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スマホのWi-Fi信号で人の流れや混雑を見える化する「人流動解析」とは

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目次


人々の動きや流れをデータ化する「人流動解析」そのメリットは?

駅前、ショッピングセンターの中…人は絶えず移動し続けています。混んでいる場所、すいている場所も様々で、「あっちを通ればもっと早く着いたのかな」と、後から思うことも少なくないのではないでしょうか。

今、より安全により便利に暮らせる社会の実現に向け、「人の流れ」を解析する技術が注目されています。これは「人流動解析」と呼ばれるもので、人々の動きや流れをデータ化し、季節・天候・時間帯など外的な要因と合わせて解析する技術です。

人流動解析技術では、人の動きをリアルタイムに捉えて、「今、混雑している場所はどこか」「どこから来た人が、どこに向かって移動しようとしているのか」といった状況を把握できます。このため、都市計画や公共交通の整備に活用したり、災害時に最適な避難ルートと入所可能な避難所を可視化するなど、人々の流れをよりスムーズにすることが可能になります。その他にも、観光客の行動を解析して誘客に結びつける、大規模イベントにおける安全な誘導と警備員の最適配置に活用するなど、流通や小売におけるマーケティングなどへの活用も進められています。

人手や時間がかかるデータ収集、効果的な方法は?

従来の人流動解析は、調査員が街中で交通量を調査したり、観光地でアンケート調査を実施したりといったアナログな手法で実施されていました。最近では、街中にカメラを設置して人の流れを把握することや、一部の商業施設などでは近距離での無線通信が可能なビーコンを活用する取り組みも実施されています。

しかし、データ収集に人手や時間がかかるほか、収集したデータの解析に時間がかかる、人の動きをリアルタイムに捉えるのが困難といった課題がありました。特にビーコンを活用した人流動解析では、商業施設などへの来場者がビーコンを持っていないとデータを収集できないため、解析可能なエリアやデータ量が限定されるということが指摘されていました。

こうした従来の人流動解析における課題を解消したのが、富士通が開発した「Wi-Fiパケットセンサー」を活用した人流動解析の仕組みです。

スマホが発信するWi-Fi信号をセンサーで「人の流れ」として可視化

今回開発したWi-Fiパケットセンサーは、形状が12センチ×12センチ×5.5センチ、重さ約500gほどの小型機器です。人々が持っているスマートフォンのWi-Fi機能をオンにすると、60秒~90秒間隔でWi-Fi信号(プローブリクエスト)を自動的に発信。その信号を捉え、人がいることをキャッチする仕組みです。発信したWi-Fi機器のユニークIDは、センサー内でハッシュ関数によって匿名化して蓄積し、15分ごとにクラウド上のストレージサーバにアップロードし保管・管理します。

図 : Wi-Fi機能をオンにしたスマートフォンのWi-Fi信号を収集し、匿名化した後に15分ごとにクラウドにアップロード

Wi-Fi機能をオンにしたスマートフォンのWi-Fi信号を収集し、匿名化した後に15分ごとにクラウドにアップロード

1台のWi-Fiパケットセンサーがデータを収集できるのは、直径200メートルのエリアです。センサーで捉えた最初と最後の時間から、その人が「どの場所(エリア)に、どのくらいの時間」滞在していたのかを計測可能です。

図 : ユニークIDでカウントすることで、再度エリア内に入った人などの重複カウントを除くことができる

ユニークIDでカウントすることで、再度エリア内に入った人などの重複カウントを除くことができる

Wi-Fiパケットセンサーによる人流動解析は、スマートフォンのWi-Fi機能がオンになっていれば、可能になるのが特徴です。ビーコンのように特別な機器を持ってもらう必要もなく、また、専用アプリをダウンロードしてもらうといった手間もかかりません。

また、商業施設などに複数のWi-Fiパケットセンサーを設置すれば、施設間の人の流れを可視化できるだけでなく、移動速度や所要時間の計測も可能になります。さらに、「日本のキャリアWi-Fiに接続していれば日本国内居住者、その他を訪日外国人」「1週間のうちに一定回数以上計測があれば地元住民」と、属性を切り分けて解析することも可能です。

