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SDGsの企業実践で重要なのは、社会課題の「自分事化」(前編)

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近年、SDGsを共通のゴールとして世界が達成に向けて取り組む中で、企業には自社の事業を拡大するだけではなく、環境問題など社会課題の解決に取り組むことが求められています。サステナビリティに先進的な企業は、具体的にどのような取り組みを実践しているのでしょうか。2020年2月19~20日に開催された「サステナブル・ブランド国際会議2020横浜」に登壇した富士通、YKK AP様、大川印刷様、大和ハウス工業様の取り組みから、そのヒントを探ります。

目次


本セッションでは、最初にフィールド・デザイン・ネットワークス/専修大学の見山謙一郎氏が「サステナブル」について説明しました。

将来も持続できる「サステナブルな活動」に向けて

写真 : 株式会社フィールド・デザイン・ネットワークス 代表取締役 専修大学 経営学部 特任教授 見山 謙一郎 氏

株式会社フィールド・デザイン・ネットワークス 代表取締役
専修大学 経営学部 特任教授
見山 謙一郎 氏

「サステナブル」とは、「そのやり方が将来も持続できる」ということです。1987年に国際連合(国連)が「環境と開発に関する世界委員会」でこの言葉を取り上げ、注目された頃にはすでに「持続可能な開発(発展)」という意味合いで使われていました。つまり、環境保全などを考慮した「持続可能性」と「経済的発展」は両立できると考えられたのです。
今、サステナブルに取り組む企業には、「社会課題の解決」と「企業価値の向上」の両立が求められます。双方の間にあるギャップや矛盾に向き合い、それを埋めていく取り組みです。こうした取り組みに先進的な企業は、何が違うのでしょうか。サステナブルに「なぜ取り組むのか(Why)」と、矛盾やギャップを「どう乗り越えてきたのか(How)」の視点で見つめ直してみると、その答えが見えてくるかもしれません。

SDGs成功のポイントは「経営視点と現場視点の融合」

次に、富士通の藤崎壮吾が登壇し、企業はどのようにSDGsに取り組めばよいかについて説明しました。

写真 : 富士通株式会社 サステナビリティ推進本部 CSR・SD統括部 藤崎 壮吾

富士通株式会社
サステナビリティ推進本部 CSR・SD統括部
藤崎 壮吾

富士通グループは、「常に変革に挑戦し続け、快適で安心できるネットワーク社会づくりに貢献し、豊かで夢のある未来を世界中の人々に提供します」という企業理念を掲げています。この理念はSDGsにも通ずるものです。

2019年に社長に就任した時田隆仁は、「富士通グループはIT企業からDX企業になる」と宣言しました。富士通が考えるDXとは、テクロノジーの力を活用し、地球上の人々の暮らしやビジネスに、あらゆる面で良い変容をもたらすことです。そして、自分たちの目の前の仕事の先に存在するバックグラウンドとしてSDGsを認識し、社会との共感力を高めることは、社員のやりがいに結びつくだけでなく、富士通グループのビジネスモデル変革の原動力になります。

例えば、食品ロスが発生している問題をどうしたら解決できるのか。富士通の営業担当者やSEは、自分たちがお客様に提供しているサービスや技術が、どう食品ロスの解消に結びつくのか、すぐにはイメージできません。

そこで、まずSDGs12にある「世界全体の1人当たりの食品廃棄物を半減」というターゲットをもとに大目的を立て、その実現のために「過剰生産の抑制」といった中目的を設定し、さらに「貯蔵環境の改善」といった小目的を考えていきます。食品ロスの半減という大目的を論理的に分解し、営業担当者やSEが身近に感じる「貯蔵環境の改善」にまで落とし込むことで、その実現のためには自分たちが提供している「AI(人工知能)やブロックチェーンの技術やソリューションが役立つ」という理解ができるようになります。

大目的を掲げ、中目的や小目的といったマイルストーンを設定して取り組むのは経営者視点での課題解決型アプローチです。一方で現場には、AIやブロックチェーンを活用することで、小目的から中目的、そして最終的には大目的を達成するという中・長期的な視野を持つことが求められます。経営者視点と現場視点ではアプローチの方向性が異なりますが、この2つの視点のアプローチを融合させることが重要になります。富士通では、このようなアプローチを実践しテクノロジーの可能性を捉え、SDGsの達成に貢献していきたいと考えています。

