【DX入門編②】企業が今、デジタルトランスフォーメーションに取り組むべき3つの理由

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なぜ今、企業はDXに取り組む必要があるのでしょう。【DX入門編①】で紹介したように、ストルターマン教授がDXの概念を発表してから、既に15年の月日がたっています。なぜここまで、DXは脚光を浴びているのでしょうか。理由は三つあります。

DXが再び脚光を浴びている3つの理由

1つ目の理由は、経済産業省が指摘しているように、既存のレガシーシステムの延長では企業の成長に限界が見えているからです。既存のシステムは、多くの場合はオンプレミス型のシステムです。いくら使い慣れているシステムとはいえ、そのままの機能を使い続けるにしてもメンテナンス費の負担が続き、機能を拡張しようと思えばコストを膨大にかけなくてはなりません。一方で、クラウドやIoTなどのデジタル技術は急速に進化しており、自社にすべてを持つことなく、比較的安価にシステムが構築できる環境になっています。まさに今、これらの技術を活用して、変革を起こすシステムを考える時期に来ているといえます。

2つ目の理由は、消費者の消費活動の変化です。「モノ」から「コト」、そして「所有」から「共有」へと、消費者の気持ちの重きが変わっています。例えば、「カーシェアリング」の登録者数が増加しているのは、クルマを所有するということに価値を見出すのではなく、クルマを利用することで得られる体験に価値を見出しているからにほかなりません。単に「モノ」を売るのではなく、「コト」を提供することにシフトするためには、当然、企業としてのビジネスモデルを変える必要があり、情報システムの見直しも必要となります。

そして3つ目の理由は、すでにいろいろな分野でデジタル化による変革は起きていて、それに対抗するための有効な手段がDXによる施策だということです。デジタル技術によって既存のサービスやビジネスモデルが破壊・再構築されることを「デジタルディスラプション」と呼びますが、デジタルディスラプションは主には新規参入者によってもたらされます。例えば、米ウーバーテクノロジーズは一般のドライバーをタクシーサービスに登用することでタクシー業界にデジタルディスラプションを起こしました。米エアビーアンドビーは一般家庭の空き部屋を旅行者に開放することでホテル業界にデジタルディスラプションを起こしました。

これらは、デジタルディスラプションとして非常にわかりやすい例ですが、デジタルディスラプションは程度の差はあれ、多くの業界で起きています。そして、デジタルディスラプション後の再構築されたビジネス環境の中で、競争力を維持するためには、DXによって、自らもデジタルディスラプションを起こしていかなくてはならないのです。

クラウド、AI、5G――DXを支える新しいテクノロジー

では、具体的にDXを実現するためには、どのような技術を利用すればよいのでしょう。以下に、DXを支える技術について解説します。

クラウド

デジタル化のすべての礎となるのはデータです。DX実現のためには、膨大なデータが必要となります。また、データは自社だけでなく、パートナーから集めるケースもあれば、後述するIoTの技術を使うことにより、インターネットにつながったセンサーなどから集めるケースもあるかもしれません。DXにおいて、データは増えることがあっても減ることはありません。これらのデータをすべてオンプレミス型のシステムで収集するのは不可能で、クラウドサービスの使用が前提となります。クラウドサービスであれば、初期費用もランニングコストも低額で抑えられるとともに、メンテナンスなどもサービス業者に任せることが可能です。

IoT

DXはデータを収集し、そしてそのデータの中から価値を見出すのが基本です。データが宝の山となるわけですが、データの収集を人手だけに頼るのは限界があります。そこでIoTの出番です。様々なモノをインターネットにつなぎ、具体的にはセンシング技術を利用してモノのデータを大量に蓄積すれば、そこから新たな発見があるはずです。

AI

データが宝の山と述べましたが、いくらデータを大量に収集できたとしても、それらのデータを活用しなければ何もなりません。分析して、業務に生かしてこそ、データが生きるのです。そして、大量のデータを分析するのに必要となるのがAIです。データから知恵を生み出すツールとしてAIを利用します。AI自らがデータを学習し、自律的に答えを導き出すディープラーニングなどが発達することで、AIの応用範囲はますます広がっていくでしょう。

モバイル

これまでのITシステムは、パソコンを利用することが前提でした。最近のモバイル機器は、パソコンの呪縛から解放するには、十分すぎるほど進化しています。またオープン化の流れによって端末自体のコストも、またアプリケーションのコストも下がっています。システムのユーザーが外出先などどこにいても、サービスを提供できますし、また彼らからの情報収集も可能となります。

5G

既存のネットワークと比較して、「高速性」「低遅延」「多端末接続」などを特徴に持つ5G。これまで挙げてきた「クラウド」「IoT」「AI」「モバイル」の各技術は、ネットワーク基盤を前提としています。5Gは、これらDXを実現するためのキー技術の性能を総じて底上げするものであり、5Gの実用化がDXを次世代に変化させることになるかもしれません。

ここでは五つの技術を紹介しましたが、ほかにも「SNS」や「VR/AR」、「モビリティ」「センサー」など、DXを実現するために活用すべき技術は多くあります。また、これからも新しい技術がどんどん登場してくるでしょう。実際のシステム構築の際には、これら新技術の動向にも常に目を配っていくことが必要になります。

87%のビジネスリーダーがDXに既に取り組んでいると回答

今回はDXについて基本から見てきました。DXは、すでに先進企業では取り組みが進んでいます。今年2月、富士通が世界9カ国、900人のビジネスリーダーに対して行った調査では、実に87%のビジネスリーダーが、過去3年以内にDXの検討、試行、実践を行ったと回答しています。さらに金融業の企業では47%、運輸業の企業では45%がDXを実践し成果を出したと回答しました。

図 : 参照元:「グローバル・デジタルトランスフォーメーション調査レポート 2019」デジタルトランスフォーメーションの取り組み状況

参照元:「グローバル・デジタルトランスフォーメーション調査レポート 2019」デジタルトランスフォーメーションの取り組み状況

今後も、自動車や金融、ヘルスケア(医療)、製造、小売など各業種でDXの取り組みは進み、様々な改革が行われ、そして社会が変わっていくでしょう。その波に乗り遅れないためにも、覚悟を持ってDXへ取り組むことが求められています。

著者情報
木村知史
日経BP総研 上席研究員

1990年慶應義塾大学理工学部機械工学科修士課程卒業、同年日経BPに入社。製造業のための総合情報誌「日経メカニカル」にて、主に先端の加工技術および生産管理システムの分野を取材・執筆。その後、CAD/CAMやSCMなど製造業におけるコンピューター技術の活用誌「日経デジタル・エンジニアリング」の創刊に参画。2008年1月、Webサイト「Tech-On!(現日経xTECH)」編集長。2012年7月、「日経ビジネス」編成長、2014年1月、同媒体のデジタル版「日経ビジネスDigital(現日経ビジネス電子版)」編集長。ビジネス関連のコンテンツを企画するとともにサイト運営やアプリ開発を先導。2019年1月、「日経ビジネス電子版」を企画・立ち上げ。2019年4月より現職。大手企業のコンテンツコンサルティングや「Beyond Health」等のメディアのコンテンツ企画を担当。