食品ロスを減らす注目のフードシェアリングサービスとは?(前編)

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日本でも食品ロス削減推進法が成立し、大手チェーンによる消費期限の迫った商品へのポイント還元などの取り組みが始まりました。一方、食品ロス対策で先行する欧州では、スマートフォンのアプリを活用したプラットフォーム型のフードシェアリングサービスが広く普及し始めています。国内外での食品ロス対策の事例をもとに、フードシェアリングサービスのパターンや日本での普及の可能性について前編・後編でご紹介します。

国内外での食品ロス削減の動き

2019年5月24日に「食品ロス削減推進法 (注1)」が成立し、同年10月1日に施行されました。これには、(1)自治体に推進計画の策定と削減に取り組む事業者の支援やフードバンクとの連携強化等を、(2)企業に施策への協力や積極的に食品ロスの削減に取り組むことを、そして(3)消費者に購入や調理の際、自主的に取り組むよう促す条文が盛り込まれています。

このような流れのなかで大手チェーン店は、消費期限が迫った商品の購入に対するポイント還元や、食べ残しを持ち帰ることができる容器を用意するなど店頭での取り組みを始めました。海外では、スマートフォンのアプリを活用したプラットフォーム型のフードシェアリングサービスが登場し、飲食・小売店と消費者をマッチングするという新たなビジネスが欧州を中心として広範に普及しています。その最大手である「Too Good To Go」というサービスは約3年間という短期間に750万人のユーザー数と約25,000店舗の登録店を獲得するまでに成長し、2020年までに5000万人の登録を目指しサービスの拡大を続けています。

飢餓の苦しみと食品ロス13億トンの矛盾

食品ロスとは、食べるためにつくられた食品が失われたり捨てられたりしてしまうことを指します。世界的にみると生産された食品の3分の1にあたる13億トンが廃棄されており(注2)、日本に着目すると2016年時点で推計約643万トンに上るとされています(注3)。このような食品ロスは、世界には飢餓に苦しむ人口がなお多数存在する一方で、食品が大量に無駄になっているという矛盾から、持続可能な社会の構築を目指すうえで問題視されています。

また、廃棄処理にコストがかかり多量のCO2を排出しているという点でも早急に解決を図るべき課題として位置づけられています。2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」においては、目標12のターゲット3に「小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食品の廃棄を半減させ、収穫後損失等の生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる」ことが明記されるなど、食品ロスに対する取り組みが国際的に促進されています(注4)。

日本では「食品ロス」とまとめて表現していますが、より細かくみると「食料ロス(Food loss)」と「食料廃棄(Food waste)」の2つの段階に分けられます(図表1)。食料ロスは食品サプライチェーンのより上流段階で発生することが多く、例えば、店頭には並ばない規格外品、加工過程で不要となった食材や食品等が含まれます。食料廃棄はより下流の小売や消費段階で発生することが多く、売れ残りの調理品や賞味期限切れの商品、食べ残し等がそれにあたります。日本など「先進国」ではサプライチェーン下流の食料廃棄が多く、まだ食べられるものが多く含まれているため、この解決が課題となっています(図表2)。

対策として、これまでも食品や食材の見切り品、スーパーや惣菜店での閉店間際の値引き等が行われてきました。加えて、厳しい消費期限管理や季節商品の販売等によって食品の大量廃棄が指摘されるコンビニ業界では、セブン-イレブン・ジャパンやローソンが消費期限の迫った商品の購入に対しポイント還元を行うことで対策に乗り出し、ファミリーマートは恵方巻などの季節商品を完全予約制にすることを決定しています。外食産業大手のすかいらーくホールディングスでも、食べ残しを持ち帰ることができる容器を用意するなどの対応を行っています。

図 : 図表1 食料ロスと食料廃棄の定義(出所)国連食糧農業機関(FAO)「世界の食糧ロスと食料廃棄」を基に富士通総研作成図表1 食料ロスと食料廃棄の定義
(出所)国連食糧農業機関(FAO)「世界の食糧ロスと食料廃棄」を基に富士通総研作成

図 : 図表2 食品サプライチェーンにおける主な食料ロス・廃棄(出所)富士通総研作成

図表2 食品サプライチェーンにおける主な食料ロス・廃棄
(出所)富士通総研作成

食品ロス削減で注目を集めるフードシェアリングサービスとは

こうした中で、近年注目を集めつつあるのがプラットフォーム型のフードシェアリングサービスです。フードシェアリングサービスとは、小売店や飲食店と消費者やフードバンクのような団体(注5)をスマートフォンのアプリ等を使ってマッチングし、飲食可能な状態にありながら廃棄されてしまう可能性の高い調理品や食料を提供するサービスです。(図表3)欧州を中心とする諸外国では、2015年辺りからサービスが登場し始め、各国や地域で広く普及しているものもあります。

小売業の店頭でも行われている見切り品や時間による値引き等の従来の対策も、食料廃棄を減らすうえでは効果的な取り組みの一つですが、プラットフォームを活用したマッチングにより、これまでは廃棄されるだけで消費者が安く購入するという選択肢さえ与えられてこなかった食品を可視化できるようになりました。これにより店舗側は来店している客以外にも広く即時に告知でき、消費者にとっては選択肢が広がるというメリットがあります。

