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事例に学ぶ、「スマート工場」で実現するニーズ変化に対応した製造現場づくりとは

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目次


製造現場が直面する課題は、生産体制や計画変更への柔軟な対応

今、ものづくりの現場では、消費者ニーズの多様化や季節要因など需要動向の変化に応じて、生産体制や作業計画を柔軟に変更できる仕組みが求められています。製品が変わるごとに製造ラインを組み替え、人員配置を変更するなどして顧客ニーズや需要動向の細かな変化に対応していますが、こうした対応には時間も手間もかかります。製造現場の作業負荷が増大することから、作業ミスや機械が故障する確率が高まることも指摘され、生産性向上といった視点での課題も浮き彫りになっています。

サイバー空間に「再現した工場」で製造現場の課題を解決する

そこで、今注目されているのが、実際の工場やプラントを、センサーやIoT機器、AI(人工知能)などの技術を駆使してデジタル空間に仮想工場として再現し、バーチャルに製造ラインを組み替え、人員配置を変更し、作業計画を立案・遂行・確認する「スマートメンテナンス」という考え方です。

まず、工場の機器設備のメンテナンスや製造工程全体のプロセスをデジタル化していきます。そして、実際の製造現場における製造ラインの切り替えや、設備の故障時の対応、人員配置の最適化、生産計画の変更などといった課題を、サイバー空間上のシミュレーションで解決いくものです。

図 : サイバー空間上のシミュレーションで製造やメンテナンスの作業計画を最適化

サイバー空間上のシミュレーションで製造やメンテナンスの作業計画を最適化

[事例] 富士フイルムテクノプロダクツが進める、多品種少量生産を実現するスマート化

多品種少量生産が求められる工場では、スマートメンテナンスの考え方を取り入れることで、効率の良い製造ラインの組み方や人員配置をシミュレーションでき、様々な製品ごとに最適な作業計画の立案が可能になるメリットがあります。

こうした取り組みを富士通とともに実践したのが、内視鏡などを製造する富士フイルムテクノプロダクツ様です。内視鏡とは、先端にカメラを装着した細長い医療機器で、人間の体内に挿入することで胃や腸などの消化器、耳鼻咽頭などを検査するものです。検査する臓器によって内視鏡の機能、サイズ(長さや細さ)に違いがあるため、多品種少量生産に対応した効率の良い生産体制が不可欠です。

2019年、富士フイルムテクノプロダクツ様は、IoTやAI(人工知能)など先進技術を駆使した工場を目指し、内視鏡を製造するためのスマート工場「N-1工場」(注1)を建設しました。

(注1)2019年10月に富士フイルムテクノプロダクツの佐野工場(栃木県佐野市)内に建設されたスマート工場。
IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を用いて内視鏡の生産能力を大幅に高めることを目的に設立

工場内のIoTデータを活用しスマート工場を実現

このN-1工場では、部品や製品を搬送するためのAGV(自動搬送機)や設備などをネットワークで接続し、人間の作業内容を記録するビーコンを設置。これにより、部品や設備の動き、熟練者の繊細な作業をデータとして記録し、生産性向上、人材育成、技能継承に役立てています。

ものづくりデジタルプレイス「COLMINA」

IoTで取得したデータを蓄積する基盤システムとして、富士通のものづくりデジタルプレイス「COLMINA(コルミナ)」を活用しています。搬送される部品や製品の動き、設備の稼働状況、作業者の導線などをCOLMINAに集約。データを「つなげる」ことで、デジタルの空間で工場全体を「見せる化」し、部門・ライン・工程を跨いだ全体最適化を支援しています。

図 : 製造業がつながる場 COLMINA(コルミナ)

製造業がつながる場 COLMINA(コルミナ)

生産順序最適化ツール「COLMINA Sequence Planning Optimization」

また工場の生産計画、人員計画の策定を支援しているのが、生産順序を最適化するソリューション「COLMINA Sequence Planning Optimization(コルミナ・シーケンス・プランニング・オプティマイゼイション)」(注2)です。COLMINA Sequence Planning Optimization は、富士通研究所が開発した最適化エンジン『OPTEMILIS(オプティマイリス)』(注3)を用いて、最短のリードタイムで生産できるように、順番を最適化する生産計画を策定します。

