服はシェアして、旅は手ぶらの時代に。(後編)デジタルとの融合でリアルはもっと輝く

【未来を創るチカラ Vol.14】DXプロジェクトリーダー 山田 修平

メインビジュアル : 服はシェアして、旅は手ぶらの時代に。(後編)デジタルとの融合でリアルはもっと輝く

前編からの続き)
老舗デパート銀座三越が業界に先駆けて始めたシェアリングサービス『CARITE(カリテ)』、旅に合う服やアイテムを宿泊先でシェアして旅行体験を深めるANAの『手ぶら旅行サービス』、様々なアパレル企業やブランドが参加できるスマホアプリとECモール『DASSEN BOUTIQUE(ダッセンブティック)』…いずれもファッションを中心とする従来のビジネスにデジタルトランスフォーメーション(DX)でシェアリングやサブスクリプションを掛け合わせ、新しい価値を創出するイノベーションとして注目されています。これらの立案者にしてプロジェクトリーダーである富士通の山田修平が、思い描いたイメージをどのように現実化し、大企業同士のコラボとして結実させたのか。そして今後のビジョンは?前編から引き続き、話を聞きます。

ステップを積み重ねて、大きなイメージを夢物語で終わらせない

山田 「プロジェクト全体の大きなイメージはほぼ最初からあったのですが、それをいかにスピーディーかつ効果的に実現できるかが課題でした。大きなイメージから始めると、周りからの共感を得られず夢物語で終わってしまうケースが多いため、はじめは構想しているアプリについて、パワポで紙芝居のようなものを作成して紹介しました。そうするとイメージが湧いて現実味が少し出てきます。次に、ARCHECO(アルチェコ)さんに、もう少し具体的なプロトタイプに落としてもらって、それをいろいろな人に見せてアドバイスを求め、仲間を巻き込んで…どんどん現実感を積み重ねて高めていった感じです」

コラボチームでイメージを共有し、企業文化や習慣をすり合わせる

「三越伊勢丹様やANA様は、これまで富士通がお付き合いのあった情報システム部さんではなく、バイヤーさんなど現場やフロントにいる方にアプローチしました。企業ではDXがうまく進まないことが経営課題となっています。特に現場の方ほどその思いを強くされているので、同じ方向性、危機感や課題感を持っている方を探して、僕が実現したいことを共有し、また一方で企業同士の取り組みであるため、それぞれの立場においてメリットやコミットしなくてはならないことも、条件として前もって認識いただいた上でプロジェクトに参加いただきました。何回もキャッチボールを繰り返しながら関係者を広げていって、お互いの会社の経営陣の合意も得ていきました。

チームは部活のように取り組みたいと思っています。メンバーが一つの目標に向かって、寝食を忘れて取り組むことで最高のものができると思います。企業の言葉や文化、習慣はなるべくすり合わせるようにしました。スケジュール感やタスクの粒度も企業によって違います。同じように、社内のコミュニケーションにおいても、社内の言葉やルールに翻訳して伝える必要があると思います。」

手応え十分!『CARITE』『手ぶら旅行サービス』の可能性が広がる

「2018年にスタートした『CARITE』は、今後データを溜めていきレコメンドエンジンを実装することで、よりお客様一人ひとりにあった最適な商品を提案するなど、継続して使用していただけるようなロジックを組んでいきます。さらに『CARITE』のシステムは、三越伊勢丹様のリアル店舗でも活用していくことが可能です。例えば買い物をする時に各ブランドで商品のQRコードを読み込めば、毎回レジまで行かずにキャッシュレス決済ができたり、デパートの出口で一括して商品を受けとったり、配送することもできます。さらに、商品を購入したお客様が休めるようなラグジュアリースペースを作って、お菓子の試食ができるようにしたら、そこにQRコードを付けて、お客様は気に入った商品をアプリで読み込んでおいて、必要な時に注文するなど、リアルとデジタルを融合させることで、これまでにない様々なサービスが生まれる可能性もあります。今後は『CARITE』だけでなく、ファッションを中心とした小売企業に『DASSEN BOUTIQUE』を展開していきたいと思っています。

図 : 銀座三越『CARITE』スマホアプリ利用イメージ(写真左 チャット画面、写真右 レンタル商品選択画面)

銀座三越『CARITE』スマホアプリ利用イメージ(写真左 チャット画面、写真右 レンタル商品選択画面)

ANA様の『手ぶら旅行サービス』は、今はモニターによる実証実験の段階ですが、おかげさまで想定以上の申し込みをいただいています。今後の展開としては、さらなるブランドの参入、ANAホテルとの提携などを検討しています。このサービスが広がれば、例えば旅行先でジョギングをするのにシューズがかさばって持っていくのが難しかったというビジネスマンや、リゾート地での結婚式で着るドレスのレンタルなど様々なシーンで手ぶら旅行を楽しんでもらえると思います。
他にも、インバウンド向けには原宿のファッションを写真で撮るだけでなく、日本のカルチャーをよりディープに体験してもらい、日本のブランド、デザイナーをもっと身近に海外の方に体験していただいたり、逆に日本人が海外旅行に行くときにも手ぶら旅行を実現したいと考えています。
また、ファッション業界全体の課題として、サステナブルというキーワードがあげられます。『DASSEN BOUTIQUE』の構想としては、商品の販売・レンタルだけで終わるのではなく、お客様が一度購入したアイテムをまたアパレル会社に売り戻し、アパレル会社がそのアイテムを中古として販売することができるといった2次流通を含めて、商品が循環できるようにしていきたいと思っています」

