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IoT水耕栽培による高品質メロン栽培の研究に埼玉県越谷市が挑戦

メインビジュアル : IoT水耕栽培による高品質メロン栽培の研究に埼玉県越谷市が挑戦

高級果物の代表格として知られるメロン。とても美味しく、見た目にも美しさがあります。
埼玉県越谷市では高品質なメロンを効率的に生産する取り組みが始まっています。

高齢化と担い手減少が進む農業業界に魅力づくりを

日本では農業従事者の高齢化が進み、また後継者の不足などにより従事者の減少が、農業における大きな課題となっています。埼玉県越谷市は首都圏にあり、こうした課題は一層深刻になっています。

越谷市は、平坦な土地で河川や用水などの水資源が豊富なことから、古くから稲作が盛んでした。しかし近年では、都市化の進展とともに、農地を別の目的に使用する「農地転用」も進み、農業の担い手不足、そして農地の減少という問題に直面しています。

農業の担い手をその気にさせるような、魅力ある農業、それは、作業の負担が少なく、かつ効率的なスマート農業です。そのために越谷市が着目したのがメロンの水耕栽培でした。メロンの水耕栽培は比較的手間がかからず、単価も高いという利点があります。そこで年に3回の収穫を可能とする、町田式水耕栽培装置を活用した試験栽培を2018年度より開始しています。町田式水耕栽培装置とは多収穫・良食味の野菜栽培を可能にする装置で、水耕栽培槽内に養分を放射状にゆらぎを起こしながら流すことで養分吸収を促進します。

2019年7月越谷市は、さらなる高品質なメロンを効率良く栽培するノウハウの確立を目指し、IoT(モノのインターネット)を活用したメロン水耕栽培の研究を本格的に開始しました。越谷市との共同研究パートナーとして協力しているのが、富士通です。

越谷市と富士通の共同研究は、2019年7月30日から2020年3月31日までの期間、越谷市農業技術センターで実施します。富士通は、水耕メロン栽培事業へのIoT活用の有効性を検証するため、栽培におけるデータ収集と解析、セキュリティを担保した装置などを設置し、その運用を行います。

ラズベリーパイを活用し、メロン栽培のデータ収集システムを構築

ビニールハウス内で行うメロンの水耕栽培においては、温度や湿度、照度、二酸化炭素(CO2)濃度などが密接に関係すると考えられています。共同研究では、これらの栽培環境を測定して情報を収集・解析することで、最適な栽培環境を管理する仕組みを構築し、高品質なメロンの効率的な生産につなげられるかを検証しています。

今回の共同研究では、英国ラズベリーパイ財団が開発した、基幹部品を1枚の基盤に搭載したシングルボードコンピュータ「ラズベリーパイ」にデータを取得するセンサーを取り付けデータ収集のシステムを構築しています。
ラズベリーパイは、安価でコンパクト、かつ省電力である点が特徴で、ハードルが高いとされていたIoT開発をより簡単に行える点が魅力なコンピュータです。

データ収集システムでは、温度や湿度、照度、CO2濃度などの栽培に関わる各種環境データをビニールハウス内に設置した小型で省電力のセンサーで収集します。収集したデータはクラウド上に蓄積し、メロンの栽培環境と収穫量や品質との関係を解析、メロン水耕栽培へのIoT活用の有効性を検証していきます。

図 : 共同研究におけるデータ収集・解析の流れ

共同研究におけるデータ収集・解析の流れ

具体的には、種まき日に合わせてカメラと環境計測センサーを取り付けたラズベリーパイをビニールハウス内3カ所に設置し、温度、湿度、照度、CO2濃度を1分ごとに測定します。収集したデータや毎朝7時に撮影する生育状況の写真は、ビニールハウス内のデータ収集用ラズベリーパイに集約され、グラフによりデータの確認が可能です。今後、富士通のクラウドサービスへデータをアップロードし、最適な栽培モデル策定に向けた解析を実施していきます。

写真 : 共同実験の様子

共同実験の様子

IoTでのセキュリティ強化

IoTは私たちの日常を便利で豊かにする可能性を秘めています。その一方、セキュリティ対策が万全ではないことも多く、不正アクセスやサイバー攻撃の対象となることも課題だと言われています。

今回のデータ収集システムでは、ラズベリーパイで収集した栽培環境データをクラウド上で管理するため、多層防御によりセキュリティを強化しています。

具体的にはラズベリーパイ上で動作するソフトウェアの堅牢化やセキュリティ証跡の一元管理、機器本体の物理的堅牢化のほか、トレンドマイクロの「Trend Micro IoT Security(TMIS)」を採用しています。サイバー攻撃によるシステムの停止や不正なプログラムが実行されるリスクを低減しています。

メロンの安定生産と収穫量増で、新たな農業振興へ

越谷市は高品質なメロンの安定生産と収穫量の増加を目的に、収集データから収支・経営モデル、水耕栽培のマニュアルを作成し、その栽培ノウハウを市内の農家や企業へ展開することで、メロンを越谷市のいちごに続く農業振興の柱に育てていくことを目指しています。

また、富士通は誰もが手軽に農業データを収集できる環境実現の可能性を探るとともに、越谷市と共同でIoTを活用した効率的な栽培方法を確立し、市内の農業振興を支援していきます。

今回の共同研究によって、より多くの人が美味しいメロンを食べられるようになることが期待されます。