データ×AIが保険業界にもたらす破壊的変化とは?

メインビジュアル : データ×AIが保険業界にもたらす破壊的変化とは?

保険業界におけるAI利用には、大きな可能性が秘められています。これは、特に保険にかかわるプロセスの多くがデータ集約的で、しばしば反復的でもあるためです。顧客からの問い合わせ、請求報告、データ分析といった処理の大半は、理論上、ソフトウェアを使った標準化や自動化が可能であると考えられます。つまり、AIベースのインテリジェントなシステムを採用するうえで、理想的な前提条件が整っているというわけです。そのため、賢いアルゴリズムを利用することによって、保険金詐欺の検出スピードを速めたり、リスクをより正確に評価したりできるようになります。さらには、AIを使って高度にパーソナライズされた保険商品も生み出せるほか、センサー技術やIoTと組み合わせて、詐欺を予防することも可能になるでしょう。

その結果、保険商品はさらに個人に寄り添う存在となり、総合的に見て、より公平なサービスの実現が期待されます。今回、ヨーロッパ初のデジタル保険プラットフォームであるゲットセイフの共同設立者であるクリスチャン・ウィーンズ氏に、AIが保険業界にもたらす破壊的変化について詳しく伺いました。

デジタルジャーナル(以下DJ):保険業界を取り巻く状況について教えていただけますか?

ウィーンズ:保険業は、契約が何十年にもわたって継続されるような、非常に伝統的で安定した業界である一方、市場の統合が起こるにつれて、大きく成長する保険会社の数が減っているのも事実です。デジタル化についていえば、大半の保険会社がデジタルソリューションの導入に力を入れていますが、よく観察してみると、真にスマートな自動化プロセスやAIの利用という点では、ほとんどの保険会社が依然としてほど遠い段階にあるといわざるをえません。

DJ:デジタルテクノロジーは保険業界にどのような破壊的変化をもたらしていますか?

ウィーンズ:保険業界において、AIは特に4つの領域を根底から変えると考えられます。

1つ目の領域は、スピードです。AIは契約や保険金支払いなど、保険にかかわる多くのプロセスを加速します。これにより、保険手続きのスピードが飛躍的にアップし、対応が迅速化されるでしょう。

2つ目の領域は、リスクへの対処です。AIは保険金詐欺の検出にかかる時間の大幅な短縮と、より正確なリスク評価を可能にします。その結果、保険会社は顧客のリスク情報の確度や、契約業務を改善できるようになるでしょう。一方、信頼できる「優良な」顧客は、保険料が安くなったり、極めて迅速なサービスを受けることができたりするような恩恵が得られるかもしれません。

3つ目の領域は、パーソナライゼーションです。AIを利用すれば、パーソナライズされた保険商品を生み出すことができます。保険会社は、顧客のニーズを履歴データや行動データに基づいてより適切に評価することで、顧客のニーズに完全にマッチしたオーダーメイドの保険パッケージを提案することが可能になるのです。

そして4つ目はリスクの予防です。AIを各種センサーやインテリジェントデバイスと組み合わせることで、リスク予防を促進することが可能となります。そうすれば、将来的に保険会社は、保険金請求に対処する以上にリスクを防ぐ役割を担う存在へと進化し、顧客から見た自社の価値と重要性を、さらに高めていけるでしょう。

DJ:どのような種類のデジタルテクノロジーに、最も注目すべきしょうか?

ウィーンズ:現在は、RPAことロボティック・プロセス・オートメーションを利用して、プロセスの自動化を進める保険会社が増えています。しかし、そのためのボットは、まだ請求処理や住所データの変更、解約申込書の処理というように限られた単純な業務プロセスにしか対応できていません。つまり、データの入力が不完全だったり誤りがある場合など、想定外の状況に対して柔軟に対処できる段階ではないといえます。もちろん、AIベースのアルゴリズムには、大きな可能性があると考えていますが、必要とされるのは、大量のデータから自己学習して、事前に定義されたルールがなくても多様なタスクを遂行できるAIなのです。

DJAIは保険業界にどのような効果をもたらしていますか?

ウィーンズ:先程お話ししたとおり、ほとんどの保険会社が業務に採り入れているのは、チャットボットやRPAなどのルールベースのアルゴリズムです。このことからもわかるように、保険業界におけるAIは、今もまだ多くの領域で初期の段階にあります。AIの可能性を十分に引き出すために必要でありながら、現実のほとんどの保険会社に足りないものは、全社レベルで統合化されたデータです。ほぼすべての保険会社が現在も無数のデータサイロと戦っており、顧客の全生涯にわたるデータを統合することができずにいることが問題となっています。

DJ:データアナリティクスの重要性を教えてください。また、保険会社はデータをどんなことに利用していますか?

ウィーンズ:データとは、いわば、保険会社にとって最も貴重な通貨にあたる存在です。保険業界は、他のどの業界よりもデータに大きな関心を寄せているといってよいでしょう。顧客に関する知識が増えれば、それだけリスク情報の確度が高まり、商品や料金、サービスをより良く調整できるようになるからです。

DJ:保険会社がデジタルソリューションに期待していることは何ですか?

ウィーンズ:ほとんどの保険会社が目標として掲げているのは、「プロセスの効果と効率の向上」です。この分野の既存企業は内部のプロセスとコスト面には強い関心がある一方で、商品や保険の手続きを良くする方向には目を向けていません。しかし、テクノロジーによって保健を改革しようとするインシュアテック分野の企業は違います。インシュアテック企業は、テクノロジー視点から保健業務にアプローチし、顧客の暮らしをより良いものにするための手助けを行うことを目指しているからです。

DJ:スタートアップによる破壊的変化はどの範囲まで及んでいますか?

ウィーンズ:保険業界のデジタル化は、他の業界よりも遅れてやってきました。デジタル化の圧力は、特に顧客から発せられています。顧客は、契約から相談、保険金請求まで、保険に関する手続きを一貫してデジタルベースで行えるようになることを求めているのです。そのギャップを埋めようとするのがインシュアテック企業です。インシュアテック企業は、技術的な知識、効率的な構造、俊敏な意思決定能力を合わせ持っており、さらに多くの場合、革新的なアイデアを素早く実行するうえでのリスクに備えた自己資金も有しています。そのため、インシュアテック企業は既存企業に対抗し、従来型の保険業に破壊的変化をもたらす可能性があるといえるのです。

DJ:大手の保険会社はどのような反応を見せていますか?

ウィーンズ:従来型の保険会社は、多額の資金と専門知識を投じて旧式インフラのデジタル化を図ろうとしていますが、いまだにレガシーシステムを抱え、近代化のためのプロジェクトが大きく滞っているのが現状です。どこもデジタルソリューションを導入しようとしながらも、そのペースはかなり遅いので、歴史の浅いインシュアテック企業が競争で優位に立つチャンスを与えてしまっていると捉えてよいでしょう。

この記事はDigital Journal向けに執筆され、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。

※本記事の文中のリンクは英語ページに推移します。