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在宅医療での活用に期待!歩行特徴をデジタル化する新技術とは?

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医療現場で注目されている、歩き方の特徴観察

人間の基本的な動作である「歩行」。「きちんと歩けるかどうか」は、その人が日常生活を送る上でとても大切なことです。

一般的に、様々な疾病が歩行に影響を及ぼすとされ、特に筋骨格系や脳神経系、循環器系などの疾病によって歩行異常が現れると言われています。例えば、脳梗塞やパーキンソン病などの脳・血管の疾病、骨や筋肉の障害などによって、特徴的な歩き方になることが広く知られています。また、転倒経験による恐怖心が歩行に影響する場合、両脚で立つ時間を長くするなど、バランスを保つことを心掛けた歩き方になることがあります。

医療現場では、疾病の予兆検知や投薬効果の把握、リハビリの回復具合などを把握することを目的に、患者の歩き方の特徴を観察することが重要だと言われています。また、最近では、歩き方の変化から認知症を早期発見しようという研究も進められています。

未だ大半を占める「目視」観察、比較・分析が難しく活用が困難

一方で、患者の歩き方の観察は理学療法士の「目視」によることが大半で、患者の歩行の特徴を定量的なデータとして記録・蓄積し、比較・分析することで治療に活用するには、まだ技術的に困難なところがありました。

例えば、歩行観察の定量データ化技術としては、これまでにも機械学習やルールベースアルゴリズムによる方式が多数提案されてきました。しかし、実際には歩行が早い人、遅い人、また疾病の状態や組み合わせによって多様な歩行特徴が存在します。また、理学療法士が接する患者の疾病は多岐に渡り、歩行への影響の出方も疾病や重篤度合い、障害部位などによって大きく異なります。

そのため、従来の定量データ化技術では、対象とする歩き方が限られていたり、学習のための歩行データを十分に準備したりすることができず、高精度に定量化することが困難だったのです。

そうした中、富士通と富士通研究所は、疾病の影響によって多様に発生する患者の歩き方の特徴を定量化する技術「FUJITSU KIDUKU Walking Engine(キヅク ウォーキングエンジン)」を開発しました。

歩行の特徴を高精度にデジタル化する新たな技術を開発

今回、開発した歩行特徴デジタル化技術は、患者の両足首に装着したジャイロセンサーの信号から発せられる信号波形に対して、特徴点をつけて意味づけします。それにより、歩行動作のみの信号を判別した上で歩行特徴の定量化を可能にしています。

具体的には、歩行データを取得して特徴点を判定し、特徴量を抽出することで歩行区間を認識していきます。この特徴点には多数候補があり、ノイズが含まれることもあるため、従来技術ではその判定が困難でした。

そこで、「FUJITSU KIDUKU Walking Engine」では、歩行時の左右の足の動作の関係性や一歩ごとの動作の遷移の仕方などの動作法則に基づくモデルを採用しました。

これにより、歩行時の動作の特徴点を歩き方の違いによらず、踵が着地する時や爪先が地面から離れる時といった歩行時の動作の特徴点を認識できます。歩幅や歩行速度、スイング時間、左右の動きの差などの歩行特徴を高精度に定量化することが可能になったのです。

図 : 動作法則に基づき歩行特徴を定量化するイメージ

動作法則に基づき歩行特徴を定量化するイメージ

自動認識精度96.5%!脳卒中後、転倒後の歩行把握も可能に

今回新たに開発した技術は市販のジャイロセンサーを用いて、小刻み歩行、すり足歩行など9種類の歩行異常を含む様々な歩き方を評価しました。その結果、96.5%という高い精度で歩行の区間を自動認識できました。

さらに歩行区間から得られる特徴点から、スイング時間やスタンス時間、歩幅、歩行速度、歩数などの様々な歩行特徴の把握を可能にしました。

例えば、脳卒中後の歩行データでは両脚の振幅が異なり、スイング時間のバラつきが大きくなる特徴がみられます。比較的歩くスピードは速くても、足の運びに左右差があり一歩一歩のばらつきが現れている傾向を示しています。

また、転倒後の歩行データからは、歩行区間の中で、ストライド時間が長く、足をスイングする時間が比較的短い特徴がみられます。つまり、一歩ずつ、ゆっくり歩く中でも両足で立っている時間が長い傾向が見られます。

図 : 歩き方の波形と歩行特徴量の例(研究結果より)

歩き方の波形と歩行特徴量の例(研究結果より)

自宅療養における状態把握への活用にも期待

現在、日本では少子高齢化による医療費の増加が問題となっています。そのため、医療費削減を目的とする早期退院や病院外ケアが推奨されています。また、「住み慣れた環境で安心して自分らしい生活を送れる社会を目指す」という取り組みが進められており、その一環として在宅医療が推進されています。

今回開発した技術によって、日々目視した動作が数値化されることで、患者の歩行観察の定量化と記録などの支援が可能になり、日々目視で確認していた理学療法士の業務効率化が期待されます。また、自宅療養における歩行状態の遠隔把握や支援、個人ごとの回復過程に応じたケアの個別化にも活用できると考えられます。

今後も富士通グループでは、人々が健康で暮らしやすい社会の実現に向けて、「FUJITSU KIDUKU Walking Engine」を医療従事者向けの歩行観察データの活用や、今後増加する在宅患者の遠隔把握に向けてさらに技術開発を進めていきます。