図 : 図表3 フードシェアリングサービス(出所)富士通総研作成

図表3 フードシェアリングサービス
(出所)富士通総研作成

3つのシェアリングサービスモデル

フードシェアリングサービスはマッチング対象や目的によって特性が異なり、環境経済学やビジネス・マネジメント分野の研究においてこれらのサービスの類型化がなされていますので紹介します(注6)。

1. 営利型(The sharing for money model)
営利型とはB to Cのモデルで、主に企業が消費者向けに、営利活動としてフードシェアリングサービスを提供しているものを指します。

2. チャリティ型(The sharing for charity model)
チャリティ型は、非営利団体が運営主体となり、基本的には無料で食料がやり取りされます。廃棄になる予定だった食品を、貧困層等に分配することが主な活動です。

3. コミュニティ型(The sharing for the community)
最後のコミュニティ型は、P to Pモデルで、個人間での食品廃棄のやり取りを主とします。このモデルに関わっている組織は、基本的には個人の活動等をマネージすることはなく、あくまで個人と個人が活動のためのコミュニティを形成する場を提供するというスタンスで参加します。

この類型を参考にしながら、日本で重要になっている食料廃棄に着目し、食料ロスと食料廃棄の段階の違いがより明確になるようサプライチェーンの下流・上流の観点を入れて、以下の3つのパターンに修正して事例を分析しました。

フードシェアリングサービスのマッチングパターン

① 飲食・小売店と消費者を直接マッチング

まず一つ目の類型は、飲食・小売店と消費者を直接アプリでマッチングするサービスです。この代表的な例は、日本でも紹介されており、国際的に認知度が高い「Too Good To Go」です。このサービスはデンマークから始まり、いまや欧州11カ国に展開するまで拡大しました。

レストランやベーカリー等の飲食店やスーパーマーケットのような小売店がその日に余りそうな調理品や食材をアプリ上で安価に販売し、それを購入した消費者は、指定時間に現地へ取りに行きます。決まった品物が用意されていることもあれば、その時に残っているものを自らその場でパックや袋詰めにする場合もあります。

2016年に始まり、イケアの一部店舗が登録するなど、2019年6月時点で11カ国に約24,600店舗の登録があります。ユーザー数は2019年2月時点で750万人の登録を誇り、2020年の終わりまでに5,000万人というチャレンジングな目標を掲げています。類似のサービスは多く出現していますが、早くからこのモデルでフードロスシェアリングビジネスを展開してきたことによる知名度の高さが、Too Good To Goの強みといえます。

これ以外にも、イギリスとスペインで展開する「Olio」は他のサービスと違って、飲食店や小売店と消費者を繋ぐだけでなく、消費者間のやり取りにも対応しています。例えば長期で旅行に行くとき等、自宅に保管できない食材やそれ以外の日用品等を売買することも可能です。自宅保管の食材の取引は特に安全性の管理が難しそうですが、数週間にわたる長期休暇が珍しくない欧州らしい取り組みです。

基本的にどのサービスも、ユーザーが支払うのは食品代金のみであり、登録店舗が売上をあげた時点でそのうちのいくらかを手数料としてとっているケースが多くなっています。その額については明記している企業もあればそうでないものもありますが、フィンランド、スウェーデンとドイツに展開している「ResQ Club」は25%、オーストラリアとニュージーランドで展開する「Y Waste」は20%としています。このモデルでは、食料廃棄がどれだけ売れたかどうかが直接売上に関わるため、登録店舗数とアクティブなユーザー数の確保・維持がカギとなります。

また、いずれのサービスにおいても、サービスによって廃棄を免れた食事量や、それに付随したCO2の削減量等の環境面の社会的インパクトを、ホームページ上で強調しています。ここからは、ユーザーたちが単に売れ残り商品を安値で購入する「お得感」だけでなく、こうした社会的インパクトに価値を見出していることが窺えます。

② 飲食・小売店と組織・団体をマッチング

①と同様に飲食店や小売店の食料廃棄を扱いますが、消費者個人ではなく、団体や組織とマッチングをすることに特化するサービスも存在しています。このパターンは非営利団体による運営が多く、アプリ等を活用しフードバンクのようなチャリティ組織と飲食・小売店をマッチングすることで、食環境が貧しい人々に分配が行われるルートを確保するための取り組みがみられます。アプリを活用することで、飲食・小売店で扱われることの多い調理済みの食品の余剰を即時に把握できるようになり、より短時間で的確に食料を分配すべき地域や人の特定が可能になっています。

日本ではまだこういった活動は極めて数が少ないですが、食品ロス削減推進法にはフードバンク支援が明記されており、農水省はフードバンクへの寄付に関して企業に税制上の優遇措置を設けるなど促進策(注7)を展開しており、今後広がっていく可能性もあります。

③ 農家・生産加工業者と組織・団体をマッチング

店舗と消費者や組織のマッチングに比べると事例が少ないですが、サプライチェーンの上流である農家や生産加工業者等と組織を繋ぐ取り組みもみられます。その一例はアイルランドに拠点を置く、Food cloudです。同社は2種類のサービスを、名称や体制を分けて提供しています。