リアルな既存事業をディスラプトすることなく、DXでアップデート

「これまでは、リアルとデジタルを切り分けて評価するケースが多かったですが、富士通の従来からの取引先である企業様は、既存事業(リアル)にデジタルを掛け合わせることで、GAFAやスタートアップのようなデジタル先行の企業の先を行くことができると思っています。例えば、三越伊勢丹様の『CARITE』は、“店頭”、“人”といった独自の強みをデジタル化し、いかにお客様と繋がるか、というリアルとデジタルの融合を大切にしています。店頭にはお客様のことをよく知っている販売員さんがいる。店頭だからこそ得られるものがある。リアルな接点や体験は、Amazonにはない強みです。この強みを、デジタルでアップデートさせていくことが必要だと思っています。

DXの本質は、従来のビジネスモデルから新たなビジネスモデルに変革することです。変革によって既存ビジネスを棄損してしまったり、失敗というリスクを負わなくてはなりません。サブスクリプションというシステムをゼロから作ったり、運用していくことも、リスクを伴います。スタートアップでもコンサルタントでもない富士通がDXに取り組む意義は、重要なデジタルを自社だけでまかなうことが難しい企業に、提案から実装まで提供して、事業を行うところまで一緒にできること。そして常に最新テクノロジーにキャッチアップしなくてはならず、莫大な費用がかかるAIやビッグデータも扱えるところだと思います」

“会社村”の制約に縛られていたら、世界から取り残される

「大企業にいると、気が付かないうちに“会社村”の考え方、価値観やルールに縛られてしまいます。いろいろな人からよく『山田さんは、本当に富士通の人ですか?』と言われるのですが、常に制約に捕らわれずに、既存のものを壊す愉快犯でありたいと思っています。富士通の株価に悪い影響を与えないことならば何をやってもいい。そうでなくては、日本が世界からさらに取り残されて行ってしまうという危機感があります。意図的でも、株価に影響を与えることなんてなかなかできないし、富士通は度量が大きくDXを牽引していく会社なので、首になることはないとは思っています」

会社での市場価値ではなく、社会での市場価値を上げたい

「2016年にこのソリューションの企画を始めるまでは、ずっと新しいことをやりたかったけれど、うまくいかなくて、このままでは死んでも死にきれないなあと思っていました(笑)それまでは“成功モデル”といえば出世することで、与えられたミッションをこなしていたのですが、その考えをやめて、やりたいことの方を重視するようにしました。やりたいことを実現するためには、新規事業ができる部署に行きたいとアピールして、異動しました。しがらみとか、これやっちゃいけない、リスクを取っちゃいけないと、ずっと思っていたのですが、そうではなくて、トライをすることで自分が得た経験を市場価値にしていく、というマインドに変わったことが大きいですね。自分のやりたいことを会社のミッションに合わせてやれば、自ずと会社に還元できるし、やる自分の価値も上がる。そうやってこの3年くらい取り組んできました。最初から確信があったわけではないけれど、やってみて結果、そうなったかなという感じです」

チャレンジしたい!イノベーションを起こしたい!と思っていたら

「自分も最初の一歩を踏み出すことが、なぜかリスクと感じて怖かった。でも大企業といえども、いつなくなるかわからない時代です。チャレンジしないで留まっていることが、リスクだと思います。
チャレンジを支援してほしい人、DXの進め方がよくわからない企業や人も、ぜひご相談ください。『DASSEN BOUTIQUE』とともにミライを一緒に作ってくれる人も募集しています。プロジェクトへのメンバーとしてのジョイン、提携、連携も募集しています。

この先やりたいことはたくさんあって、プロアスリートの目になって試合を体感できるコンタクトレンズの開発や、サッカーが好きなのでサッカークラブの経営もしたいです。あと、子どもの頃からヨーグルトに抹茶を入れて食べるのが大好きなので、抹茶のヨーグルトを創りたいです(笑)」

山田 修平

写真 : 山田 修平

1984年茨城県生まれ。富士通入社後、金融業界の営業を担当。社内公募制度にて新規事業部門へ異動。経産省主催 次世代イノベーター「始動」選抜。「Dassen boutique」を中心に、三越伊勢丹「CARITE」、ANA「手ぶら旅行サービス」をリリース。現在は、「Dassen boutique」の事業拡大に従事しながら、DX、新規事業開発、イノベーション創出のアドバイザリー、実行支援に取り組む。2020年4月より0から1を生み出すトランスフォーメーションデザインファーム「Ridgelinez(株)」に所属。
Dassenboutique、DX、新規事業開発、イノベーション創出を検討中の方は、是非お問合せフォームにご連絡ください。