モビリティの進化が、これまでの小売のありかたを変える

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自家用車の急激な減少とライドシェアリングの普及

今、人との関わり方、地域における移動手段、ひいては社会においても広範囲にわたる影響を及ぼすであろう異例な現象が起こりつつあります。それにより、日常生活のあり方や収入をどこでどのように費やすかなどを含めたすべての側面が根本から変化するかもしれません。いいえ、「インターネット」ではありません。インターネットは20年前の話で、私が注目しているのは、これから起きようとしている現象です。

それは、自動車個人所有の急激な減少傾向です。都市部においてライドシェアリングが普及し始めている今日、それが自家用車の急激な減少という形で世界中の自動車産業に大きく影響し始めています。この記事には知っておくべき内容が述べられています。また、私の同僚で、富士通のHead of Automotive IndustryであるPaul Warburtonが興味深い記事を書いています。ぜひご一読ください。

筆者は記事中で、電気自動車市場とはすでに存在しており、それに続く形でコネクテッド自動運転車(Connected Autonomous Vehicle: CAV)の市場が誕生しつつある。そして、専門家の多くは、5年以内に完全型自動運転車が急激に普及し始めると予測している、と述べています。

MaaSが自動車業界のバリューチェーンに与える影響

例えば月500ドルをモビリティプロバイダーに支払うことにより、消費者はいつでもプロバイダーの自動運転車フリートの空車にアクセスできる、というコネクテッド自動運転車による「サービスとしての移動」、つまりMaaS(Mobility as a Service)という新しいサービス事業の出現が予想されています。Uberのようにユーザーはスマートフォンで配車を依頼しますが、従来のライドシェアリングと大きく異なるのは、自動運転車がプロバイダーから配車される点です。ライドシェアサービスにおける利用者の安全が近日ニュースにとりあげられていますが、自動運転車の利用はまさに、その問題に対する格好なソリューションにもなりえます。また、自動車保険、中古パーツ、燃料供給、メンテナンスなど、MaaSが自動車業界のバリューチェーンと自動車の保有形態そのものに与える影響もさらに興味深いものです。

富士通のHead of Retail Industryとして、私はこのトレンドが小売業界にはどのような影響を与えるかを考察しています。もし、MaaSプロバイダーが販売からフルフィルメント業務まで、様々なサービス業務を処理する消費者商取引機能にコネクトすることができれば、小売業界においては可能性が大きく広がります。次のようなシーンを想像してみてください。

午後3時、2児の母であるペギーがオフィスで仕事をしています。今日はペギーも夫も仕事で忙しく、息子のサッカー試合の前に夕食を作る時間がありません。さらに、ペギーはコーヒーやパン、シリアルなど、明日の朝食に必要なものを切らしていることに気づきます。そこで、MaaSアプリを開き、オフィスの会議終了後、5:30に迎えに来るよう自動運転車を呼びます。さらに、近所のカフェからヘルシーな夕食を4人分、そしてコーヒー、パン、シリアルもピックアップするよう指示します。

5:30に自動運転車が到着すると、予定通り夕食と注文商品がトランクに入っています。ところが、車が到着する15分前に、夫が買い物リストに牛乳を追加していたことにペギーは気づきます。そこでボタンを一押しして、途中でコンビニに寄るよう車に指示します。渋滞を待つ間、ペギーのために精選されたショッピング画面が表示され、ペギーは新しいNikeの靴を買いたかったことを思い出します。彼女は靴を買い物かごに追加し、次回自動運転車を呼んだとき(おそらく翌日の夕方)に配達してもらうよう指定します。6:15には帰宅でき、夕食も朝食も解決済み。さらにはNikeシューズの購入も手配できたため、ペギーは大切な時間をスーパーやモールでの買い物に費やすことなく、自宅でいつものように過ごせたのです。

