AI精度が運用時に低下?人手をかけず自動修復する世界初の技術とは

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AIで業務を効率化したはずなのに、実運用で見えてきた課題

近年、AIの普及がますます進み、AI活用による業務効率化や生産性向上などに期待が集まっています。しかし、学習データから構築したAIモデルは、業務で運用する中で、社会情勢や市場・環境の変化などにより入力データの傾向が変化すると陳腐化し、その影響で「AIの精度が低下する」という課題が浮き彫りとなってきました。

例えば、金融分野において、AIで企業の信用リスクを評価する場合、経済構造の変化などで入力データの傾向が学習時と比べて変化すると、そのままでは信用リスク評価の推定精度が低下するといった事態も起こり得ます。その状態で放置すると、大きな損害を招く可能性が高まってしまいます。

業務効率化を目的にAIを運用に組み込み活用する際、AIの推定精度を高く維持するには、定期的な精度の確認と、低下していればAIモデルを再学習する必要があります。AIの精度確認には、最新の入力データとセットとなる正解データが必要であり、その正解データを準備するには、大量のデータに対して専門家が正解付けを行うなど、膨大なコストと手間がかかります。また、人手で再学習が必要となるタイミングの見極めが難しく、精度が大幅に低下しても気づかないというケースも起こり得ます。(図1)

図 : 図1: AI運用の流れの違い。自動正解付けと自動修復でコスト削減

図1: AI運用の流れの違い。自動正解付けと自動修復でコスト削減

AIモデルの精度推定と修復を自動化する世界初の技術

AIを実運用に活用することで明らかになってきた課題に対し、富士通研究所は、AIの精度を維持し、安定運用を実現できる世界初の技術「High Durability Learning(高耐性学習)」を開発しました。

「High Durability Learning」は、AIの精度を随時推定でき、精度低下時にはAIモデルの修復を自動化する技術です。「Durability」とは「丈夫、耐久性」を意味し、様々な環境・状況に対して高い耐久性を示し、良い結果を出し続けることができるAIの実現を目指しています。

この技術には「運用時におけるAIモデルの精度低下を自動推定」「再学習なしでAIの精度低下を自動修復」という2つの大きな特長があります。

運用時におけるAIモデルの精度低下を自動推定

AIモデルを学習する際に用いる学習データの分布と、運用時の入力データの分布を形状として捉えます。そして、学習時から運用時へのデータの変化の傾向を把握し、元のAIモデルの推定結果と比較することで、AIモデルの精度推定の計測を可能にしました。

再学習なしでAIの精度低下を自動修復

AIモデルを、推定した結果に基づき入力データの傾向に応じて調整することで、AIモデルを新たな入力データに順応させることができます。これにより、膨大なコストをかけて再学習することなく、AIの精度低下を改善することが可能になります。

金融、小売、運送でもAI運用の精度向上を実証済み

この技術は、入力データやAIモデルの種類に依存せずに適用できる汎用性を備えています。新規導入のAIだけでなく、すでに導入済みのAIとも組み合わせることが可能で、様々な分野での活用が期待できます。

例えば、金融分野における信用リスクの評価を3,800社の財務データを用いて検証したところ、AIの精度を誤差3%に抑えて推定。従来のAI運用では精度が69%まで低下する場合でも、89%という高精度を維持できました。

また、小売業では商品画像の分類、運送業では伝票文字の認識などの検証事例により、精度予測誤差と自動修復による精度維持で高い検証結果が確認できました。(図2)

図 : 図2: 各業界のAI運用での検証事例図2: 各業界のAI運用での検証事例

今後も富士通研究所は、「High Durability Learning」の検証を様々な現場での業務で進めます。2020年度中には、富士通の目的志向型プロセス&フレームワーク「Design the Trusted Future by Data×AI」に組み込む予定です。さらに富士通独自のAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」を支える新たな機械学習技術としての実用化を目指します。