが発生しやすいプロセスにおいて、人の手でチェックを行うことがよくあります。これは、風力タービン等、例え最小の歪みでも大惨事を引き起こしかねない一部の製品にとって、特に重大な問題となります。

品質管理のプロセスは、画像ツールと機械学習によって自動化することができます。X線のような画像は、異常検出や時間節約のためにアルゴリズムによって検査することができます。

Siemens Gamesaはこのアプローチを導入することにより、大きな恩恵を得ました。同社では、風力タービンの製造過程に、機械学習をベースにした品質コントロールシステムを導入した結果、X線でのスキャンチェックに要する時間を約6割短縮したのです。

また、新しいコンピューティング技術を用いて大幅に製造現場での生産性を向上させることもできます。従来、製造業ではコンピュータによる「組合せ最適化」(例えば2台のロボットに、最も効率的に自動車の塗装や溶接をさせるための最適なルートや手順の計算)のような課題を苦手としていました。

しかし、今日では、ロボットシステムの処理能力を最大化し、リアルタイムで答えを出すことができる、量子力学に着想を得たコンピューティングシステムの活用が可能です。富士通のある工場では、部品回収作業での移動距離を最高45%まで短縮しました。このようにパフォーマンスを向上することで、スマート工場を真の意味で「スマート」にすることができるのです。

「追跡可能」「持続可能」であることが消費者の信頼を得る

メーカーにとってもうひとつの優先事項は、責任ある企業であることの実証です。今日の消費者はいままでになく、商品の原産地や製造方法に関心をよせています。また、サステナブルに入手、生産された製品に対しては、より高い金額を払うこともためらいません。

一方、規制基準を満たすための生産履歴管理(traceability)が重要となることもあります。そして、食品のような生産品については、原産地によってより高い価格を設定できることがあります。

ブロックチェーンは、原材料から完成品までの製造工程を追跡するための強力なツールです。書き換え不可能な台帳であるブロックチェーンを活用することは、製品情報が厳重に守られ、サプライチェーンのいかなる時点でも情報を書き換えられないことを意味します。従って、消費者は安心して商品を購入できるのです。

食品の場合、ブロックチェーンの活用により、消費者は農場から食卓まで、たどった経路を追跡できるようになります。また、肉や大豆、アーモンドといった一次生産品目が倫理的、かつ持続可能的な方法で栽培されたかどうかも確認できます。このように、スマート工場により、製造者が商品の品質や社会的に責任ある方法で製造したことを積極的に紹介することができます。

初めに投資対効果を明確に定義することが重要

スマート工場の取り組みは、ビジネスに長期的な収益をもたらします。その反面、投資利益を早く回収しようとする今日の風潮においては、かつてないほどの大きなプレッシャーがあることも事実です。だからこそ、初めから投資対効果を明確にすること、つまり、会社にとって有利で有価値な実際の効果を当初から定義することが重要になります。

ある製造業者では、試験的にテクノロジーを導入し、広範囲な評価が可能になるように、多くの工場で使用できるスマートソリューションをうまく機能させることを意味するかもしれません。別な企業では、すでに環境が整っているシステムを最も有効な形で活用するために、小規模な追加投資を行うことを意味しているかもしれません。

例えば、工場全体のOT(操作技術)システムやITシステム、及びデータセットがリンクされていないと機会損失に繋がりかねません。よってソフトウェアレベルでの統合向上が、効率性または、製品の品質の大幅な向上に繋がる可能性があるのです。

何においても、慎重なプランニングが大切です。新しい技術の可能性を理解しているだけでなく、より広く製造現場を理解している外部の専門家から支援を得ることが大変役に立ちます。

スマート工場を事業の中心に据えて競争力の向上を

スマート工場を作ることは生易しいことではありません。厳しい経済状況の中では、つい新しい技術への投資を見合わせ、新しいソリューションの導入で予期される複雑な課題を避けようとします。

しかし、生産の合理化や効率化の面から、世界中の消費者の期待の高まりに応えるという面まで、全てにおいて、スマート工場の開発は、製造業の競争力を著しく高めることになるでしょう。

今こそ、競争上の優位性を獲得する時です。ネットワークに常時接続され、互いに情報を共有し合いながら連携して生産を行うスマート工場は、製造業が成功するための重要なポイントとなるでしょう。