AIを活用し現場課題を解決、大成建設が挑む建設事業でのDX展開とは

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建設事業を中核とした企業活動を展開する大成建設は、今AI・IoTなどデジタル技術を活用しスマートシティにつながる新たな価値創造に向け挑戦を進めています。具体的に推進しているスマートホスピタル事業を中心に、どのように企画し実現しようとしているかご紹介します。
【Fujitsu Insight 2019レポート】

本セッションには、大成建設ソリューション営業本部AI・IoTビジネス推進部の上田俊彦氏、医療・医薬営業本部医療施設計画部の松田祐晴氏が登壇し、AI・IoTビジネスへの取り組みとスマートホスピタル事業について紹介しました。

AIやIoTでお客様に寄り添う建物ライフサイクルの最適化を目指す

写真 : 大成建設株式会社 ソリューション営業本部AI・IoTビジネス推進部 上田 俊彦 氏

大成建設株式会社
ソリューション営業本部AI・IoTビジネス推進部
上田 俊彦 氏

大成建設では、現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)実現及びAI・IoT関連の事業化に向け、2019年8月「AI・IoTビジネス推進部」という新組織を立ち上げました。企画からプラットフォームデザイン、デジタルビジネスの展開までを担当する3つの推進部門を組織化し、社内横断的に120名からなるプロジェクトチームを編成しています。スマートホスピタル、スマートファクトリー、スマートオフィス、スマートビルディング、スマートデータセンター、建物ヘルスモニタリングなどのワーキンググループを通じ、それぞれ事業化を進めています。

この組織を通じ大成建設が目指すことは、AIやIoTなどのデジタル技術やBIM(注1)を活用し、建物竣工直後から効率的、効果的なビルマネジメントを実施することです。お客様の維持管理の負担を軽減するとともに、お客様に寄り添いながら、建物ライフサイクルの最適化実現に取り組みます。

今後は、BtoBから、BtoCへの展開も視野に入れていきます。サイバーフィジカルシステム(Cyber Physical System)を基盤とし、顧客ニーズに合ったサービスを展開していく予定です。IoTを活用したスマートビルディングや建築生産システムの革新を両輪としたビジネスを展開していきます。

(注1)Building Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング)の略。建物のライフサイクルにおいてそのデータを構築管理するための工程。コンピュータ上に現実と同じ建物の3Dモデルを再現し、設計や建設の効率を高める。

382個のアイデアから始まったスマートホスピタル事業

続いて松田氏が登壇し、大成建設が取り組んでいるデジタルビジネスの一例として、スマートホスピタル事業について紹介しました。

写真 : 大成建設株式会社 医療・医薬営業本部 医療施設計画部 松田 祐晴 氏

大成建設株式会社
医療・医薬営業本部 医療施設計画部
松田 祐晴 氏

患者増と看護師不足による医療現場の課題を解決する病院施設

日本国内では、少子高齢化によって将来人口の減少が予測されています。今後、2060年までの間、日本全体で65歳以上の高齢者の数は横ばいとなりますが、若年・生産年齢層が大きく減少することが見込まれています。

私は、この現象こそがあらゆる産業が抱える課題の根源の一つだと思っています。また、85歳を過ぎたあたりから認知症の発生率が高くなり、認知症患者の増大も予測されています。また、厚生労働省の調査によると、2025年には看護師が6万人以上不足するとも言われています。高齢者の認知症患者が増え、看護師は不足するとなると、医療の現場はますます疲弊してしまうことが懸念されます。

そうした医療現場の課題を解決するものとして、近年、医療向けIoTを活用する動きが活性化しています。また、各種調査では、医療情報システムや医療分野におけるIoTシステムの国内市場は年々増加しています。

従来は建物の整備と病院運営が個別に検討されるため、非効率なことも多く発生していました。しかし、当社では、病院運営を見据え、AIやIoT、ロボティクスなど先進技術の導入やインフラ整備を通じて、病院の運営効率化や高い付加価値をつけた病院施設の提供を目指しています。

当社におけるスマートホスピタル事業では「Sustainability(サステナビリティ)」「Flexibility(フレキシビリティ)」「Hospitality(ホスピタリティ)」の3つをコンセプトに掲げています。

名古屋大学病院との共同研究においては、医学と病院運営の両面からアドバイスをいただきながら取り組みを進めています。また、富士通グループをはじめ、複数の企業や病院と協力して新しいスマートホスピタルの商品開発に取り組んでいます。

成長し続けるスマートホスピタルの実現に向けて構想をスタート

その中で、スマートホスピタルのコンセプトづくりでは、富士通のデジタルコンサルティング手法を採用しました。当初、我々は既に「こんな病院があったらいいな」という物語を作成していました。そして、そのストーリーの構想をシステム機能に落とし込んでもらう提案を複数の会社に依頼していました。

その際最も印象的だったのが富士通からの提案でした。それは、「一度、原点に立ち返って、その物語における着想を一段高い所から俯瞰(ズームアウト)し、全体を把握した上でコンセプトを作成しましょう。そしてそのコンセプトにしたがって、システム設計をしていきましょう」というものでした。私たちはその提案を採用し、「成長し続けるスマートホスピタルの実現」を目指すことにしました。

