卓球観戦や能楽イベントも!ろう者と共に、可能性が広がる「Ontenna」の未来

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グッドデザイン金賞を受賞した、音をからだで感じるユーザインタフェース

世界でも有数の規模と実績を誇るデザイン賞として毎年注目を集めている「グッドデザイン賞」(日本デザイン振興会主催)。2019年度は4,772件の中から、特に優れたデザインと認められたものに贈られる「グッドデザイン金賞(経済産業大臣賞)」を「Ontenna(オンテナ)」が受賞しました。

Ontennaは、髪の毛や襟元など身に付けて、振動と光によって音の特徴を身体で感じることができるユーザインタフェースです。富士通グループでは、すべての人にとって使いやすい「ユニバーサルデザイン」に基づいた製品・サービスの提供に取り組んでいます。

「ろう者に音を届けたい」という開発者の思いから研究開発に着手。新たなユーザインタフェースとして、聴覚障がい者、ろう者との協働開発を進め、約60~90dB(デシベル)の音を256段階の振動と光の強さに変換し、音源の鳴動パターンをリアルタイムに伝達します。音のリズムやパターン、大きさなどを感じることが可能です。

全国30校以上のろう学校にOntenna体験版を無償提供

Ontenna「ろう学校編」

ろう学校の生徒は、耳が聞こえないために音の特徴を知覚すること、自身でリズムを感じることなどが困難な場面が数多くあります。例えば発話練習では、声の強弱を練習する自身の声の大きさが分からなかったり、音楽の授業でリズム通りに太鼓を叩く練習でも難しさは増しています。そんなとき、教員が生徒の背中をタッチするなどして触覚のサポートをしていますが、フォローしきれないこともあります。

そこで、Ontennaを活用すると、Ontennaを身に着けたろう者は、自身の声や周囲の音の大きさを感じることができるため、発話・発音や太鼓、リコーダーなどの音の強弱をつけるための練習もしやすくなります。さらに、生徒の音に対する興味の幅を広げ、教員の授業の負担も減らせることなども期待できます。

こうしたOntennaの利活用を実際の教育現場で広げようと、全国のろう学校を対象にOntennaの体験版を無償で提供しています。

ろう学校の生徒が卓球Tリーグを観戦

Ontenna「スポーツ編」

2019年8月、卓球・Tリーグの協力のもと、Tリーグ2019-2020シーズン「岡山リベッツ 対 T.T彩たま」戦に東京都立立川ろう学校の生徒を招待しました。生徒たちは、Ontennaを装着してTリーグを観戦しました。

Ontennaは複数のOntennaを同時に制御できるコントローラーを活用することで、コントローラーが感知した音のリズムやパターンをリアルタイムにOntennaに伝達させたり、コントローラーのボタンを押すことでOntennaを振動させたりすることもできます。卓球台に設置したマイクの音声を元に、卓球台で弾む球の音の大きさやリズムをリアルタイムに伝達してOntennaを振動させました。

図 : Tリーグでの体験全体図

Tリーグでの体験全体図

試合中のボールを強く打つ音やタイミングを感じることができた。ボールの強弱も含め、ボールの跳ね返りが振動を通して伝わり、躍動感があった。などの感想が生徒たちからは聞くことができました。

Ontennaから伝わる振動に合わせて、会場の臨場感や一体感を楽しむことができるのです。

Tリーグでは「卓球を通じて人生を豊かにする、卓球を身近なスポーツにする」ことを理念とし、より多くの人々に卓球を届けることを目指しています。今後も富士通はOntennaを活用し、聴覚障がい者と健聴者が共にスポーツ観戦を楽しむことができる共生社会の実現に向けた取り組みを、Tリーグと進める予定です。

Ontennaで能楽の体験を高度化
スポーツ・文化などイベント支援サービスも開始

富士通は2019年7月、スポーツ・文化団体などに向けて、Ontennaを活用するイベント支援サービスの提供を開始しています。これにより、スポーツの競技音やイベントの効果音など特定の音を、よりダイナミックな振動や光で演出できます。

例えば、能楽協会と日本能楽会は、「ESSENCE能 見どころ!ぎゅっと凝縮・能楽アンソロジー(以下、ESSENCE能)」のバリアフリー対応公演を国立能楽堂で開催しました。バリアフリー対応公演では、ろう学校の子供たちを含む希望者にOntennaが貸し出されました。

写真 : ESSENCE能におけるOntennaの活用

ESSENCE能におけるOntennaの活用

Ontennaを装着した観劇者からは、「音の重なりが振動でよく伝わってきて、より臨場感が味わえて楽しく鑑賞できた」「振動の強弱で音の変化があることを子供が感じていたことに感動した」「振動が舞台の動きとリンクしていて楽しめた」という声が上がっています。

能楽協会と富士通は2019年7月、ICT分野でのパートナーシップ契約を締結しました。OntennaなどのICTを活用して能楽の魅力を国内外へ発信し、新たなファンを獲得することで能楽界のさらなる発展に貢献し、観客の新しい鑑賞体験などを実現するICTの活用を推進する予定です。

障がいや国籍を問わず、より多くの人が使えるツールを目指して

日本では、2016年4月1日に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が施行されました。障がいのある人もない人も互いに、その人らしさを認め合いながら共に生きる(共生)社会の実現に向け、障がいを理由とする差別の解消を推進することが目的です。

現在、教育分野をはじめとして、障がいのある人の社会参加や自立を可能にする取り組みが積極的に進められています。富士通グループではOntennaを通して、聴覚障がい者と健聴者が共に楽しむ未来の実現を目指しています。

また、国籍や言語を問わず、より多くの人が使えるツールとしての展開も視野に入れています。言語に依存しないため、障がいや国籍を問わず新しい観戦スタイルを提供することもでき、富士通では、共生社会の実現に向けた啓発モデルにもなると考えています。スポーツから伝統芸能などとのコラボレーションを進めて、新たなICT融合の可能性を見出していきます。