フィンテックが拓く未来の資産管理

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資産管理業界は、フィンテックの隆盛をもはや無視できません。2010年以降、投資家たちはフィンテック市場に1,000億ドル以上をつぎ込んでおり、2019年の第1四半期の投資額だけでも60億ドルに達しました。これらの資金は、ロボアドバイザーと呼ばれる投資アドバイスの自動化技術や投資アプリなどに使われ、ミレニアル世代が個人的な投資を効率化するのに役立っています。このようなフィンテックの新しい動向に私が初めて気付いたのは、10年ほど前でした。そして、今見えてきたのは、フィンテックが将来の資産管理を形作っている姿です。

私は以前に予算管理の良い方法を必要としていたことから、エクセルのマクロをいくつか作成した結果、スタートアップに使えるアイデアの種ができたと思っていました。ところが、それを友人に見せたところ、その友人は即座に、ミントという会社について聞いたことがあるかと私に尋ねたのです。そこで、当時はまだ誕生したてだったミントの財務管理アプリについて調べてみると、私のマクロが処理していたことのすべてを含み、さらに、それ以上の機能を持っていることが判明しました。そのときは、ほんの初期段階でしたが、すでに資産管理に破壊的な改革をもたらす可能性があることは明白でした。金融系企業はフィンテックを活用しビジネスの強みに

ミントや先駆けとなったその他のフィンテック系のアプリが資産管理業界に対して初めて示したのは、このようなテクノロジーの価値が、紛らわしい作業をある程度わかりやすくする能力にあるということです。グローバルな金融危機によって銀行や金融機関の信用が急落した直後に、フィンテック業界が最初に業界のけん引力を獲得したとみなされるのも、そうしたテクノロジーが持つ力を考えれば不思議ではありません。

ロボアドバイザーが、消費者に対して、わかりやすいインターフェースや利用可能なツールを初めて提示したとき、テクノロジー主導による投資アプローチの価値はすぐに実証されました。その価値を最初に実感したのは、それを利用したユーザーだったかもしれませんが、今では業界全体がそのことを理解し恩恵にあずかっています。

資産管理において広がるフィンテック利用

10年前まで資産管理業界は、テクノロジーに対して、ある程度の抵抗を示していました。それ以降、テクノロジーに対する熱意の高まりと導入の広がりが見られるようになってきましたが、資産管理におけるフィンテックのイノベーションは、それでもまだ初期の段階にあるといえます。

業界はこれまで、フィンテックから得られる利便性とアクセスのしやすさを重視してきました。しかし、そこからさらに前進して、ビッグデータ、コネクテッドデバイス、AIを応用することによって、画期的で新しい方向にその用途が広がっていくことを想定する必要があります。今後は、保険から資産計画、株式報酬にいたるまで、あらゆる分野でイノベーションの準備が整い、変化が急速に進むことが予想されるからです。

フィンテックがどのように進化していくのか、正確にはわかりませんが、資産管理に関する大まかなデジタルトレンドのいくつかは予測できます。たとえばある調査によると、回答者の75%は、フィンテックの送金サービスや、ペンモなどの支払サービスをすでに試したことがありました。テクノロジーがさらに使いやすくなり、より多くの消費者が利用するようになると、その数値はさらに上昇することでしょう。また、消費者がすでに親しんでいる使いやすい機能に関しても、フィンテックアプリを支える企業がアップデートや追加機能をリリースするにつれて、さらに優れたものとなっていきます。

資産管理のあり方を変え、アドバイザーの役割をより良いものに

テクノロジーによって、基本的なサービスが無料または低価格化することで、ロボアドバイザーによる投資アドバイスの企業向けの提供料金が引き下げられると、そこから派生する顧客向けのコンサルティング料金も安くなります。そのことを考慮すると、ロボアドバイザー業界が2020年までに概算で2兆ドルの資産を引き受けるとの予測も不思議ではありません。

コストを下げ、金融サービスの複雑さを低減することによって、フィンテックは、社会の中のより幅広い層に浸透していきます。過去に企業は主に富裕層と取引していましたが、こうした新しいテクノロジーのおかげで、業界はあらゆる財務環境の人々を受け入れるようになったのです。

