「防災・減災」の意識向上に向け、地域に求められる対策とは(後編)

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2020年2月19~20日に行われた「サステナブル・ブランド国際会議」。前編に続き、「防災・減災」をテーマにしたプレゼンテーションと、登壇者全員によるパネルディスカッションの様子をご紹介します。

※登壇者の敬称略

目次

「災害関連死ゼロ」に向けた取り組みが大切

ソーシャル グッド プロデューサーの石川淳哉氏が、自身の直近の被災経験も交えて、人が避難行動を起こしやすくする環境整備のための実例や取り組みを紹介しました。

写真 : ソーシャル グッド プロデューサー 石川 淳哉 氏

ソーシャル グッド プロデューサー
石川 淳哉 氏

SDGsには、17の目標と169のターゲットがありますが、一つひとつ紐解くのではなく、1つの大きなゴールに向けて行動する必要があると考えます。かつてケネディ大統領が「月に行くぞ」と言わなければ、人類は月に行けなかったという「ムーンショット」という言葉があります。同様に、災害大国とも言える日本が、「災害が起きても災害関連死をゼロにする」という目標に向かうことが重要だと考えています。

2018年の西日本豪雨の時、倉敷市の洪水のハザードマップは、ほぼ100%実際の災害と一致しました。つまり「どこにどれだけひどい洪水が発生するか」は事前に明らかだったのです。それなら、避難していれば死者がゼロだったはずですが、水害で亡くなった人は51人にも達しました。ハザードマップは正しかったのに犠牲者の発生を防げなかったのです。さらに、岡山県が「同じことが起きるとしたら逃げますか」と全戸調査したら、「逃げない」という回答が多かったことも分かっています。

私は、実際に多摩川の水害で東京都大田区の自宅が被災しました。後日被災者説明会に行ったところ、住民は当日、川が氾濫しないかどうかと見に行っている。逃げていないのです。調べてみると、ペットがいる人は「避難所がペットに対応しているか分からなかったから避難しなかった」そうです。大田区は目標を掲げて、高齢者で不安ならケアマネージャーをつける、ペットがいるならペットの避難場所も設ける、近い疎開、遠い疎開等課題に対して一つひとつ取り組んでいくべきだと思っています。避難勧告と指示を出すだけでは災害死・災害関連死をゼロにすることは難しいでしょう。大田区だけでなく、全ての自治体が社会実装に向かってもう少しコレクティブインパクトで立ち向かうべきではないでしょうか。私達も、大田区が変われば世界が変わるという考えのもと、例えば被災地のトイレの問題等をはじめ、みんなで助け合う世の中を作ろうという取り組みを進めていこうと思います。

避難にも「多様性」、正しい判断ができる基準を持つことが大切

4社のプレゼンテーションの後はパネルディスカッションとなり、主に「避難に対する考え方の多様性」に関する意見が交わされました。

広島大学 江戸教授
防災・減災に向けて各社の取り組みが分かりました。その一方で、「人が足りない」「避難しない」「新しい社会のシステムを作っていかなければ対応できない」等課題も浮き彫りになりました。

ソーシャル グッド プロデューサー 石川
自治体は予算も少なく、人員も減らされています。災害が起きた時、自治体の人数だけで住民を救うことはできません。民間企業も巻き込んだ取り組みが重要です。

あいおいニッセイ同和損害保険 田村
課題は、早期避難をいかに実現するかです。どこに「避難のトリガー」を置くか。それを超えてしまうと天候が悪化して移動手段がなくなってしまい、危険だからよけいに自宅に留まることになります。その意味で、富士通の取り組みは重要だと感じました。

富士通 吉田
避難の観点では、「逃げようと思ったけど逃げられない人」「逃げない人」がいます。本日のセッションでは「情報が来ても逃げない人」がクローズアップされていました。その課題に対して、継続して情報伝達という視点で考えていきたいと思います。私も2019年の台風19号で避難勧告が出た時、避難しませんでした。理由は自宅が16階で避難所はそこよりも低い場所にあること、避難所までの道に川があり避難所に行くことが必ずしも安全ではないと思えたからです。結果として、災害時には自分たちで判断するしかない局面が発生します。平常時からどこにどのように逃げるのかを、予め自分たちで具体的に決めておくようにしていく必要があると考えています。

広島大学 江戸教授
多様性という言葉がありましたが、避難にも色々な形があっていいと思います。私も広島で高い所に住んでいますので、「逃げなかった」一人です。避難するべき人が、いつどのタイミングで避難しているかを把握することが重要だと思います。

写真 : ファシリテーターの広島大学大学院 江戸教授

ファシリテーターの広島大学大学院 江戸教授

防災に向けての最終的なセーフティネットとは

中国新聞 山本
台風の被害が出そうな時には、母を安全な街の中心部のホテルに避難させています。こうしたことに使える保険があると避難がもっと浸透すると思います。

あいおいニッセイ同和損害保険 田村
避難保険は今のところ、個人の方にお金を頂くことは想定していません。自治体や企業が加入していただき、地域へ包括的に保障をしていくことを考えています。個人で防災意識が高く保険に加入したい方は、いざという時は保険に関わらず逃げる人でしょう。逃げない人は意識も低いから、保険にも入らないだろうという考えです。

広島大学 江戸教授
商品としては、自治体向けに防災減災保険が実際あります。最終的なセーフティネット、誰かがリーダーになって引っ張っていかなければならない部分で、民間企業がリーダーシップを発揮できるような社会システム作りが重要だと思います。防災・減災というテーマは今年が初めてでした。サステナビリティという視点では「これからの」テーマだと感じています。防災・減災で持続可能なまちづくりについて、これからも考えていきたいと思います。本日はありがとうございました。

※登壇者の職制は開催当時のものです。

登壇者

写真 : ソーシャル グッド プロデューサー 石川 淳哉 氏

ソーシャル グッド プロデューサー
石川 淳哉 氏

写真 : 県立広島大学 大学院経営管理研究科 ビジネス・リーダーシップ専攻長 教授 江戸 克栄 氏【ファシリテーター】

県立広島大学
大学院経営管理研究科
ビジネス・リーダーシップ専攻長 教授
江戸 克栄 氏【ファシリテーター】

写真 : 株式会社中国新聞社 メディア開発室 兼 編集局経済部記者 山本 洋子 氏

中国新聞社
メディア開発室 兼 編集局経済部記者
山本 洋子 氏

写真 : あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 商品企画部 企画グループ 担当次長 田村 雅史 氏

あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
商品企画部 企画グループ
担当次長
田村 雅史 氏

写真 : 富士通株式会社 地域社会ネットワークビジネス推進部 マネージャー 吉田 千穂

富士通株式会社
地域社会ネットワークビジネス推進部
マネージャー
吉田 千穂