SDGsや国際女性デーで注目される女性のエンパワーメント

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イノベーション創出に求められるダイバーシティ

「イノベーションの創出は、多様性がカギを握る」という考えのもと、政府では今、大学や研究機関におけるダイバーシティ拡大の必要性を議論しています。2019年6月、経済産業省 産業構造審議会は、イノベーションを推進するための取組施策の中間とりまとめとして、「パラダイムシフトを見据えたイノベーションメカニズムへ ―多様化と融合への挑戦―」(注1)を公表しました。そこでは、イノベーションが産まれる要件の1つとして、多様な人材・知見が相互作用することを挙げ、その観点から「ジェンダード・イノベーションズ(注2)の概念も踏まえた女性研究者等の多様な人材の育成、複数の専門分野を習得した人材の育成などを進めることが重要ではないか」と提言されています。

今、日本の女性活躍推進はどこまで進んでいるのでしょうか。大学等における女性研究者の支援に向けた政府の取り組みと、ダイバーシティ推進に向けた富士通の取り組みについて、総合科学技術・イノベーション会議の議員でもあり、富士通でダイバーシティ推進を担当する理事 梶原ゆみ子が紹介します。

(注1)産業構造審議会 産業技術環境分科会 研究開発・イノベーション小委員会‐中間とりまとめ(2019年6月11日)
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/kenkyu_innovation/20190611_report.html

(注2)研究や技術開発にあたって性やジェンダーによる差を無視してはならないという考え方

日本の女性活躍の動向

まず、研究者の割合を見てみましょう。科学技術・学術政策研究所の「科学技術指標2019」によると、日本の女性研究者の割合は増加傾向にありますが、諸外国と比べて、まだ低い水準となっています。(図1)

図 : (図1) 主要国の女性研究者数の部門ごとの割合 (出典)文部科学省 科学技術・学術政策研究所、科学技術指標2019、調査資料-283、2019年8月

(図1) 主要国の女性研究者数の部門ごとの割合
(出典)文部科学省 科学技術・学術政策研究所、科学技術指標2019、調査資料-283、2019年8月

次に、産業界における女性の活躍の動向を見てみましょう。2019年12月の世界経済フォーラムで発表された、各国の男女格差の大きさを調査した「ジェンダー・ギャップ指数」(注3)では、調査対象となった世界153カ国の内、日本は121位(2018年は110位)でした。特に経済・政治分野では著しく低い結果となっています。

図 : (図2)日本のジェンダー・ギャップ指数

(図2)日本のジェンダー・ギャップ指数
(出典)Global Gender Gap Report 2020

(注3)Global Gender Gap Report 2020
http://www3.weforum.org/docs/WEF_GGGR_2020.pdf

SDGsの目標にも掲げられている「ジェンダーの平等」

2015年9月の国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」では、17ある目標の1つに「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」(目標5)が盛り込まれています。

具体的には、「政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参加および平等なリーダーシップの機会を確保する」などが目標として定められています。

図 : (図3)SDGs目標5「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」

(図3)SDGs目標5「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」

日本政府が目指す「Society5.0」実現と「研究力の向上」

研究現場で多様性を確保し、イノベーションを活性化

日本の研究力やイノベーション創出を強化する一環として、日本政府は研究機関における女性活躍推進のための各種施策に取り組んでいます。2019年6月に閣議決定された日本経済再生本部の「成長戦略フォローアップ」(注4)では、日本が見据える次世代社会構想「Society5.0」の実現に向けたイノベーション・エコシステムの構築の一環である「研究力の向上」の取り組みについて、以下のように掲げています。

研究現場における多様性を確保し、イノベーションを活性化するため、産学連携の下でリーダーとなる女性研究者を育成し、社会での活躍を促進するための新たな取組を 2019 年度中に開始するとともに、海外事例の調査分析等を踏まえ、あるべき環境整備や支援方策を2020年度までに検討し、施策に反映する。
(日本経済再生本部「成長戦略フォローアップ」p.57より引用)

(注4)https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/fu2019.pdf

女性研究者の支援拡大による研究力強化

また、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議では、2019年6月に「統合イノベーション戦略2019」を閣議決定し、研究力強化施策として「女性研究者・外国人研究者も含めたインクルーシブなキャンパスの実現」を掲げています。そして、大学改革などによるイノベーション・エコシステムの創出を目指し、「大学全体で若手・女性・外国人などの多様で優れた人材が大学の特色を創り出すことができるよう、バランスの取れた人事配置を実現」していくという方向性を示しました。

