立ち往生や異常走行する車をAIで検知し道路を安全に

メインビジュアル : 立ち往生や異常走行する車をAIで検知し道路を安全に

スタック車両が渋滞や新たな交通事故を引き起こす

豪雨や積雪などが原因で、路上で動けなくなった自動車(スタック車両)が引き金となり、渋滞や、新たな交通事故につながったりすることがあります。道路の安全確保には、スタック車両をいかに早期に発見し、交通障害を取り除くかが鍵となります。国土交通省が調査した「直轄国道における降雪による通行止め及び立ち往生実績(平成27年度)」によると、スタック車両は年間500台以上、通行止め距離は1,670キロメートル、通行止め時間は1,100時間にも及びます。

2018年2月に北陸地方で発生した記録的な大雪では、チェーン未装着の大型車が各地で立ち往生しました。これらのスタック車両の移動に時間がかかり、一時は300台以上の車が滞留する事態が発生しました。

1万3,000台のCCTVカメラで行う国道の監視業務の課題とは?

現在、国土交通省では、管轄する道路や河川の監視目的で全国各地に約2万台のCCTV(closed-circuit television:閉鎖回路テレビ)カメラを設置しています。そのうち、国道には全国約1万3,000台のCCTVカメラが設置されています。各国道事務所では、2、3人の道路監視員が24時間体制で、大型モニターを使いながらカメラの映像を監視しています。そして問題発生に気が付けば、関係機関との情報共有や緊急車両の出動などの対応を行っています。

しかしCCTVカメラの設置台数が年々増加する一方で、緊急対応にもあたりながら、常時映像を監視し、交通事故やスタック車両の発生を早期に発見することは困難な状況となっています。

こうした背景から、国土交通省は2018年3月に、2022年までの5年間で推進する研究開発や技術導入の方向性を示す「電気通信技術ビジョン3」の中で、「AI技術による事象検知」を次のように推進しています。

“現在、管理者がカメラ映像の順次目視により行っている異変の発見について、人による監視と並行してAI技術により事象の検知を行うシステムにより、常時すべての映像を隈無く確認することで、人による監視の支援を行い、見逃しの防止や事象発見の早期化を図る”(電気通信技術ビジョン3より抜粋)

AIにより車両の停止や混雑を判定し道路管理者へ通知

富士通は2019年7月、人工知能(AI)により車両を自動検知し、車両の停止や混雑などを判定、通知することで、道路管理者の業務の高度化を支援するソリューション「FUJITSU Public Sector Solution AI検知システム(AI検知システム(注1))」の提供を開始しました。

AI検知システムは、ディープラーニング技術を活用し、多種多様な車両の画像を教師データとしてAIに学習させることで、天候や昼夜などの外部環境に左右されず、乗用車、トラック、バスなど様々な車両の種類を正確に自動で検知します。20台(標準)のカメラを順次切り替えて、1台のAIシステムで処理するため、カメラごとに処理領域を設定したり、カメラに写される光景の範囲の角度を設定が必要ありません。日常のカメラ監視業務に制限を与えず検知処理が可能です。

また、車両の停止・混雑といった様々な異常事象を自動検知し、道路監視員へ速やかに通知することで、交通トラブルへの早期初動を支援します。例えば、ある車両の位置に一定時間変化がなかった場合は「停止」、あらかじめ設定した閾値を超える車両台数が道路上に存在すれば「渋滞」と判定します。その結果を道路監視員に対し、マップを表示しつつアラームで通知することで、異常事態の発生に対し迅速な初動につなげられるようになります。

図 : 停止車両を検知

停止車両を検知

図 : 車両混雑を検知

車両混雑を検知

さらに、事象を検知した映像は、映像蓄積装置と連携して事象発生前後の動画像を自動的にライブラリに蓄積します。蓄積された映像は映像アーカイブとして、映像情報共有化システムなどで表示。そのデータは、原因究明や対策の計画立案に役立てることができます。

今後、周囲を走る自動車に比べて低速で走る自動車や、進行方向の反対方向に走る逆走、道路上に置かれた障害物を回避して本来のコースから外れる避走などの異常走行の検知も予定しています。(2019年11月以降予定)

図 : システム構成イメージ

システム構成イメージ

(注1)「AI検知システム」は、AI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」を基盤としています。

効果検証で高精度の認識率を達成

国土交通省関東地方整備局様において、本システムを活用し効果を検証しました。そのうち高崎河川国道事務所様では、新潟県や長野県へ続く道路を管轄しており、特に冬期は積雪時にスタック車両が発生することが少なくありません。

実証の結果、天候や昼夜の影響を受けずに、また画角が変わっても自動的にその画角に合わせて車両を検知し、高精度の認識率を達成しました。昨年度は降雪が少なかったためスタック車両は発生しませんでしたが、大型車が停車したことが原因で渋滞が発生した際、「停止」「混雑」を正確に検知し、スタック車両検知の有効性を示した結果となりました。

異常発生の予測や河川監視業務への適用も視野に

今後、富士通では、カメラ映像と気象条件からスタック車両が発生する条件の仮説を立て、その条件を事象発生の予兆として検知し、その結果を地図上に表示させて、発生した問題の全体像を把握する支援機能の実装を目指しています。

また、その仮説を検証しながら、蓄積された過去データと気象データとを紐づけた学習モデルを作成し、さらなる精度向上を目指します。

これらの機能を実装することで、AI検知システムによって蓄積された異常事象の映像ライブラリから、異常事象発生を予測して未然に防ぐ、もしくは事前に初動体制を構築できるサービスへの拡充を進めていきます。

さらにAI検知システムの対象を広げ、道路だけでなく、河川の監視業務への適用も進める予定です。人物検知機能を実装し、立入禁止区域の人物検知やダム放流時の流域確認に監視カメラを用い、パトロールの負担軽減を支援します。また、大雨で水位上昇が予想される際に危険地域を抽出した効率の良い監視業務を支援していきます。

富士通はこれからも、地域住民の暮らしや生活の基盤となる河川や道路などの公共インフラを快適に利用でき、安全・安心な社会づくりを実現していく公共機関向けに最新のICTを活用した各種システムを提供していきます。