新型コロナウイルスと闘う、医療・自治体の現場①後編 自治体・保健所の最前線へ「健康観察チャット」の活用が広がる

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前編からの続き)
新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るう中、富士通は、2020年2月下旬より「新型コロナウイルス感染症対策特別チーム」を編成し活動をスタート。2月、3月と事態が急変するにつれ、各現場で勃発する様々な課題一つひとつに耳を傾け、チャットボットを活用したサービスを提供してきました。5月11日現在、既に20自治体、60保健所で導入され、感染症対策の最前線を支援しています。前編から引き続き、新型コロナウイルス対応の最前線で、現場の方々と共に闘ってきた、富士通の新型コロナウイルス感染症対策チームでリーダーを務める生川慎二に話を聞きます。今回の感染症対策健康観察チャットサービスの開発にご協力いただいた感染症対策の専門家でもある東北大学の小坂健教授からのコメントもあわせてご紹介します。

目次


東北大学小坂教授と共に訴えた、感染拡大と現場崩壊を防ぐ情報管理の重要性

―― 導入はスムーズに進んだのでしょうか?

現場としては、クラスターが発生する前に現場崩壊を防ぐためにも、感染症情報管理を効率的に収集・共有・管理できる仕組みをすぐにでも導入したいと希望されていました。しかし、個人情報保護法という壁が立ちはだかりました。

感染症法における公衆衛生上の個人情報は、個人情報保護法とは別に扱っていいという考え方もあります。一方、多くの自治体ではネットワークの三層分離という考えから、個人情報を含むデータをインターネットに接続されたサーバ上に保管する状態を問題視していました。

そのため、いくつかの自治体にご説明しましたが、導入はしたいが前例がないので判断できないという見解が続き、なかなか前に進めませんでした。そこで、2020年3月16日、感染症対策の専門家でもある東北大学の小坂健教授と共に、宮城県庁に赴きました。

―― 前例のないことを判断するのは難しいことですよね。そこで、なぜ宮城県庁に赴いたのですか?

宮城県では当時はまだ感染者数が限定的でありましたが、対策の方向性を模索していました。クラスター対策の最前線で活動をされている東北大学の小坂教授とも信頼関係があり、検討していただくにはいいタイミングでした。また、東日本大震災の際に宮城県民のイノベーション魂を間近で見ていましたので、あの震災を乗り越えた宮城県の方々なら勇気ある決断をしてくれるだろうと考えました。

宮城県においても、新型コロナウイルス感染症対策の現場負担と個人情報の持ち方が問題となっていました。そこで、情報部門・県副知事・県議員の方々に何度もご説明し、セキュリティ対策と現場の緊急対応をどうしたら両立できるかを一緒に考えていただきました。

結果、条例を守りつつ、現場の運用もできる方法のコンセンサスがとれて導入の決断をしていただくことができました。

宮城県が導入したチャットボットを活用したサービスの仕組みとは

―― 今回導入した「感染症対策支援チャットサービス」について、お聞かせ下さい。

宮城県は、新型コロナウイルス感染症患者の接触者の「健康観察システム」としてチャットボットサービスを4月からスタートしました。

このサービスには、東北大学の小坂教授監修の元、「咳がでるか」「呼吸がしにくいか」「吐き気がするか」等、国から指定されている健康観察票の項目を全て網羅した設問が設定されています。

保健所職員がモバイル端末で簡単に情報を入力することはもちろんですが、接触者自身が、アプリから聞かれる簡単な設問に答えながら健康状態をご自身のモバイル端末から入力することができます。その結果、保健所職員に負担をかけることなく、正確な情報を確実に収集できます。こうして収集できた最新の情報は、感染状況を一元的に感染症対策関係部門間で把握することができ、今後の対策分析にも活用できます。

図 : 宮城県が導入したチャットボットを活用した「健康観察システム」のイメージ(東北大学の小坂教授と富士通の共同開発)

宮城県が導入したチャットボットを活用した「健康観察システム」のイメージ(東北大学の小坂教授と富士通の共同開発)

図 : 「健康観察チャット」の入力画面イメージ。濃厚接触者の方が、スマートフォンから日々の健康状態を報告し、保健所が一覧形式で管理するため、濃厚接触者、保健所双方にとって聞き取りの負荷軽減できます。

「健康観察チャット」の入力画面イメージ。濃厚接触者の方が、スマートフォンから日々の健康状態を報告し、保健所が一覧形式で管理するため、濃厚接触者、保健所双方にとって聞き取りの負荷軽減できます。

10日間で20自治体、60保健所が導入へ、より広範囲に最新の感染状況が把握可能に

―― 宮城県が決断した後、他の自治体の反応はいかがでしたか?