このようなシーンでは、従来型小売店舗のさらなる退散や、買い物客の「信頼」や「愛着」の薄れに対する懸念が浮上してきます。ペギーにおいては価格、バリュー、顧客体験、商品・サービスの質などにもとづいて特定の業者を選ぶことはありません。MaaSプロバイダーが該当商品や顧客体験を提供するサプライヤーを選定してくれると信頼しているからです。買い物におけるやり取りの簡素化と、購買体験における感情的摩擦が少なくてすむことがその根底にあります。

MaaSの進化の中で、小売業に求められるものとは

このようなトレンドに対し、小売業界の経営者たちはどのような準備を整えているのでしょうか。それは、分野によって異なるでしょう。「アマゾン現象」を経験し、それを生き抜いた企業は能力が実証されたとし、今後の競争において有利な地位を確立するでしょう。逆に、コンビニ業界、食品業界はたいへん遅れをとっていると私は考えます。これらの業界の人たちと話をすると、「売上の大部分はタバコや飲料、燃料や食品などが占めている」と言います。いずれもこれまでは、アマゾンよりも有利な立場を確保することができた商品分野です。しかし、アマゾンによる当日配達、さらにはレジ無しスーパーを実現したAmazon Goが登場した現在、これからも同じことが言えるでしょうか?

この問題の解決策は自社版Amazon Goの開発に投資すること、と考える人も少なくありません。私はそうは思いません。Amazon Goは店舗からフルフィルメントまでの処理自動化というビジネス課題を解決したかもしれません。そして、それは解決しがいのある問題には違いありません。しかし、それだけでMaaSに対する準備が整った訳ではありません。小売業、特にコンビニエンス・リテールが解決すべき課題は、新しい経路を通って展開される販売及びフルフィルメント業務を、常に進化していく物流メソッドやエンドポイントにいつでも対応できる適応性と柔軟性のある「販売と物流のプラットフォーム」を採用することです。

富士通ではこれを「販売改革(セリング・リフォーム)」と称しています。これが、コンビニ商売においてMaaSを効果的に位置づけるために不可欠な次段階の転換と考えます。その理由は消費者の「時間」に対する需要が高まっているからです。人々は時間の節約を念頭に置いてしっかり設計された機能やサービスを提供してくれるMaaSプロバイダーを選ぶでしょう。さらに、消費者の多くは日々の生活の中で最も時間のかかる活動の1つが買い物だ、と述べています。一方、コンビニエンスストアは、消費者の生活や職場に最も近い場所に存在します。この近接性、利便性こそがコンビニエンスストアの強みなのです。以上の要素を連結してみると、1つの結論がはっきりと見えてきます。MaaSプロバイダーとコンビニ店舗は最高のコンビネーションなのです。MaaSプロバイダーは他社との差別化の強化と向上を図るために、次においてコンビニエンスストアとのパートナーシップを求めるでしょう。

  • コンビニエンスストアながらの商品分野を対象としたロバストな販売及びフルフィルメント業務機能
  • エンドポイントでの第三者商品の回収及びフルフィルメント業務対応(先程の例だとNikeシューズ)
  • 迎えに行く乗客の注文を処理するための車両の移動時間やエネルギー消費最適化のための店舗位置情報

もちろん、MaaSプロバイダーが将来自らコンビニエンスストアを経営することも可能です。これは後日また別途ブログで取り上げることにします。

今日、コンビニ店舗は大部分が燃料販売所として機能しており、燃料や出来合い食品の域を超えた販売及びフルフィルメント業務機能を備えた店舗はまれです。今、私たちの社会で起こっているトレンドに対応する上で、最もカギとなる分野はコンビニエンス・リテール業ではないでしょうか。あと5年で、個人が車を所有しなくなり、MaaSプロバイダーが自動運転車のフリートを操業する時代が始まります。その環境で小売業界においての地位を確保できるのは、その市場に積極的に入っていく準備と心構えのあるコンビニエンス業者でしょう。

この記事はFujitsu Blogに掲載された「As Automotive Tech Evolves, the Rules of the Road Are Changing for Retailers」の抄訳です。

※本記事の文中のリンクは英語ページに推移します