リアルタイムで人の流れを知る。北海道・名古屋・琵琶湖で効果を実証

富士通では、Wi-Fiパケットセンサーを活用し、2019年に様々な実証を実施しました。

小樽地区、新千歳空港

北海道後志地方は、札幌駅や新千歳空港からのアクセスが良く、観光客数が年々増加。2018年度には約1383万人もの観光客が訪れました。一方で、観光客の移動ルートや滞在時間などを詳細に把握し、多様化する観光客のニーズに柔軟に対応し、より効果的な観光施策や事業立案、それらの効果検証への取り組みが課題になっていました。

そこで、小樽地区と新千歳空港内の3市6町村において、合計40台のWi-Fiパケットセンサーを設置しました。同エリアを訪れた観光客などが所有するスマートフォンが発信するWi-Fi信号(ユニークID)を収集し、新千歳空港から札幌駅、小樽市までの人の流れと移動ルート、観光客数、混雑状況などを分析。今後の観光施策や各種事業の効果検証などに活用できるデータを収集しました。

名古屋市営地下鉄

利用者数約23 万人を誇る名古屋市営地下鉄栄駅は、東山線と名城線が乗り入れ、沿線でのプロスポーツ試合などのイベント開催時には全国各地から多くの観光客が訪れます。その際には、臨時列車の運行対応がなされるほど利用者数が大幅に増加し、駅構内の実態把握や分析が難しいばかりか、混雑緩和への適切な対策が講じられていないことが課題となっていました。

そこで、地下鉄栄駅構内にWi-Fiパケットセンサーを6台程度設置。利用者数を正確に把握して人の流れを可視化・分析することで、時間帯ごとに栄駅構内の「東口が混雑する」などピンポイントの状況把握も可能になりました。今後は、より網羅的に可視化された情報をもとに、利用者に最適な移動ルートの提示することが課題となっています。

びわ湖大花火大会

約1万発の花火が打ち上げられる「2019 びわ湖大花火大会」は、毎年約35万人が訪れる関西有数の規模を誇るイベントです。実行委員会では、これまでも花火大会を安心・安全に実施するため、打ち上げ会場に近い大津港周辺の警備員の配置、JR、京阪電車などの公共交通機関と連携した移動手段やルートの確保などに取り組んできました。その一方で、花火大会に訪れる人数や移動ルートを正確に把握し、データを利活用することで警備体制のさらなる強化や、より魅力的な観光政策の実施が課題となっていました。

※白ドットがセンサ―設置位置。光の強さが混雑具合を表現しています

そこで、花火大会の中心地となる大津港周辺に、Wi-Fiパケットセンサーを15台設置。混雑が激しい場所でWi-Fiパケットを正確に収集するため、高さ約5メートルの場所に設置するなどの工夫もして、滞留地点や滞留時間、人の流れの状況などを15分ごとにグラフで可視化しました。実証実験で得られたデータや知見を、2020年以降の花火大会における効果的な警備計画や各公共交通機関への適切な移動手段ルート確保など、より安心安全で快適な花火鑑賞の実現に向けて活用するほか、滋賀県の他の観光政策への活用も検討していきます。

人々の暮らしに新たな付加価値を提供

今後、富士通ではWi-Fiパケットセンサーのさらなる技術開発と活用を進めていきます。具体的には、継続して収集・蓄積したデータを過去のデータと比較することで今後の人の流れや混雑状況を予測する機能の開発、さらには、季節や天候などの外部データとの連携による、より精度の高い解析の実施などです。

富士通では、今後も官公庁や流通・小売、観光など幅広い分野のお客様に、Wi-Fiパケットセンサーを活用した「人流動解析」をご提案します。そして、人々の暮らしや街づくり、地域づくりに新たな付加価値をもたらすような実証を展開していきます。