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災害時の「携帯が繋がらない」をなくす! 国内初「ヘリコプター基地局」の実証実験

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目次


災害時の安否確認で重要性が高まる携帯電話通信

2011年3月11日に発生した東日本大震災から9年が経過しました。その後も2016年の熊本地震や2018年の北海道胆振東部地震、広島や近畿地方を襲った豪雨、そして2019年に関東から東北に甚大な被害をもたらした台風19号等、日本では自然災害が数多く発生しています。

こうした自然災害の発生時に、人々が救助を求めたり、安否を確認したりする手段として携帯電話は重要な役割を果たします。ところが、災害発生時には「電話が繋がらない」「メールが届かない」といった事態が多く発生しています。その主な原因は通信規制や、停電や浸水等で基地局が機能しなくなってしまうことです。

年間2600件の山岳遭難発生、圏外エリアで携帯が繋がらないケースも

山岳地域等、もともと携帯電話が繋がらないエリアで被害に遭った人達への対応も課題です。警察庁の発表では2018年には約2600件もの山岳遭難が発生し、圏外エリアでの安否確認のための通信手段を確保する取り組みへの重要性も高まっています。

こうした状況の中、内閣府では戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期プロジェクトで「通信途絶領域においても即時に情報を伝達する技術を開発する」ことを掲げる等、取り組みを強化しています。その一環として、2019年10月から11月にかけて新潟県魚沼市で実施された国内初の実証実験に多くの関心が集まりました。

「ヘリコプター基地局」を飛ばし携帯圏外を通信可能エリアに

この実証実験は、人が背負える程度の大きさの「小型携帯電話基地局」を搭載したヘリコプター(ヘリコプター基地局)を飛ばして、携帯電話での通話やSMSでの情報のやり取り、通信エリア外にある携帯電話の位置推定ができるかどうかを検証するものです。

ヘリコプター基地局とは、言わば「空飛ぶ基地局」。小型携帯電話基地局を積み込み、上空から電波を発射することで、携帯電話の圏外エリアを通話や通信が可能なエリアにする試みです。実験は、KDDIが主体となり、KDDI総合研究所、新潟県魚沼市、富士通の協力で行われました。富士通は、携帯電話基地局の小型・軽量化を通じて、この実証実験を支援しました。

写真 : 「小型携帯電話基地局」を搭載したヘリコプター(ヘリコプター基地局)

「小型携帯電話基地局」を搭載したヘリコプター(ヘリコプター基地局)

新潟県魚沼市で実施した4つの実証実験、全て成功

実証実験は、携帯電話が繋がらない地域(魚沼市銀山平)で遭難者がでたことを想定。ヘリコプター基地局が空から近づき、以下の4項目と遭難者の携帯電話を使えるようにできるかどうかを検証しました。

(1)携帯電話基地局の電波の与干渉調査
(2)携帯電話の通信(通話・SMS)の可否確認
(3)通信可能エリアの調査
(4)4G LTEによる携帯電話からの電波検出による携帯電話の位置推定精度

図 : (1)(2)(3)の実証実験イメージ図

(1)(2)(3)の実証実験イメージ図

併せて、魚沼市消防署と遭難救助訓練を実施して、迅速に遭難者捜索が行えることを確認しました。通信エリア外にある携帯電話の位置推定をはじめ、4つの実証実験全てが成功しました。これは国内初のこととなります。

図 : 携帯電話の位置推定精度に関するグラフ。緑色の範囲が、ヘリコプター基地局から発信された電波が届き、携帯電話による通信が可能となった範囲。携帯電話が「どの場所にあるか」の確率も示されている

携帯電話の位置推定精度に関するグラフ。緑色の範囲が、ヘリコプター基地局から発信された電波が届き、携帯電話による通信が可能となった範囲。携帯電話が「どの場所にあるか」の確率も示されている

