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製造業の最新活用事例にみる「デジタルツイン」とは?

メインビジュアル : 製造業の最新活用事例にみる「デジタルツイン」とは?

デジタルトランスフォーメーション(DX)の波は、日本の基幹産業でもある製造業にも押し寄せています。製造工程をデジタル化し、あらゆるデータをネットワークでつなげることで生産性の向上などを目指す動きが本格化してきました。その原動力として注目を集めているのが「デジタルツイン」です。製造業におけるデジタルツインの活用事例をご紹介します。

現実世界の情報をサイバー空間に反映させる「デジタルツイン」

近年、IoTやAI(人工知能)などに代表される先進技術は、様々な業種・業態の発展を推進しています。そうした中、製造業で現在、注目されているのが「デジタルツイン」です。ドイツの「インダストリー 4.0」、中国の「製造2025」など、製造業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)が、ものづくり先進国では起きています。それらDX推進のキーワードが「デジタルツイン」です。

デジタルツインとは、文字通り「デジタルの双子(ツイン)」という意味です。リアルなフィジカル(物理)空間の情報をIoTなどの技術で収集し、「エッジコンピューティング」によって処理を行い、その結果をほぼリアルタイムでクラウド上のサーバに送信。その情報をもとに、「サイバー(仮想)空間にフィジカル空間の環境を再現する」という概念です。

現在、全世界では約200億個ものIoT機器が存在するとされ、様々なデータをリアルタイムで収集できるようになりました。製造現場では工場の製造設備や検査機器などがIoTで繋がり、情報が収集され、クラウド上のサーバに蓄積されています。リアルな製造現場の情報をもとに、サイバー空間に「製造現場の現状を再現する」のが製造業におけるデジタルツインです。

デジタルツインを活用すれば、サイバー空間において新製品を設計し、効率的な製造工程をシミュレーションしたり、リアルな製造設備をIoT機器でモニタリングした様子をリアルタイムにサイバー空間に再現し、製造設備に反映させたりできるようになります。サイバー空間で製造工程をシミュレーションすることで、将来の設備の故障などを予測し、より正確な予防保全を実施できるようにもなります。

また、リアル空間の情報をサイバー空間に反映させ、その結果を再度、リアル空間にフィードバックさせることで、生産効率をさらに高めたり、生産工程におけるムダを省いたりできるのもデジタルツインを活用するメリットです。こうした取り組みが先進的なものづくりの現場では現実のものになり、製造業におけるDXを加速させているのです。

「設計」から「製造」、「新しい付加価値の創出」までデジタルツイン活用の3つの段階

ただし、製造業におけるデジタルツインの活用には、第1段階から第3段階までレベルがあると考えられます。第1段階は、部品や製品の「設計」工程でのデジタルツインの活用です。第2段階が部品や製品を「製造」する際の活用です。第3段階は、「ものづくりのサービス化」の流れに応じて、「サービス」提供時におけるデジタルツインの活用です。

図 : 製造業におけるデジタルツインの活用3段階

製造業におけるデジタルツインの活用3段階

このうち第1段階の設計の段階でのデジタルツインの活用はすでに始まっています。例えば、自動車部品や他の製品の「設計」の工程では、CADやCAEを活用し、部品や製品を仮想空間で設計し、作成された3Dデータをもとにサイバー空間でモックアップモデルを作成したり、デザインを確認したりする取り組みです。

そして、現在、先進的なものづくり企業においては、第2段階の「製造」の段階でデジタルツインの活用が急速に進んでいます。現実の工場の建屋や設備・機器などをすべてデータ化して、サイバー空間に再現。製造プロセスの改善、設備・機器の予防保全などに役立てられています。

さらに、ものづくり企業が製品を作るだけではなく、「モノからコトへ」という言葉に象徴されるように、顧客が製品を使うことで得られる「体験的な価値」を最大化する取り組みを実践する時にもデジタルツインの活用が考えられています。その他にも、複数の企業が連携し、新しい付加価値を生み出すサービスの有効性を判断する時にもデジタルツインの活用が見込まれています。

「製造」段階での活用事例:スマート工場へと進化した上海儀電

ここからは、先進的なものづくり企業におけるデジタルツインの取り組みについて事例を紹介します。製造業におけるデジタルツイン活用の第2段階である「製造」における事例として、カラーフィルター・メーカーである中国の上海儀電(INESA)の工場での取り組みを紹介します。

現在、中国政府は「中国製造2025」の戦略構想を打ち出し、ICTと製造業を融合して製品を大量生産する「製造大国」から、製造の品質を重視した「製造強国」に転換することを目指しています。富士通は、INESAのパートナーとして同社の競争力を強化する「スマート製造プロジェクト」を支援しています。