COLMINA Sequence Planning Optimization には、生産マスターや生産量、工場のレイアウト、制約条件などが入力され、それらを元に、コストや生産リードタイム、KPIなどを分析し、もっとも効率的に生産できると思われる計画を算出します。N-1工場では、 COLMINA Sequence Planning Optimizationを用いて生産順序を最適化するとともにフレキシブルに作業者を配置し、その生産効率の最大化を目指しています。

図 : 「COLMINA Sequence Planning Optimization」機能イメージ データ入力から出力までの主な流れの例

「COLMINA Sequence Planning Optimization」機能イメージ データ入力から出力までの主な流れの例

(注2)旧名称はDREMAQ OPS(ドリマック・オーピーエス)

(注3)OPTEMILISは、株式会社富士通研究所(本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 原裕貴)が開発した計画最適化エンジンで、生産現場の稼動実績からモデル化し、装置故障などの突発事象が発生したときに、即座にシミュレーションを行い、ヒト・モノ・装置の最適オペレーション計画を提供。

[事例] 富士通(製造工場)製造ラインを最適化し生産効率20%アップ

近年、ものづくりの現場では、「異なる仕様の製品を同一の生産ラインで作る」ケースが増えています。そのとき、ある一つの製品の製造工程に不具合が発生すると,同じ製造ラインを使う他の製品の生産計画にも影響が及びます。

そのような時に、不具合の発生した製品の製造ラインは止めても、他の製品の製造は継続するように計画を立て直せば、影響を最小限に抑えられます。この改善に、サイバー上での製造工程シミュレーションを活用すれば、無駄のない効率的な製品製造が実現できます。

このようなシミュレーションは急な条件変更や、特急の依頼で他の製造ラインを特急品の製造に切り替えなくてはならないといった場合にも有効です。こうした取り組みの結果、富士通の工場では設備稼働率が向上し、生産性が15%から20%向上しました。

複雑な作業計画も人手に頼らず、短時間で策定

計画通りに生産を進めるには、機械や設備だけではなく、作業をする人員の確保も重要です。最適なシフトを組むには、各自のスキルや適性、労働時間、個人的な事情なども考慮する必要がありますが、これらを考慮して人の手によってシフトを組むには時間も手間も必要でした。

組み合わせ最適化問題を瞬時に解く「デジタルアニーラ」

このような現場の解決に向けては、量子コンピューティングから着想を得たデジタルアニーラの技術の活用が期待できます。デジタルアニーラは、様々な制約の中から最適な組み合わせを探索する問題(組合せ最適化問題)を高速に解くことができるため、物流配送計画をはじめ、金融のポートフォリオや創薬にも広く活用されています。限られた人数、各自の能力や適性、事情などの条件を考慮しながら、短時間で最適と思われる組み合わせを探し、作業シフトを策定します。

メンテナンスの分野においても定修などのメンテナンス計画最適化にデジタルアニーラが活用されています。スキル、リソース、作業内容などの複雑な制約の中から、デジタルアニーラが最適な組み合わせを選びだします。

スマート工場で将来の設備投資計画の最適化も可能に

製造現場の作業は今後さらに複雑になり、生産計画、人員計画を作る負担はさらに増していくと思われます。また、多品種少量生産への流れは今後ますます加速するでしょう。

現場の課題は千差万別であり、工場内だけで完結する課題ばかりではありません。製造業では、調達に関連する課題、他の業務ソリューションと連動する課題もあります。部品の在庫の状況によって柔軟に調整していく必要がある場合には、調達の情報も考慮した生産計画が必要になります。

製造現場における複雑さが加速していく中、実際の製造現場をサイバー空間に再現し、その工場をもとに、様々なシミュレーションが可能になるスマートメンテナンスの重要性が今後、ますます高まっていくと考えられます。

また、最適人員のシフト計画や生産計画の立案にかかる時間の短縮、生産計画の最適化に伴う稼働率の向上といった、製造現場が抱える現在の課題の解決が可能になるでしょう。さらには、シミュレーションの際に将来予測が可能となるパラメーターを設定すれば、工場の将来予測を踏まえての設備投資計画の立案にも活用できるかもしれません。

富士通には、様々なお客様の製造現場における課題解決に取り組んできた実績とノウハウがあります。それらをもとに、今後も製造業のお客様のスマートメンテナンスへの取り組みやスマート工場の実現に向けた支援をしていきます。