多発する大雨・集中豪雨から住民を守る! 河川の水位をAIで予測する技術

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大雨や集中豪雨による被害が増加、対策が急務に

近年、大雨やゲリラ豪雨の話題をよく耳にするようになりました。気象庁の統計によると、1時間降水量50mm以上の年間発生回数はここ10年で27.5回増加しており、豪雨の頻度は増えていると見られます。

気象の変化は地球温暖化の影響も指摘されています。気温上昇で大気中に含まれる水蒸気が増加するなどの変化により、短期間で大量の雨をもたらす台風や集中豪雨、異常気象が起こりやすくなると考えられているのです。

大雨や集中豪雨が発生すると、その一帯は多大な影響を被ります。大量の雨が河川に流れ込み、氾濫して洪水が起こり、建物や道路が浸水、時には生命にも危険が及びます。2017年には九州北部豪雨、2018年には西日本豪雨、2019年にも台風15号など、大きな被害をもたらした異常気象が続いています。

台風や集中豪雨の被害を軽減するための対策は急務と言えます。その1つが河川の洪水対策です。これまでも、流域面積の広い指定河川においては水位を監視し、必要に応じて洪水注意報や洪水警報などが発せられてきました。そこでは主に河川工学を用いた手法が用いられています。

この手法は、実際の河川の流量観測データ(測量データ)に基づいて水位の変化を予測する「タンクモデル」という水理学の考え方を利用したものです。しかしこの手法では、測量データが無かったり最新化されていない場合は、予測が不可能または不正確になるという課題がありました。

また、以前からAIによって水位を予測する技術はありましたが、過去数年あるいは数十年にわたる膨大な過去の雨量・水位データが蓄積されていないため、AIによる予測技術が適用できないといった課題もありました。

こうした中、富士通と富士通研究所は、AI(人工知能)を活用して、過去の少ない雨量データから河川の水位の変化を予測できる技術を開発しました。

過去の少ない雨量データから河川の水位を予測

今回の技術では、河川や海岸の土木測量、工事などに利用されている「水理学」の考え方を応用しています。先述のタンクモデルをベースに関数を作り、過去の雨量や水位データをAIに機械学習させ、最適なパラメータを導き出す数理モデルを構築します。そして最短で3日前からの雨量や水位データ、気象データ(気象関連機関から各自治体へ配信される数時間先の降雨予測)をもとに、将来の水位を予測します。これにより、測量データを用いずに水位の予測が可能となります。

写真 : 技術の概要

技術の概要

写真 : 平常時の1降雨のデータから、AIが増水時の水位上昇を予測した例

平常時の1降雨のデータから、AIが増水時の水位上昇を予測した例

少ない雨量・水位データで、高精度な水位予測が可能に

今回の新技術では、わずか1回の降雨データから増水時の水位の予測も可能です。また従来のAIを活用した手法と比べても、学習期間が短く、予測誤差が少ないという特長があります。ある中小河川を対象に、1回の降雨データを元にAIによる増水時の水位予測検証を行ったところ、一定の精度が認められました。

もう1つの特徴は、河川の環境変化にも迅速に対応できることです。河川では、増水による河床の変化であったり、護岸や築堤のために工事が行われ、水の流れが変化することがあります。今回の技術により、河川の環境が変化した後でも、わずかな雨量・水位データを取得して学習し直すことで、新たな水位予測が可能となります。これにより、今後水位計の設置が検討されている多くの中小河川での応用が期待できます。

河川は重要なインフラの1つ。適切な管理で防災、減災へ

河川の水量が急激に増えた時の避難情報や防災関係者の派遣には、水位変化の予測が欠かせません。スピーディな水位予測が可能になれば、避難情報発令や現地出動などの対処を迅速に進めることができ、ひいては災害による被害軽減への貢献も期待できるでしょう。

洪水による水害は日本だけでなく世界各国で発生している課題です。また河川は社会インフラの1つであり、適切に管理することで災害に強いまちづくりにも役立ちます。今後も富士通は、人々が安心して暮らせる社会の実現に向けて、防災や減災はもちろん、社会インフラ、国土の管理など様々な面でICTを活用して貢献していきます。