一つ目は飲食店やスーパーマーケットで出た余剰な調理品や食品とチャリティ組織をマッチングする「Food Cloud」で、アプリを活用し組織と組織を繋いでおり②の活動といえます。もう一つ「Food Cloud Hubs」と呼ばれる方は「食料ロス」をターゲットとしてサプライチェーンのより上流である生産者や加工業者とチャリティ組織をマッチングしています。こちらはアプリではなく、より大規模な食品を扱うため、倉庫管理のITシステムを導入し運営しています。非営利団体としてではなく、社会問題の解決を目的としながらも収益事業に取り組む「社会的企業(Social Enterprise)」として活動を続けています(注8)。

類似のサービスはインドでも発展しており、「No Food Waste」と呼ばれる非営利団体が提供するアプリ上でのプラットフォームにより、食の貧困地域の特定、余剰食糧の確保と分配を行っています。アイルランドおよびインド、双方の例は食料廃棄と食料ロスの両方をターゲットにしており、①や②の食料廃棄のみに対応したソリューションに比べると扱う食品量の規模が大きく、またロスを移動させる距離が長い傾向にあります。そのため、食品・食材と受け取り手のマッチングだけでなく、ロケーションのマッピングや移動人員と手段のマッチングなど①や②では重要視されていない項目もカバーされています。こういったサプライチェーンの上流で生まれる食料ロスについては、食料として扱う以外にも、再生可能エネルギーに転換するという取り組みもみられます(注9)。

図 : 図表4 主なマッチングサービス一覧(出所)各団体ホームページやデスクリサーチを基に富士通総研作成

図表4 主なマッチングサービス一覧
(出所)各団体ホームページやデスクリサーチを基に富士通総研作成

後編では、日本でのフードシェアリング普及の可能性について考えます。

(注1)正式名称「食品ロスの削減の推進に関する法律」
(注2)国連食糧農業機関(FAO)のウェブサイト参照
(注3)農水省の推計参照(2019年4月発表)
(注4)環境省(2017) 『環境白書
(注5)フードバンクとは「食品企業の製造工程で発生する規格外品などを引き取り、福祉施設等へ無料で提供する」活動や団体を指し、フードドライブとは「家庭で余っている食べ物を持ち寄り、それらを地域の福祉団体やフードバンクなどに寄贈する活動」をいう。農水省ウェブサイトおよび崎田裕子(2017)「もったいない!食品ロス:③広がるフードバンク活動や事業者の工夫」、『国民生活』(国民生活センター発行)より。
(注6)類型化については、Abrahamson(2002)が福祉国家の類型化に関する研究に対して、新たな類型を出すことが研究界での「流行り」になってしまったことを「The modelling business」と揶揄したように、類型化すること自体は目的とすべきでないが、フードシェアリングサービスのように比較的新しい動向についてその実態を整理・把握するためにパターンを提示することには一定の意義があると考える。Abrahamson, P (2002) The Welfare Modelling Business, Social Policy and Administration, Vol.33, Issue 4: 394-415.
(注7)詳しくは農水省のウェブサイト参照。
(注8)昨年時点では総売り上げ€2,141,917の30%は寄付やグラント等からの収入で構成されている。
(注9)スコットランドでは、技術を用いて廃棄される食品を再生可能エネルギーに転化させるビジネスが立ち上がった。より大規模な廃棄が出てしまうホテル業、イベント業などの業種もターゲットにしている。スコットランドで廃棄物処理やリサイクルの大手であるBinn GroupとEarnside Energyの2社が協業して立ち上げたFood Waste Scotlandというサービスである。
(注10)アプリ等を使用したシェアリングサービスの開始年であり、運営団体の設立年とは異なる。
(注11)ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、ノルウェー、ポーランド、スペイン、スイス、オランダ、イギリスの11か国。ウェブサイト参照。

執筆者プロフィール
森田 麻記子(もりた まきこ)

株式会社富士通総研
経済研究所 上級研究員

写真 : 森田 麻記子(もりた まきこ) 株式会社富士通総研 経済研究所 上級研究員

2012年~2015年 デンマーク、オールボー大学、比較福祉研究所(Centre for Comparative Welfare Studies)に4年間在籍し、2016年 富士通総研入社。 専門領域は社会政策学、高齢者福祉、ライフコース研究。

田中 秀樹(たなか ひでき)

株式会社富士通総研
経済研究所 担当部長

写真 : 田中 秀樹(たなか ひでき) 株式会社富士通総研 経済研究所 担当部長

消費者調査や市場調査を行った後、流通業向けコンサルティングやインターネットビジネスの新規事業化支援に従事。現在はICTが企業・社会に与えるインパクトのリサーチとビジョン策定を担当。
関連サイト サイバービジネスの法則集

※この記事は、富士通総研公式サイトの「オピニオン」に掲載された記事(掲載日:2019年7月11日)を一部修正の上、転載したものです。
※執筆者の部署・役職と記載内容は、「オピニオン」掲載当時のものです。