DXを支える7つのテクノロジーとR&D戦略

メインビジュアル : DXを支える7つのテクノロジーとR&D戦略

企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)への注目が高まる中、具体的にDXを実現するためにはテクノロジーの活用が必要不可欠です。

お客様のDXビジネスを推進するため、富士通はDXを支えるテクノロジーの開発を強化しています。中でも「コンピューティング」「AI」「5G」「IoT」「サイバーセキュリティ」「クラウド」「データ」の7つは、最も力を入れる重点領域です。これらの技術開発を通して、デジタル空間とリアル空間の双方に高い信頼性を保証しながら、世界トップのデジタルテクノロジーを生み出し、お客様のDXビジネスを実現していきます。

ここでは7つの重点技術領域のそれぞれの研究課題と方向性を解説します。

図 : DXを支える富士通の7つのテクノロジー

DXを支える富士通の7つのテクノロジー

Computing
未だに解けていない複雑な課題への挑戦

DXを実現するためには、さらなるコンピューティング能力の向上や低消費電力化が必須です。富士通と理化学研究所は共同で、「京」の後継として最大で「京」の100倍のアプリケーション実効性能の実現を目指し、スーパーコンピュータ「富岳」を開発しています。さらに富士通は、組合せ最適化問題を解く「デジタルアニーラ」も開発しています。

デジタルアニーラを使った最近の企業との共同研究では、ペプチドリーム社の例があります。同社は創薬に役立つ膨大なペプチド(中分子)のデータベースを保有していますが、医薬品の候補化合物を探索するにあたってはこれまでのコンピュータでは数カ月かかるのが普通でした。しかしデジタルアニーラで組合せ最適化問題の計算を行うことで、探索スピードを一挙に10倍も高速化し、10日前後にまで短縮できることが期待されています。

また、AI技術の進化と普及に伴って、画像認識や音声翻訳などへと活用が広がっています。それに伴ってAI処理の計算量は爆発的に増大しており、その計算量は、3.5カ月で倍増していると試算されています。こうした増大する計算需要に対応するため、富士通は演算精度を自動的に制御し高速化する技術「Content-Aware Computing(コンテンツ・アウェア・コンピューティング)」という新技術を開発しました。

>>「Content-Aware Computing」の詳細はこちら

AI
説明可能・透明性・精度・品質を備えた、社会から信頼され成長するAI

ディープラーニングの実用化によって、AIの可能性は飛躍的に高まっています。スポーツの審判、医療現場での臨床診断、裁判での司法判断などにも、今後はAIが活用されるようになるでしょう。しかし現状では、AIによる判断プロセスがブラックボックスのため、専門家でもAIが出した回答の理由や根拠を説明できず、「結果を本当に信頼してもよいのか」という疑念を払拭できずにいます。そこで求められるのがAIの説明責任、言い換えれば「説明可能なAI」です。

それを実現するためのアプローチの1つが「Deep Tensor(ディープテンソル)」と「ナレッジグラフ」という2つの技術の組み合わせです。富士通はこれを世界で初めて開発することに成功しました。また、学習するデータの中から項目の組み合わせをもれなく抽出し、人間にも分かりやすい「判断の根拠となる有用な仮説」を提示する機械学習技術「Wide Learning」にも取り組んでいます。これらは、AIにおける説明可能性に着目した世界初の技術群といえるものです。

一方、AIを業務で使い続けると、社会情勢や市場動向、環境変化などにより、入力データの傾向が当初の学習データと比べて変わってしまうことも、近年よく指摘されるようになりました。そこでAIを使い続けることで、その推定精度すなわちAIの品質が低下してしまうのです。
この問題へ対応するため、富士通はAI運用時の入力データの正解付けを自動化し、AIの精度の推定と、AIモデルの自動修復を可能にする技術「High Durability Learning(ハイ・デュラビリティ・ラーニング)」の研究に着手しています。

>>「High Durability Learning」の詳細はこちら

AIの説明責任や倫理規範は今や世界的に議論されるようになりました。富士通グループは2019年に、欧州委員会のAI倫理ガイドラインをベースにしたAIコミットメントを制定し、さらにAI倫理外部委員会を設立。説明可能であり、かつ高い透明性・精度・品質を備えた、社会から信頼され成長するAIの実現に取り組んでいきます。

