AIにより飛躍的に進歩した映像解析、犯罪の予兆検知が可能なワケ

メインビジュアル : AIにより飛躍的に進歩した映像解析、犯罪の予兆検知が可能なワケ

目次


不審者をリアルタイムに検知、期待高まる防犯へのAI活用

犯罪の抑止・防止を目的に、駅や商業施設、街中に数多く設置されるようになった防犯カメラ。しかし、カメラの台数が増えるのと比例して映像データも膨大になり、警察や警備会社などが目視で不審行動や犯罪を監視したり、映像を確認・分析したりすることが限界になってきました。そこで、近年では、映像データの解析にAI(人工知能)が活用されています。

AIの活用で24時間365日監視が可能になるだけでなく、映像データの解析精度も飛躍的に向上。リアルタイムに不審者を検知・通報することも可能になりました。従来、記録と抑止のために設置される意味合いが大きかった防犯カメラを「予兆検知」や「未然防止」に活用できるようになったのです。

防犯カメラの映像解析にAIを活用する動きは日本だけに留まりません。世界の警察組織においても犯罪などが起きてから対応する「リアクティブ」ではなく、犯罪などが起きる前に対応する「プロアクティブ」への考え方に基づき、防犯カメラの映像解析や犯罪捜査にAIを積極的に活用。犯罪の予兆検知や未然防止に役立てる取り組みが進められています。

学習データ収集に膨大な時間と手間、現場でのAI活用が進まない

しかし、実際に防犯カメラの映像解析にAIを活用し、犯罪の未然防止に役立てるにはいくつかの課題があります。まず、家の様子を伺うといった不審行動を認識するためには、対象となる複雑な行動を記録した映像データを大量に準備することが必要になります。不審な行動を捉えた映像の収集に膨大な時間と手間がかかってしまうのです。

また、行動を学習させたAIに新たな検知対象となる行動を覚えさせようとすると、再度、膨大な映像データを学習させなくてはなりません。つまり、AIに次々に新たな不審行動を学習させ、カスタマイズしながら解析精度を高めていくといった使い方が難しいのです。こうした課題から、現場へのAI導入が進まないことが実情としてありました。

学習済の100種の基本動作を組み合わせて短期間で複雑な行動を認識

これらの課題に対し、富士通は、AIに大量の映像データを学習させなくても、複数の基本的な動作を組み合わせて複雑な行動を認識できる「行動分析技術 Actlyzer(アクトライザー)」を開発しました。

この技術では、まず、「歩いている、止まっている」といった単純動作に加え、複雑な行動を構成する動作、例えば「首を右に回す、左手を上げる」といった動き約100種類を事前にAIに学習させます。そして、ディープラーニングによって全ての基本動作を平均90%以上の精度で認識できるようにしました。

図 : 基本動作を学習したAIを使うことにより短期間で複雑な行動の検知を可能にした「行動分析技術 Actlyzer」

基本動作を学習したAIを使うことにより短期間で複雑な行動の検知を可能にした「行動分析技術 Actlyzer」

どの動作が、どの順番で、どこで起きたかを解析し、AIが不審行動を検出

さらに、基本動作の種類や順番、場所、対象物を組み合わせて解析することで、不審行動のように複雑な行動パターンを検出できるようにしました。

例えば、ピッキング行動の検知では、「扉の前にいる、座る、鍵穴を見る、鍵穴に手を当てる」といった基本動作の組み合わせに加え、発生場所や行動対象を合わせて解析します。それによって不審な行動として認識するのです。

さらに、首を左右に回して辺りを見回すといった条件を追加したり、各行動を継続する時間を指定したりと、解析のパラメーターを変更することで、導入後に不審行動の認識精度を調整することが可能です。

図 : 膨大な映像を学習しなくても、基本動作と発生場所、行動対象を組み合わせて解析することで不審行動を検出

膨大な映像を学習しなくても、基本動作と発生場所、行動対象を組み合わせて解析することで不審行動を検出

検出精度100%、わずか1日の評価実験で現場導入フェーズへ

富士通では、「行動分析技術 Actlyzer」が、どの程度の精度で不審行動を検出できるかを確認する実証実験を行いました。屋内や屋外で撮影された21種類の映像データを使って実験を実施したところ、「家の様子を伺う」「凶器を振り回す」など検出したい8種類の不審行動を全て認識できました。

しかも、これら8種の不審行動の検出に必要なルール(基本動作の組み合わせ)を作成するのにかかった時間は「わずか1日」。つまり、1日の評価実験だけで本技術の現場への適用可否を判断できたのです。

 

動画1:不審者を検知(再生時間:29秒/音声なし)

 

動画2:振り込め詐欺の疑いを検知(再生時間:60秒/音声なし)

AIによる映像解析、防犯以外の用途にも活用可能

国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)にも出展することが予定されている「行動分析技術 Actlyzer」。今後は、ビルや店舗などの防犯カメラの映像に適用することで、ピッキングや振り込め詐欺、万引きなどに関する動作を検知することで犯罪防止に貢献していきます。

また、本技術の用途は防犯だけに限りません。例えば、駅のホーム上における危険エリアへの侵入検知、小売店における来店者の購買行動の認識や商品への関心度調査の実施、製造現場における作業時間の測定や作業手順の確認等、あらゆる場面での活用が可能です。富士通は本技術により、様々な業務のセキュリティ向上や現場改善といった課題解決につながる支援を続けていきます。