これを受け、2020年1月には「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」(注5)を決定。ダイバーシティ拡大のため、女性教員比率等の状況に応じた国立大学の運営費交付金の配分や、子育て中の研究者のサポート制度の拡充など、女性研究者の支援の拡大に向けた施策を盛り込みました。

(注5)https://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihui048/siryo1.pdf

「誰もが自分らしくあるために」、富士通が目指す6つのインクルージョン

一方、産業界においても多くの企業がダイバーシティへの取り組みを進めています。富士通グループでは、個々の多様性を活かす「インクルージョン」に向けた取り組みを、より力強く推進するための指針として「Global D&I Vision & Inclusion Wheel」を策定しています。

「Global D&I Vision」では、「誰もが自分らしくあるために」を目指す姿として掲げ、それを実現するためのビジョン・戦略目標・重点領域を定めています。また、「Inclusion Wheel」では、性別、年齢、SOGI(性的指向・性自認)、民族・人種、健康・障がいを中心として、多様な属性・領域を対象に推進を図ることを明記しています。

図 : (図4)富士通グループが策定した「Global D&I Vision & Inclusion Wheel」

(図4)富士通グループが策定した「Global D&I Vision & Inclusion Wheel」

また、「Inclusion Wheel」として、以下の6つの行動を推奨しています。
(1)Smiling
(2)Thanking
(3)Listening
(4)Being open to new ideas
(5)Challenging inappropriate behavior
(6)Getting involved in D&I activities

富士通グループは2017年に、国連グローバル・コンパクトとUN Womenが共同で作成した「女性のエンパワーメント原則」の趣旨に賛同し、同原則に基づき行動するためのステートメントに署名しました。(注6)

また、2018年には国連が定めた「LGBTIに関する企業行動基準」(注7)に日本企業として初めて支持を表明するなど、グローバルなダイバーシティ推進の動きを積極的に取り入れています。

(注6)「女性のエンパワーメント原則(WEPs)」に署名しダイバーシティ推進活動を加速(プレスリリース)
https://pr.fujitsu.com/jp/news/2017/09/8.html

(注7)UN Human Rights Office unveils global standards for business to tackle discrimination against LGBTI people
https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=22163&LangID=E

3月8日は国際女性デー

3月8日は、国連によって定められた「国際女性デー(International Women's Day)」です。1975年に正式採択され、女性の社会的、経済的、文化的、政治的功績をたたえる日とされています。また、男女がともに参画する社会の実現に向けたこれまでの前進に着目し、それを支援するため私たち一人一人に何ができるかを認識するための日でもあります。

当日、イタリアやフランスでは、男性が日頃の感謝の気持ちを込めて、女性にミモザを贈る習慣があるそうです。また、スイスでは黄色の水仙を贈るなど、世界中の女性がお祝いをするイベントが各地で催されます。

富士通グループでは、国際女性デーの趣旨に賛同し、グローバル全体で以下のようなイベントや活動を実施しています。(注8)

  • 社員が女性活躍を後押しするメッセージ動画を各リージョンにおいて公開
  • ダイバーシティ&インクルージョンをテーマとする有識者による講演、ワークショップの実施
  • 社内のコミュニティによる女性活躍推進の取り組み事例発表会やネットワーキングイベントの開催

誰もが疎外されることなく居場所を感じ、完全に自分自身でいられる、より平等な社会のために、そして持続可能な未来をつくるために、自分にできることは何かを考える良い機会になることを期待しています。

(注8)2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、参加者および関係者の健康・安全面を第一に考慮し、日本での集合型イベントは中止といたしました。

産学官で進めるダイバーシティ

日本企業がダイバーシティを進め、イノベーション創出を強化していくためにも、特に理工系における女性学生や研究者が増加することが必要です。大学等において、女性を含めた若手研究者が安心して、自由な発想で研究に取り組める環境の整備を進めるとともに、研究者の魅力を高めていくために産学官が連携してムーブメントを作っていくことが重要です。まずは、産学官のネットワーキングを強化し、それぞれの取り組みを共有するとともに、社会に対して意識改革を促すメッセージを発信していければと考えています。

著者情報
梶原 ゆみ子

総合科学技術・イノベーション会議 議員
富士通株式会社 理事(グローバルコーポレート部門 産学官連携推進担当 兼 ダイバーシティ推進室長)

写真 : 梶原 ゆみ子 総合科学技術・イノベーション会議 議員 富士通株式会社 理事(グローバルコーポレート部門 産学官連携推進担当 兼 ダイバーシティ推進室長)

※この記事は、2019年12月に開催された「第2回全国ダイバーシティネットワークシンポジウム」において、富士通 理事 梶原ゆみ子が基調講演した内容から一部、抜粋・編集したものです。