5G
多様化するデータやアプリを意識せずにつなぎ、1人ひとりに価値を提供

移動通信の分野では、第5世代移動通信システム「5G」の商用サービス提供が2020年からいよいよ始まります。5Gの特徴は単にモバイル通信のスピードが速くなるということだけではありません。その真価は、身の回りのあらゆる機械や設備をモバイル通信でつなぐことで、生活の質の向上や社会課題の解決を目指すことにあります。同時に5Gネットワークは業種・業態を超えた、新しいサービスモデルが登場する基盤にもなり得るものです。

5Gではスマートデバイスだけでなく、自動車、工作機械や製造装置、医療機器、交通インフラ、監視カメラなど、様々な機器・設備・システムを端末として想定できます。この端末の多様さと、そこから膨大なデータを収集しリアルタイムで利活用できることが5Gの最大の特徴です。
この膨大なデータを処理するためには、クラウド・エッジ間のコンピュータリソースやネットワークを最適に制御するためのICT環境が必須になります。富士通はモビリティ対応、大量データ送受信、分散データ統合管理、最適リソース配備といった機能を備える分散ICT環境を提供し、5G社会の実現を加速します。

富士通は、5Gの時代にあってもこれまでと同様に、通信キャリア向けの基地局構築を担います。スウェーデンの通信機器大手であるエリクソン社との協業で5G対応基地局、無線装置・制御装置をいち早く商用化し、すでにNTTドコモ様に納入を開始しています。

こうしたネットワーク技術は、通信事業者以外の企業や自治体が提供する自営の5G(ローカル5G)の構築にも活用できます。例えば、ものづくりの製造現場では、監視カメラの高精細映像をローカル5G網で監視者に送ることで、遠隔での確認が容易になります。同様に医療現場でも、医師が医務室に居ながら遠隔で診察ができるように取り組んでいます。ローカル5Gはこのように多くのビジネスチャンスと社会的価値を生み出すものです。

もちろん、5Gがもたらす未来社会のイメージはまだ漠然としています。そこで富士通では、5G社会をいち早く実感・体験できるショーケースや5Gパートナーとのコラボレーションラボを全国に展開していきます。誰もが参加できる「5G価値体験の場」を通して、5G社会の未来をたぐり寄せていきます。

データ、IoT、サイバーセキュリティ、クラウド

データが様々な領域で活用されるに伴い、データの安全な流通や個人情報などプライバシーへの危惧が高まっています。「データが途中で改ざんされているのではないか」「個人データが知らないところで許可なく使用されているのではないか」といった不安を完全に払拭しなければ、ビッグデータの有効活用は進みません。富士通は、データ駆動型社会におけるデジタルネイティブな高信頼データマネジメントの確立を、最重要な研究課題に設定しています。

IoT領域に関しては、2020年度にはネットワークに接続されるデバイスは世界で800億個に達すると推測されています。これらを最大限に利活用するためには、リアルタイムでのデータ処理、さらにはデータの持つコンテキストや社会性を意識したエクスペリエンスの提供が重要になります。大規模データ・アプリを処理し、UX/CXを向上する「リアルタイムデジタルツイン」の研究開発は、IoTが真価を発揮するためには不可欠なものです。とりわけ、1000万台超の車両情報を処理するテレマティクス技術「Dracena(ドラセナ)」、歩行の特徴を観察する「KIDUKU(キヅク)」、3D位置測位自律走行の「Visual-SLAM」を活用したサービスなどは、富士通研究所が進める最先端技術です。

サイバーセキュリティ領域では、クラウドのCSIRT(注1)活動での実践知に基づくソリューションの提供、生体認証暗号化技術を活用した、安心・安全な手ぶらキャッシュレス決済の実現を目指します。

これらのDXテクノロジーを加速する基盤技術としてのクラウドは、市場規模、技術革新ともに今後ますます拡大することが予測されます。富士通はこれを見越して、マネージドサービス自動化とクラウドネイティブ開発に注力します。クラウド領域では、すべてを自社開発するのではなく、クラウドベンダーとの連携など、パートナーとのオープンイノベーションを重視していきます。

富士通はこれまで、革新的なテクノロジーを次々と生み出し、人、社会、ビジネスに新たな価値を提供することで世界をリードしてきました。テクノロジーの使命は、これまでにない新たな体験価値を提供することで、人をエンパワーメントし、人々の暮らしを豊かにすることを目指します。
今後も富士通は、テクノロジーにより世界中の人々の幸せと社会の発展をもたらしていきます。

(注1)Computer Security Incident Response Team/シーサート。コンピュータセキュリティに関わるインシデントに対処するための組織の総称