図 : 経営者視点と現場視点の融合が大切

経営者視点と現場視点の融合が大切

熱伝導率が低い樹脂サッシの普及で、CO2排出量の抑制に貢献

次に、YKK APの岩渕公祐氏が、「持続可能な社会に向けた窓メーカーの取り組み」と題し、CO2排出量削減に向けた取り組みを紹介しました。

写真 : YKK AP株式会社 取締役副社長 岩渕 公祐 氏

YKK AP株式会社
取締役副社長
岩渕 公祐 氏

YKK APは、アルミサッシから樹脂サッシへの転換で、CO2排出量削減に取り組んでいます。日本の窓材は主にアルミサッシですが、熱伝導率が低い樹脂に変えれば断熱性を高められます。窓の断熱性を高められれば、冷暖房の使用量を減らすことができ、CO2排出量を減らせます。

樹脂窓の普及率は韓国で80%、英国で76%、米国で65%と高いのに対し、日本では約20%に留まっていました。そこで当社では、2009年に窓の断熱性を高める取り組みを開始し、2019年には普及率約30%を達成しました。2020年には40%を目指し、CO2排出量を年間45%削減できる見込みです。

YKK APは「事業そのものが社会貢献」であり、SDGsにつながると考えています。社員への啓蒙活動や報告書の発行など、社会に向けた情報発信にも取り組んでいます。

再生可能エネルギー100%の印刷工場を実現

続いて大川印刷の大川哲郎氏が、従業員全員参加のSDGsへの取り組みについて紹介しました。

写真 : 株式会社大川印刷 代表取締役社長 大川 哲郎 氏

株式会社大川印刷
代表取締役社長
大川 哲郎 氏

大川印刷は、2016年から「ゼロカーボンプリント」に取り組んでいます。印刷事業により排出される年間のCO2排出量の全量を「カーボン・オフセット(打ち消す)」するため、北海道や山梨県などで実施されているCO2削減事業を支援しています。

また、2019年には印刷工場で「再生可能エネルギー100%」を実現しました。20%の電力を自社で賄い、横浜市が連携協定を結んでいる青森県横浜町の風力発電の電力で80%を賄いました。

さらに、サプライチェーン全体のCO2排出量を削減する目標を掲げ、同業の印刷会社も含め製本会社、インキメーカー、用紙メーカーなども集めて気候危機に立ち向かっていくための勉強会を開催し、情報発信しました。大川印刷にとってSDGsへの貢献は、サプライチェーンのパートナー企業も含めての取り組みで、「レジリエント・カンパニー」となるためのステップと言えます。

ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視し経営基盤を構築

プレゼンテーションの最後に、大和ハウス工業の近久啓太氏が、企業の経営理念とSDGsへの取り組みを統合させる考え方を説明しました。

 写真 : 大和ハウス工業株式会社 サステナビリティ企画部 サステナビリティ企画部長 近久 啓太 氏

大和ハウス工業株式会社
サステナビリティ企画部 サステナビリティ企画部長
近久 啓太 氏

大和ハウスが大切にしているのは、「儲かるからではなく、世の中の役に立つからやる」という創業者の精神です。当社のサステナビリティは「社外の課題と社内の課題」「事業とESG(環境・社会・ガバナンス)の経営基盤」を統合させることです。

住宅建設の現場は短期で、多くは四半期から半期、長くても1年間という短い期間での仕事になります。短い現場仕事が大半の当社に、どうESGの考え方を浸透させていくかが課題でした。

この課題に対応するため、当社の特長は業績評価をきちんと実施しています。環境への取り組みや社会性も評価軸に加え、仕事の平準化、時間当たりの利益や生産性を重視して業績を評価しています。今後も当社は引き続き企業理念を念頭に置き、社会価値を創出していきたいと思います。その結果がSDGsにつながっていくと考えています。

後編では、「企業理念とSDGsをどう結びつけ、企業内にSDGsへの取り組みをどう浸透させていくのか」をテーマに、登壇者によるディスカッション形式で意見が交わされました。

後編に続く)

※登壇者の職制は開催当時のものです。