現場の看護師や薬剤師、理学療法士から生の声をヒアリング

私たちは2018年12月から、実現したいユースケースの検討作業を開始しました。まずは、ワーキングメンバーで、スマートホスピタル実現に向けた要望を書き出しました。付箋に記されたアイデアは382にものぼりました。それらのアイデアについて、実際に看護師や薬剤師、理学療法士など現場で働いている関係者にヒアリングやアンケートを実施し、50個まで絞り込み、取り組み優先度を数値化しました。その後、具体的なサービスの検討を行い、技術検証の着手に取り掛かりました。

患者・スタッフジャーニーマップから7つのテーマを抽出

さらに、外来・病棟(入院)の重点的な取り組みについて「患者・スタッフのジャーニーマップ」を作成しました。これは、病院内における患者やスタッフの行動の流れを時系列に並べ、それぞれの流れの中で発生する困りごとや、課題、解決策を見える化した表です。この表をベースに、課題の洗い出しと解決することによるインパクトの大きさ、実施する施策などを整理し、最終的に以下示したような外来・病棟それぞれの重点的な取り組みテーマ7つを抽出しました。

図 : 「ジャーニーマップ」を作成し、課題を俯瞰的に見える化し、外来・病棟(入院)の重点取り組む7つのテーマを選定。上記は、外来系ジャーニーマップ

「ジャーニーマップ」を作成し、課題を俯瞰的に見える化し、外来・病棟(入院)の重点取り組む7つのテーマを選定。上記は、外来系ジャーニーマップ

AIを活用した病棟の見守りと事故の未然防止を検証

その中の一つが、「病棟の見守り、事故の未然防止」です。現場の人手不足によるインシデント(ヒヤリハット)として課題になっている患者の離院や離床をAIやIoTでカバーできないかと考え、実証実験対象として選定しました。

従来のベッドセンサーやウェアラブルを使用した見守りソリューションでは、設置に手間がかかって誤作動が多かったり、端末を身に着けさせるとすぐに外そうとしたりするという課題がありました。

そこで今回の実証実験では、画像認識方式を採用している富士通のAIソリューション「FUJITSU Technical Computing Solution GREENAGES Citywide Surveillance(グリーンエイジズ シティワイド サーベイランス)」を活用しました。画像で認識するため、患者への負担が少なく、また、一人ひとりにあった見守りを実現でき、病院全体で転倒の発見など、より細かい見守り機能への発展が期待できるところが大きなメリットでした。現在計画中の実証実験では、病院全体をマルチカメラネットワークで患者を見守るようにし、患者の院外離院によるトラブルの防止、患者を拘束しない見守りの実現を目指しています。

今後も医療の世界とテクノロジー、本業である建築・まちづくりを融合することで、建設会社としてヘルスケア分野のDX実現に取り組んでいきます。また、流通業やサービス業など他業種の企業とも一緒に作り上げていきたいと考えています。

図 : 大成建設と富士通との実証実験イメージ 従来のカメラ見地の仕組みではとらえきれない病院全体をマルチカメラネットワーク適用により、患者の院外離院トラブル防止、院内見守りの実現を目指す

大成建設と富士通との実証実験イメージ
従来のカメラ見地の仕組みではとらえきれない病院全体をマルチカメラネットワーク適用により、患者の院外離院トラブル防止、院内見守りの実現を目指す

スマートファクトリー、オフィス、ビルディング…次の世代へつなげる大成建設のDX

今回具体的に紹介したスマートホスピタル以外にも、建設業におけるDXの展開として、スマートファクトリーやスマートオフィス/スマートビルディングなどの事業活動について、上田氏が紹介しました。

大成建設が考えるスマートファクトリーとは、建物設備の設計・施工・改修と生産設備まで一貫して提供できる強みを活用したプラットフォームを目指すことです。また、スマートオフィス/スマートビルディングでは、建物・施設のIoT化やIoTプラットフォームによる施設統合管理システム、AIによる情報分析・自動制御などを活用していきます。

さらに当社が最終的に見据えているのが、スマートシティです。社会の困りごとを大成建設が保有する技術を活用しながら、企業間マッチングによる新しいサービスが創出していくことを目指しています。

図 : 大成建設の目指すスマートシティ例

大成建設の目指すスマートシティ例

大成建設では、持続可能な未来に向けて社会に有益なモノづくりの支援を行うことに加え、建物の使われ方や人々の生活・活動をデジタルの力でサポートすることにより、人々の幸せを実現したいと考えています。
一方、建設業におけるDXへの取り組みとして「最新のICTを駆使して施工管理の生産性をさらに高めること」「最先端のロボットやアシストスーツを採用し、省力化・省人化に勤めること」「情報共有システムを駆使してコミュニケーションの活性化を図ること」を目指しています。今後もデジタル技術を駆使して、施工管理の生産性を高める支援システムや最先端のロボット、情報共有システムを活用していきます。

大成建設はこれからも、人がいきいきとする環境を創造することが我々の仕事だと強く認識しながら、建設だけではなく、お客様に向けたサービス全般が「For a Lively World」につながるように、ビジネスを進めていきたいと考えています。

登壇者

写真 : 大成建設株式会社 ソリューション営業本部AI・IoTビジネス推進部 上田 俊彦 氏

大成建設株式会社
ソリューション営業本部AI・IoTビジネス推進部
上田 俊彦 氏

写真 : 大成建設株式会社 医療・医薬営業本部 医療施設計画部 松田 祐晴 氏

大成建設株式会社
医療・医薬営業本部 医療施設計画部
松田 祐晴 氏