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自動運転車を支える部品メーカーの未来技術とは?

メインビジュアル : 自動運転車を支える部品メーカーの未来技術とは?

自動運転車に対応しようとする自動車業界は、ある意味で「車輪の再発明」を進めています。

例として、日本の住友ゴム工業のケースを挙げてみましょう。同社は、ヘンリー・フォードがフォードモデルTを製造していた時代にまで、そのルーツを遡ることのできる歴史ある企業です。同社が開発中の「スマートタイヤ」は、空気圧や温度を自ら監視することが可能で、最終的には道路状況の変化にも自ら対応できるようになるところまで計画されています。

もちろん、改革が進められているのはタイヤ分野だけではありません。たとえば、小糸製作所や旧旭硝子のAGC、自動車部品メーカーのリアコーポレーションでは、ヘッドライト、ガラス、シートなどに半導体やセンサーを埋め込み、自動運転車にも負けない知能を与えるための開発が行われています。

自動運転車分野では、グーグルの持株会社であるアルファベットの傘下にあるウェイモや、インテル傘下のモービルアイ、そして中国の百度の3社がコア技術で優位に立っていますが、サプライヤー勢もこのビジネスにおけるシェア拡大を諦めたわけではありません。最新技術動向の調査会社であるBISリサーチによると、先進的運転者支援システムや自動運転に対応する部品の市場規模は、10年以内に570億ドルに達する見込みです。そして、自動車の黎明期に誕生した古参企業も、この流れに対応しなければ存続の危機に陥ることに気付いています。

「自動運転技術は自動車メーカーにとって大きな挑戦ですが、伝統的な部品会社にとっては、さらにレベルの高い挑戦といえるでしょう」と、東京でデロイトトーマツコンサルティングのパートナーを務めるゾウ・レイ氏は指摘します。「この流れに取り残されないよう、部品メーカーは自社の製品を車両の『五感』とするべく、懸命の努力を続けています」

エネルギー分野の企業や専門家を支援するブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスがまとめたデータによると、自動運転技術やモビリティ技術を手掛ける企業に対して自動車メーカーが行ってきた投資の額は、2010年以降に発表された分だけでも140億ドルを超えており、その筆頭がトヨタ自動車の約30億ドルです。

高度な自動運転機能を備えた商用車両の市場展開は少なくとも2022年まで始まらないだろうと見られていますが、部品メーカーにとっての迫り来る脅威は、そうした車両の設計がますます洗練されていけば、一部のありふれた部品とそのサプライヤーが不要になると予想されることでしょう。

たとえば、カメラやレーザー、センサを利用して周囲の様子を把握できる自動運転車にとって、ヘッドライトやミラーが本当に必要なのかどうかを考えてみてください。

スマートヘッドライト

創業100年を超える小糸製作所では、こうした流れに対応するためにヘッドライトの改革を行っています。東京を拠点に、そのルーツが1912年の鉄道信号灯用レンズの国産化成功にまで遡ることのできる同社では、センサーとAIチップを搭載したスマートライトの開発を進めており、2025年ごろまでの市場投入を目指すそうです。

車両の四隅に取り付けられるスマートライトには、情報を自動処理して反応する機能が搭載され、薄暗い横断歩道を照らしたり、歩行者に安全に渡れることを知らせたり、特定の色を点滅させて周囲のドライバに注意を呼び掛けることができるようになるとされています。

また、ブルームバーグのデータによると、小糸製作所の既存顧客は、トヨタ、フォルクスワーゲン、ゼネラルモーターズなどです。

同社の副社長を最近退任した横矢雄二氏は、ライトの進化について次のように述べています。「自動運転はライトの役割を変えるでしょう。我々は、単なるライトではなく、むしろ車両の四隅でさまざまな機能を担うコーナーモジュールとして捉えるようになりました。」

窓ガラスアンテナ

また、同じく東京を拠点とするガラスメーカーのAGCも、自社の自動車用ガラス製品のあり方を見直し、車載通信システムの一部となることを目指しています。

1907年に旭硝子として設立されたAGCは、車両が他の車両や交通インフラとの間で情報を送受信できるようにするため、5G無線接続に対応した窓ガラス一体型アンテナを開発中です。ブルームバーグのデータによると、AGCの顧客にはトヨタ、テスラ、ソニーなどが含まれています。

以上のような部品メーカーの取り組みに関して常に大きな問題となってくるのは、よりスマートで、より高額でもあるコンポーネントを導入することに経済的な意味があることを、自動車メーカーに納得させられるかどうかです。この点について、インドのバンガロールに拠点を置く自動車専門の独立系アナリストであるディーペシュ・ラソーレ氏は、「すべての部品メーカーが、自動運転車や電気自動車の波に乗るために抜本的変革を行う必要があるとは限りません。これらの企業は、業界の形成過程に合わせて徐々に進化を遂げてきたのですから…」と指摘します。

「クルマはクルマです。タイヤの形が変わらないように、変えずに済む部分も少なくありません。ただし、特にエンジンやギヤボックス技術を手掛ける一部の企業にとって、すべてを一から作り直す必要が出てくることは考えられます」というのがラソーレ氏の考えです。

とはいえ、当面は存続の危機に陥りそうにないコンポーネントでさえ、今では進化を遂げつつあります。住友ゴム工業で行われている、道路状況に関するデータを自分の車両だけでなく他車両にも送信できるタイヤの研究なども、その1つです。

スマートタイヤとスマートシート

次に来るのは、道路状況に自動で適応するタイヤの時代です。「そうしたタイヤは、水を検知したら、表面の構造を濡れた路面に最適なものに変えることができます」と、住友ゴム工業で研究開発本部長を務める中瀬古広三郎氏は説明します。

「タイヤも、よりスマートになることが必要です。走行する道路の情報が正確に得られなければ、我々は自動運転車社会に移行することはできません」と、中瀬古氏は述べています。

こうしたイノベーションは日本に限ったことではありません。米国ではリアコーポレーションが、自社の自動車用シートに生体計測センサを搭載して、ストレスや眠気、心拍数の変化を検知し、有効に対処できるようにする研究を進めています。同社によると、このシートは必要に応じて、医師や家族にデータを送信することもできるとのことです。

「ほかにも、ユーザーが座っている場所に応じて『部分的な温度環境』を個別に設定できる制御機能や、ヘッドレストに組み込まれたノイズキャンセリング機能があります」と、米ミシガン州に拠点を置くサウスフィールド社は説明します。

情報サービス企業のIHSマークイットで自動車担当の主席アナリストを務めるエジル・ユリウセン氏は、次のように指摘します。「さまざまな機械部品が徐々に姿を消していき、多くの電子機器に取って代わられることでしょう。そのような状況の下で生き残るためには、思い切った改革が不可欠です。」

 

この記事は Bloomberg けにマ・ジエ、ナオ・ソノ、マサツグ・ホリエが執筆し、 NewsCred パブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。