宮城県庁の決断が、全国の自治体対策本部・保健所に勇気を与えてくれたようです。導入実績ができれば、他の自治体も積極的に導入に踏み切り、10日間で20自治体、60保健所が後に続きました。しかも、導入決定までは、各自治体とも1日~3日という期間であり、意思決定プロセスが飛躍的に短縮されました。まさに、イノベーションを感じた瞬間でした。

全国数多くの都道府県で導入していただければ、より多くのデータが集まり、今後の分析に活用できます。また、最新の健康観察状況をリアルタイムに一元管理できるようになるため、迅速な判断や行政間の情報交換にも期待できると現場の声を伺っています。

図 : 「健康観察チャット」の管理者画面イメージ。濃厚接触者の方がスマートフォンから入力した情報をリアルタイムに収集し、クラスター対策に活用可能。※個人情報(名前、住所、電話番号)は含みません。

「健康観察チャット」の管理者画面イメージ。濃厚接触者の方がスマートフォンから入力した情報をリアルタイムに収集し、クラスター対策に活用可能。※個人情報(名前、住所、電話番号)は含みません。

―― 新型コロナウイルスとの闘いはまだ続いていますが、今のお気持ちをお聞かせ下さい。

新型コロナウイルスの感染症対策は、地域の医療提供体制や感染状況によって、現場の課題・対策・優先度が変化します。

濃厚接触者の健康観察チェック以外にも、医療従事者、保健所職員の健康チェック、入院可能な病床数のモニタリング、宿泊施設等による軽症者健康チェック、介護事業所における利用者健康チェック等、各地の感染症対策本部から要望が寄せられます。毎日寄せられる現場課題を吸収し、ほぼ3日以内に対応策を提供し、そのノウハウをまた各地にフィードバックしています。

私達「新型コロナウイルス感染症対策チーム」は、引き続き最前線で対策現場の支援を通して、この長い未知なるウイルスとの闘いに挑んでいきます。

写真 : 国難に貢献したいと志願者が集まった、新型コロナウイルス感染症対策チームメンバー

国難に貢献したいと志願者が集まった、新型コロナウイルス感染症対策チームメンバー

感染症対策の専門家 東北大学 小坂健教授からのコメント

写真 : 東北大学 教授 小坂 健 氏

東北大学
教授
小坂 健 氏

これまで保健所では、感染者が出ると濃厚接触者の調査では、直接会って感染リスクがある中聞き取りをしたり、電話で問い合わせたものを紙でチェックしたり、それを手作業で入力したり、ファックスを使って対応していました。感染者が少ない場合はなんとかなるにしても、濃厚接触者が数百人になった場合には、対応出来ずに現場は修羅場になっていたようです。

このシステムにより、そういった作業の圧倒的な効率化がはかられ、感染の機会を無くし、入力に伴うミスの低減、対人では答えにくいことの回答が得られる等の大きな利点があります。データベースをリアルタイムに解析し、感染源を特定したり、他の自治体との情報共有等様々な有効性があります。

富士通の対策チームは良くまとまって、こちらが望む事を先取りして、目を見張るような迅速な対応をしていただきました。皆、その機動的な対応に驚いています。特に現場の声を聞きながら、様々な要求に、迅速に応えていただきましたが、それも東日本大震災での経験が生きていると思っています。何より、人類の危機に対してなんとか貢献しようという覚悟の部分で共感できたことが喜ばしいです。非常に感謝しております。

【コロナ対策最前線、自治体関係者へのビデオメッセージ】

今回の感染症対策健康観察チャットサービスの開発にご協力いただいた感染症対策の専門家でもある東北大学の小坂健教授からメッセージです。