今だから知りたい、AIによる業務自動化の勘所

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Xinhua News Agency / Contributor / Getty Images

COVID-19こと新型コロナウイルス感染症のパンデミックが、すでに自動化の未来に向けて進んでいたビジネス界の動きに拍車をかけています。世界の危機的状況は、AI、ロボット工学、自動運転車を手掛けるあらゆるスタートアップにとって、「きらびやかなデモを制作することや、汎用AIの将来の可能性について語るのをやめて、人間の介入を最小限にとどめながら1日24時間稼働してユーザーに真の価値をもたらせる、実用的なソリューションの展開に注力せよ」という警鐘となったのです。

世界規模で感染が広がる中、米国では何千人もの人々が在宅勤務に切り替えつつあります。小売業者が商品の供給に奮闘する一方で、不安に駆られた消費者の間ではトイレットペーパーからハンドソープまで、あらゆるものの買いだめが起こりました。また、中国のeコマース大手であるJDが、武漢市でレベル4の自律走行配達ロボットの試験運用を開始したほか、需要の急増に対処するために自動倉庫の稼働を24時間体制で開始しています。

そして、概念実証だけにとどまらない自律型マシンの需要は、にわかに高まりました。それらのマシンは、現実世界のさまざまな状況下でも独立して活動できるだけの十分なロバスト性、つまり、外的要因の影響を受けにくい資質を備えていなければなりません。

ある意味、今回のパンデミックは、すでに進んでいた自動化の未来を加速させています。たとえば、長らくAI関連のベンチャー企業の周辺に存在していた「バズワードや誇大広告が人々の判断力を曇らせ、本当の発展状況の確認を難しくする」という問題があぶり出され、本当に着目すべき点は何であるのかが見えてきました。

わかりやすくいえば、業界は、以下の3つの領域における自律型システムの実用化に向けて、待ち望まれる改革に着手する必要があるのです。

1. 測定基準の見直し

現実世界で利用される自律型AIマシンが増えるにつれ、処理速度や実行時間、成功率といった従来の測定基準では全体像を表せなくなっています。そのため、人間の平均介入件数をはじめとしたロバスト性を示す測定基準によって、さまざまな不確実性の下でのシステムの信頼性を測ることが求められるようになりました。幅広い運用シナリオにおけるシステムの全体的なパフォーマンスを評価するには、より多くのツールや業界標準的な測定基準が必要となります。制御された環境とは違い、現実世界は予測がきかないことが、その理由です。

たとえ配達ロボットの最高速度が人の1.6倍の時速4マイルに到達できたとしても、人間によるオンサイトでのサポートなしに1件の配達も完了できないのなら、ユーザーにとってそのロボットは大した価値を生み出していないことになります。

数年前に、開発サイクルの短縮と高品質ソフトウェアの継続的提供を目的として、ソフトウェアの開発担当と導入・運用担当が密接に協力するデブオプスの考え方が登場しましたが、成熟度の点では、ソフトウェアエンジニアリングと比べて、AIやマシンラーニングははるかに劣るのが現状です。それは、マシンラーニングプロジェクトの87%が実用段階に届かずに終わってしまうほどでしたが、最近になって徐々に、デブオプスがマシンラーニングやAI プロジェクトに応用される機会も増えてきました。

これは、AIやマシンラーニングが、研究段階を脱して、日常的に使用されテストされる実際の製品へと移行する重要な動きが進んでいることを意味します。最先端のマシンラーニングモデルに取り組むことよりも、製品の品質保証を重視するために、考え方の大きな転換が求められているのです。品質保証とマシンラーニングモデルの両方に同時に取り組むことは不可能とまではいえませんが、従来は後者に重点を置くあまり、前者が軽視され気味だったことは、誰もが知るところではないでしょうか。

2. エラー処理とコミュニケーション手段の再設計

最近起こった、自動運転車関連のベンチャー企業であるスタースキー・ロボティクスの操業停止は、「完全自律型ソリューションの実現は、まだ数年先の話」だという事実を、我々に気付かせる出来事でした。しかしそれは、AIロボット工学が当面は人間に価値をもたらすことができない、ということを意味するものではありません。筆者が以前の記事で言及したように、たとえ15%の割合で人間の手を煩わせる特異な状況が発生するとしても、企業には残りの85%で、多額の人件費や統合コストを削減できるチャンスがあるからです。

だからこそ、前述のように、人間の介入が必要となった件数を測定することが重要になります。さらに、エラー発生時の処理やその報告を行うための、よりよいやり方を用意しておくことも大切です。たとえば、ユーザーに対して機械学習モデルによる予測の信頼度を示すことや、予測とは決定事項ではなく提案であると説明しておくことも、信頼関係を築くのに適した方法といえるでしょう。

加えて、ユーザーが「未知の未知」、すなわちシステムでは検出されないものの何らかの不具合があると思えるようなエラーに遭遇したときに、そのことを迅速に知らせてもらえるよう、普段から双方向のコミュニケーションを確立してことも非常に重要になります。システムオペレーションを回復させるうえで、直ちに人間の介入が求められる重大なエラーの場合には、なおさらです。

いずれにしても、エラー処理は最初のステップであり、マシンがすべてのシナリオに自力で対処できないようなケースを特定するための過程に過ぎません。そして、続くステップで、そうした特異な状況に対応し、全体的なパフォーマンスを最適化するために、マシンと人間との間でシームレスな引き継ぎやコラボレーションが行われるように再調整していきます。

3. 人間とマシンのインタラクションの再定義

私たちは、ロボットを制御することやマシンに指示を与えることに慣れています。しかし、ロボットやマシンのスマート化が進む中でも、常に私たち人間が最終的な決断を下し続けるべきなのでしょうか?

たとえば、自動運転のロボットタクシーのコントロールに関する責任の所在について考えてみます。その責任は、車両自身にあるのでしょうか? それとも、万が一に備えて同乗する人間のセーフティドライバー、あるいは遠隔地からロボットタクシーの全車両を監視する担当者、それとも乗客にあると思われますか? さらに、責任の所在がどこにあるにせよ、この問題を検討するには、あらゆる状況を想定しつつ、その意思決定者にすべての関連情報を迅速に伝えるための適切なツールやテクノロジーについても考慮しなければなりません。

テクノロジー以外にも、信頼に関する問題があります。人間のドライバーよりも自動運転車のほうが安全だとする研究結果があるにもかかわらず、米国人の半数近くが今もそれを利用する気にならないのは、現時点では自動運転車に対する信頼が確立されていないためです。

これらの問題を解決するためには、以下のようなことについて考える必要があります。

・私たちの生活を悪化させるのではなく向上させるような自律型マシンの実現のために、人間中心のAIを設計するには、どうすればよいか?

・人間の能力を拡張するのに適したユースケースを、AIによって自動化するには、どうすればよいか?

・より良い成果をもたらすために、人間とマシンが互いから学ぶことのできるハイブリッドなチームを構築するには、どうすればよいか?

他にも答えを出すべき問題は、たくさんあるでしょう。しかし、幸いにも私たちはすでにそのためのスタートを切っており、正しい方向に向かっているように思えます。この世界的な危機的状況は、あるべき自動化の姿を考える好機でもあるのです。

筆者のバスティアン・ファングは、投資家のピーター・ティール氏や、ジェリー・ヤング氏がパートナを務める投資会社AMEクラウドから支援を受け、サンフランシスコ拠点のAI・ロボット工学関連スタートアップ、オサロのプロダクトマネージャーです。以前はアマゾン・アレクサの開発に携わっていました。

 

この記事はVentureBeat のバスティアン・ファングが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。

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