AIが普及した世界で変わるもの、変わらないもの

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ここでは、ベンチャーキャピタルであるネオコーテックス・ベンチャーズ社のマネージング・ディレクター、アレックス・ベイツ氏をお迎えして、AIに関する経歴と、AI分野での現在の活動、そしてAI普及後の世界についての見解を伺いました。

AIに関するあなたの経歴を教えてください。

ベイツ氏2006年、私はエムテルという会社を起業し、製造分野にマシンラーニングの考え方を採り入れました。産業市場の最前線にAIテクノロジーを応用することで、影響力を発揮したいと考えたのです。

エムテルのテクノロジーは、各種マシンから収集したセンサーデータを利用することによって大惨事の発生を予測・防止する機能を備えており、マシンが故障して人にけがを負わせる可能性のある時期を正確に割り出すことが可能でした。こうしてマシンラーニングシステム開発の最前線に10年間従事した後はAIを導入する側に移り、人間のユーザーと緊密に連携させる業務に就きました。

こうした経験が、最終的に書籍『拡張された心』の執筆につながり、同書では、この分野の複雑な概念を多数紹介し、わかりやすい言葉で説明しています。

生活の中でAIの影響をほとんど受けない領域は、どの部分だと思われますか

ベイツ氏:この質問には答えようがありません。なぜなら、将来の成熟したAIシステムはあらゆる物事に影響を及ぼすためです。AIによって私たちは解放され、労働よりも精神生活に重きを置けるようになるでしょう。しかし、精神の姿そのものが変わるとまではいえません。臨床心理学者のラム・ダス氏による「より高いレベルの意識へとチャンネルを切り替える」という喩えを頭に浮かべてみてください。AIによって私たちの精神は解き放たれ、より人間らしくなれるはずです。とはいえ、人間性の定義そのものが変わるわけではないので、精神面での変化もないといえます。

では、人間の生活全般において、最も変化するのは何でしょうか?

ベイツ氏:AIによって私たちの自己認識が高まり、自分自身のことをよく分かるようになるでしょう。外国語の構文や文法を学ぶのと同様に、人間として生きるとはどういうことなのかをAIから教わることができるはずです。これにより、私たちの仕事と私生活で大規模な変化が起こり、これまでのような週40時間の労働は消滅すると確信しています。そして、私たちは好奇心の向くままに、よりクリエイティブで充実した活動を自由に追い求められるようになるのです。

私たちにとっての新たな「普通の光景」とは、どのようなものになると予想されますか

ベイツ氏:自分たちの代わりに、さまざまなAIエージェントに調査や実験を行わせたり、データや過去の情報を集めさせたり、自身のクリエイティブな側面を探究させたりすることが、ごく普通になると思います。こうしたテクノロジーは、人間の前に立ちはだかるあらゆる知的作業において人間の能力を増幅し、くぎを打つときの金づちのように、私たちの定番ツールとなるでしょう。

そうしたバーチャルなアシスタントは、私たちの生活でどのような役割を果たすようになるでしょうか

ベイツ氏:たとえば、現在のアップルのAIアシスタントのSiriは、実体のない声だけの存在で、記憶を保持することもありません。リマインダーを設定したり、質問に対して事実に基づく答えを的確に返したりといった、いくつかの領域で便利に使える目新しいツールではありますが、今後登場するテクノロジーの代表的先駆者とまではいえないのです。

これからのバーチャルアシスタントについて想定すべきは、Siriに似てはいても、チームメンバーや共同創業者、協力者、取締役会のメンバーに、より近い存在となるようなテクノロジーです。これからはこうしたテクノロジーを戦略的に活用し、私たちが携わるあらゆる活動の効率を向上させていくことになるでしょう。

私たちの能力が増幅されるとすれば、どのような形で行われるのでしょうか?

ベイツ氏:AIによって、認知に基づく単純な作業が完全に自動化されれば、私たちは、心から興味の持てる問題を解決することに、もっと時間を割けるようになるでしょう。人間の知的能力や創造力のいろいろな面が拡張され、魅力的な問題をより深く探究できるようになるはずです。また、私たちの記憶や知覚も増強されるでしょう。たとえば、さまざまな物事にインデックスが付けられるようになり、私たちは今のように自分の記憶に頼る必要がなくなるかもしれません。特定のトピックに関する専門家の脳は、限られた領域内に3億のパターン検出器と10万の情報分岐回路が詰め込まれているといいますが、AIはそれをしのぎ、私たちにとって理想的で優秀な知的パートナーとなるはずです。

AIのメリットに関して懐疑的な人々に対し、何か伝えておくべきことはありますか

ベイツ氏:コンピューター内で人間の知能を合成的に再現するという話題については、私もそのような懐疑論に賛成です。しかし、人間の知能をテクノロジーによって拡張するという話であれば、それが「人間らしさ」の未来に良い影響を及ぼす最善の道だという考えに、一点の疑いも抱いてはいません。私はそれが、考えられる唯一の道であるとさえ思っているほどです。

現在、あなたはAI分野でどのような活動を行っていますか

ベイツ氏:さまざまな関係者や組織とつながりを持ちながら、拡張知能とでもいうべきオーグメンテッド・インテリジェンスの研究に興味を持ち、この分野において投資を行いつつ、必要とされるテクノロジーを構築しています。私たちの投資ファンド、ネオコーテックス・ベンチャーズ社が特にターゲットとしているのは、狭い領域に特化したAIアプリケーションであり、現時点では、専門性が高いそうしたアプリケーション分野に投資利益の最大化のチャンスが眠っている、というのが私の主張です。

 

この記事はTechbullion向けにアンジェラ・スコット=ブリッグスが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。

 

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