資産管理のデジタル化により、資産マネージャーの仕事の80%程度は自動化できるものと思われます。しかし、だからといってアドバイザーの意義が失われるわけではありません。テクノロジーは、優れたツールを提供してアドバイザーの能力自体も高めてくれるからです。そのため、アドバイザーは、自らのサービスが持つ真の価値、つまり、顧客のニーズとウォンツに対する深い理解と価値ある関係の構築に、一層集中できるようになるでしょう。

自動化の面で、アドバイザーは、複雑な仕事をより迅速かつ正確に実行できるようにもなります。同時に、より多くの顧客にサービスを提供することが可能となり、最終的に多くの顧客が満足してより多くのサービスを利用するようになれば、収益の拡大につながるのです。

金融系企業はフィンテックを活用しビジネスの強みに

ほとんどの企業は、依然としてフィンテックの開発に自ら積極的に関わろうとはしていません。だからといって、イノベーションが自分たちのビジネスモデルを変革するのを何もしないで待つという選択肢はないのです。

そこで、企業がフィンテックのメリットを採り入れる方法をご紹介します。

変化を受け入れる

フィンテックは、すでに社会に浸透しつつあります。そして、フィンテックが業界や顧客の期待をどんどん変化させていくと、そうしたテクノロジーを利用しない業務運営は受け入れられなくなるでしょう。

多くの資産管理アドバイザーは、計画立案をエクセルとマクロに依存しており、そのことで、顧客との対話に使える貴重な時間を奪われています。ところが実際には、これまでエクセルで処理していたことは、ファイナンシャル・プランニングやポートフォリオ・リバランス・ソフトウェアなどのテクノロジーを利用すれば、より迅速かつ正確に処理できるのです。

新しいテクノロジーを学ぶには時間がかかります。しかし、それは将来の配当を生み出す投資のようなものです。企業にとっては、避けられないものに抵抗するのではなく、フィンテックを事業にどう適用するかを積極的に考えるべきときが訪れているといえます。

価値を見きわめる

テクノロジーは、アドバイザーが現在行っている業務の一部に取って代わる可能性がありますが、顧客にとってアドバイザーの価値がなくなることはけっしてありません。実際はむしろ反対です。アドバイザーはテクノロジーを活用して、より優れたサービスを提供し、より強力なアドバイスを与え、さらなる支援をもたらすことができます。

自動化は、たとえば、時間の節約、ミスの削減、コストの最小化を実現してくれるでしょう。顧客は、価値ある財務アドバイスに対して料金を支払っているのであり、手作業によるデータの入力に対して支払っているわけではありません。自動化によって、データは自動的に更新され、人間がミスを起こす可能性は少なくなります。このようにしてフィンテックは、最終的に、個人とアドバイザーの関係を深める役割を果たすのです。そして、それを認識している企業だけが生き残ることになります。

アドバイザーをサポートする

米国には現在、約31万1,000人のファイナンシャルアドバイザーが存在していますが、労働力全体として見ると、比較的年齢の高い層に偏っています。しかも、すでに人材不足の状態にあり、ベビーブーム世代の退職者が増えるにつれて、この傾向は進む一方です。

その意味からも、フィンテックは、資産管理の将来を形作る存在であるといえます。それでも既に述べてきたように、優れたアドバイザーを雇うことも依然として不可欠な要素です。人間のアドバイザーがするように、腰を落ち着けて徹底的に話し合い、顧客の目標に向かって深く掘り下げることは、今のテクノロジーには無理ですし、株式市場が変動したときに、顧客に安心をもたらす話し相手になることもできません。

しかし、フィンテックを活用して基本的な職務を自動化すれば、アドバイザーは一層高いレベルで、より多くの顧客にサービスを提供できるようになります。そして、フィンテックに持ち場を奪われるといった心配をする必要もありません。個人に合ったサポートとアドバイスを提供し続ければ、顧客はまたやって来てくれるからです。

フィンテックが、資産管理の将来をどれだけ急速に、また徹底的に変革しているかは計り知れません。業界の一部のプロフェッショナルが、なぜ今でもフィンテックの発展に不安を覚えるかを理解することは容易ですが、先にも触れたようにそれで失職するようなことは根拠のない憶測といえます。なぜなら、テクノロジーは単に資産管理のあり方を変化させているだけではなく、プロフェッショナルの役割も含めて、あらゆる面でこの業界をより良いものにしつつあるからです。

この記事は元々、オンライン・インボイスのサービスを提供するデューのサイトに掲載されたものです。

この記事はBusiness2Community 向けにダニエル・リーが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。

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