国内初の実証実験を成功させた、小型・軽量「携帯電話基地局」

今回、富士通は、出力や対応バンドをカスタマイズした小型携帯電話基地局を提供しました。ビル屋上や鉄塔に置かれ屋外で広範囲をカバーする一般的な基地局とは異なり、屋内の狭いエリアをカバーすることに特化したものです。

この小型携帯電話基地局の他に、携帯が基地局を発見するための「移動管理機能」「ユーザーデータ転送機能」、携帯電話からのGPS情報を取得する「ロケーションサーバ」、通話の発着信に係る「呼処理システム」を備えたモバイルコア設備を装備しています。総重量は合わせても約7kg。バッグとして担いでヘリコプターに搭乗できるように形状を工夫しています。

これらの機能によって、山間部等車載型基地局車が到達できない地域でも、ヘリコプター基地局単独で携帯電話のエリアを構成し、通話、SMSの利用、携帯電話の位置(GPS)情報の取得等を可能にします。

図 : (左)ヘリコプターに搭載する小型携帯電話基地局 (右)カバンの内面に装着した状態の基地局(かばん内側の赤枠の白い機器)。サイズは145(W)x 220(H)x 32(D)mm、重量わずか約600g。移動管理機能やロケーションサーバ等のモバイルコア設備を合わせても7kg以下。

(左)ヘリコプターに搭載する小型携帯電話基地局
(右)カバンの内面に装着した状態の基地局(かばん内側の赤枠の白い機器)。サイズは145(W)x 220(H)x 32(D)mm、重量わずか約600g。移動管理機能やロケーションサーバ等のモバイルコア設備を合わせても7kg以下。

実証実験におけるエリア化可能な範囲は約1.6~2kmでした。携帯電話のアプリケーションと基地局間のより柔軟なデータ連携や設定が実現できた結果、より詳細な情報のやり取りによる高精度な携帯電話の位置推定を可能にしました。

特定困難な場所でも救助要請に迅速に対応できる体制を

実証実験を通じて、災害時に陸上や海上からの携帯電話サービスの提供が困難な状況でも、上空からの電波によってエリア化された範囲内の一時的な携帯電話による通信(通話・SMS)が利用可能になることが確認できました。

また、ヘリコプター基地局の移動管理機能によって、携帯電話から発信される電波を補捉することで、ヘリコプター基地局がカバーするエリア内の携帯電話の位置推定を可能にしました。

携帯電話の圏外エリアであっても、ヘリコプター基地局を飛ばすことで、そのエリア内に携帯電話が存在しているかどうか(在圏情報)の確認と、携帯電話の位置情報の推定が可能となったことで、「災害時に被災者の特定が困難な状況であっても、国や自治体からの救助要請等に迅速に対応する」という目的の貢献に繋がることが明らかになりました。

図 : 実証実験の模様 (左)ヘリコプター基地局から地上に電波を発信している様子を可視化したもの。電波発射による在圏情報を表示 (右)消防隊による救助訓練

実証実験の模様
(左)ヘリコプター基地局から地上に電波を発信している様子を可視化したもの。電波発射による在圏情報を表示
(右)消防隊による救助訓練

ソフトウェア基地局化で病院や工場等幅広く柔軟に対応

今回の実証実験に貢献した富士通の小型携帯電話基地局。今後は、ローカル5G等の活用も視野にいれ、工場や病院等場所に特化したサービスを検討しています。基地局のソフトウェア化をコアとし、多様なサービスに柔軟、かつ迅速性を重視したインテグレーションビジネスを展開していく予定です。

図 : 無線基地局のソフトウェア化を推進

無線基地局のソフトウェア化を推進

災害による被害を可能な限り抑止し、減少させるためには、準備から復旧に至るまでの総合的かつ計画的に防災・減災活動を進めることが重要です。住民や自治体、防災関連機関との連携を強化し、地域全体で防災・減災対策に取り組むことも求められます。

富士通では、多くのステークホルダーからのヒアリングや防災関係機関への導入実績を踏まえ、防災・減災における必要な解決策を徹底検討し、最新のテクノロジーで災害に強いまちづくりを支援していきます。