INESAでは、工場の建屋や設備・機器をすべてデータ化してデジタルツイン工場として再現しています。現場のスタッフは、富士通の「COLMINA Service」の機能の1つである「Intelligent Dashboard(以下、インテリジェントダッシュボード)」で一元的に可視化したデジタルツイン工場を俯瞰したり、各機器の電力消費量やコンディションデータを遠隔から細かく監視したりしています。

同社の工場では以前、グラフでデータのみを表示するという監視が行われていました。現在は、例えば機器に異常が発生した際、デジタルツインによって、それが実際の工場内のどの箇所かを直感的に判断し、迅速な対処や改善検討することが可能になりました。

また、多くの製造業企業が直面している「技術継承」の課題についても活用されています。例えば、専門性の高い技能を有する熟練工本人の視点を利用して、デジタルツインによって知識・技能を記録し、彼らが持つノウハウの継承にも役立てています。

日本国内の「製造」段階レベルの事例としては、富士通の小山工場(栃木県小山市)での取り組みがあります。同工場で光中継システムや光伝送装置などの機器を製造している富士通テレコムネットワークスは、インテリジェントダッシュボードによって約150項目の生産データを一元的に可視化するとともに、生産や品質に関する情報やエネルギーの監視などを実施。異常個所については、ドリルダウンで詳細まで情報を掘り下げて対応できています。

「工場横断の全体最適化」でベストプラクティスを共有

また、デジタルツインを活用し、複数の製造現場を横断的に分析し、「工場横断の最適化」を進める企業も増えています。特定の1つの工場の可視化はもちろん、グローバルに存在する複数の工場を可視化して状況をリアルタイムかつ、詳細に監視・把握できる仕組みが構築され始めています。

全世界にある複数の工場をサイバー空間に再現し、それらの工場を横断的に分析し、製造工程や装置を比較することで、グローバルにおけるベストプラクティス工程を発見できるようになります。例えば、南米工場の品質管理が全世界の工場の中でも優れていることが分かれば、そのベストプラクティスを他の工場に適用してみることができます。それにより、デジタルツインを活用した、新しい改善活動が進められているのです。

複数企業が連携する「サービス化」でもデジタルツインを活用:「未来の駅」共創コンセプト

複数の企業が連携して新たなサービスを提供する段階でもデジタルツインの活用が進みつつあります。富士通の共創プロジェクトの1つで、オムロンソーシアルソリューションズと協力して実施している「未来の駅」構想でも、デジタルツインが活用されています。

これは、富士通との共創コンセプトである「駅業務支援システム」によって駅構内管理システムや遠隔監視制御システムなどと接続し、オムロンソーシアルソリューションズ独自のAI技術を活用して、未来の駅をサイバー空間に再現するものです。

例えば、改札機や券売機、ロッカー、エスカレーター、エレベーターといった駅構内の設備の稼働状況をサイバー空間で監視して、異常が発生した際は、その箇所や故障状況などを詳細に把握することが可能です。過去のメンテナンス履歴やセンサー感度、エラー発生回数などを可視化し、詳細に確認することによる、スマートメンテナンスの実現も見込まれています。

日本が抱える社会課題や災害課題の解決にも活用が期待される「デジタルツイン」

デジタルツインは、現在の社会課題や災害課題の解決にも活用が期待される技術です。例えば、台湾で実施されている共創コンセプトである「スマートダム」が挙げられます。

台湾の台中市にある湖山ダムをデジタルツインで再現することで、地形やダムの形状、水位に加えて、上流の河川情報やダムの放出量の推移などをリアルタイムで確認できる仕組みを開発するという共創コンセプトです。

このシステムでは、ドローンを使って上空から撮影した映像を、5G通信を活用してリアルタイムに確認することもできます。

図 : スマートダムの表示画面例

スマートダムの表示画面例

富士通では、必要な情報をリアルタイムに把握することで災害対応に役立てられると考えています。スマートダムでは過去から現在の水位の経緯はもちろん、現在から未来への予測が可能です。

デザイン思考で企業の「ありたい姿」を明確に

このように多くの導入メリットが見込まれるデジタルツインですが、残念ながら日本企業は製造工程の可視化レベルにとどまっていることが多いため、米国や中国などと比べて遅れを取っているのが現状です。

そうした企業に寄り添い、ビジネス変革までを含めた支援をしているのが富士通です。富士通グループでは「デザイン思考」で未来を共創するプロジェクトに多数参画しています。現状にこだわるのではなく、5年先の「ありたい姿」を描き、それを一緒に創り上げていくことをお手伝いしています。

デジタルツインは製造業のみならず、小売業や遠隔医療などさまざまな分野での応用が期待されています。デジタルツインを含めた、企業の「DXを実現する重点技術の開発」にも注力する富士通とともに、最初の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。