先行事例から見る「Data×AI」【後編】 データを活用したビジネス成果の出し方

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前編からの続き)
企業や組織のDX実現を支援する「Design the Trusted Future by Data×AI」は、多様なプロジェクトで大きな成果を出し始めています。様々な課題を解決し、ビジネスを加速させた先行事例を紹介します。

陸運業:日本郵便様
コストと人材が最小となるトラック輸送の最適化

人手不足や働き方改革が大きな課題となる中で、日本郵便でもゆうパックなどの郵便物や荷物、商品の配送や集荷において、人手やコストの削減が課題となっています。
富士通はA*Quantum社様と共同で、日本郵便様の埼玉県新岩槻郵便局における運送便の最適化に取り組みました。新岩槻郵便局を拠点局とする22の郵便局に対して郵便物を配送する場合に、輸送コストが最⼩となるトラックの種類、トラックへの積載貨物、輸送ルートを最適化するものです。
量子コンピューティングに着想を得た組合せ最適化問題を高速に解く新技術「デジタルアニーラ」を活用。従来では発見するのが困難だった多拠点を巡回する運送便を組み込むことで、全体の便数や運航時間の効率化、積載率の向上を実現しました。従来⼿法と比べて便数を52から48に削減することが可能となりました。

医療
TDAを用いた不整脈の種類を判定

ディープラーニングは、画像や⾳声の認識に対しては極めて高い精度を出すことができますが、時系列データへの適⽤は得意ではないとされてきました。この課題を解決するのが、富士通とフランス国⽴研究機関Inriaとの共同研究の成果であるTDA(Topological data analysis)です。一言で言うと、データが持つ波形の特徴を⾒つけやすくする技術です。このTDAを前処理として活⽤することで、時系列データをディープラーニングで効率的に学習させることができます。
200人以上の患者の心電図の解析にTDAを適用し、ディープラーニングを行うことで、様々な種類の不整脈を高速に検出することに成功しました。誤判定率の7割低減を実現し、早期発見の支援に期待が高まっています。

精密機器メーカー:島津製作所様
質量分析計のピークピッキングをAIで自動化

物質中に含まれる分子などの成分を分析する際に、液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーを用いた質量分析計が用いられます。
測定データは多様な波形が組み合わさったスペクトルとして得られるため、成分分析を行うにはスペクトルから分子に対応する波形を読み取る「ピークピッキング」という作業が必須となります。この作業は熟練技術者の経験やノウハウがなければ正確に行うことができない困難なものです。
そこで、富士通が開発した時系列データに適用可能なディープラーニングのアルゴリズムを用いることで、熟練技術者と比べて遜色ない精度のピークピッキングを実現しました。
なお、ディープラーニングの精度を向上するためには大量の教師データを投入する必要がありますが、島津製作所様が疑似的に教師データを生成する技術を開発することでこの課題を解決しました。

政府機関:シンガポール海事港湾庁(MPA)様
AIを活用した船舶の衝突リスク予測

世界的に交通量の多い航路において海上交通を管理するセンターでは、船舶同士の異常接近を警告するアラートをはじめとする情報提供を行い、船舶の安全な航行を支援しています。しかし、船舶業務や船舶とセンター間の意思疎通が複雑になるにつれて、より高度に交通状況を分析し、船舶の動向を事前に検知・予測することが衝突リスクを軽減する上で重要となっています。
シンガポール海事港湾庁(MPA)様と富士通は、2018年4月より共同し、シンガポール海峡の海上交通リスクを分析する実証実験を進めてきました。そして2019年4月、船舶同士のニアミスを予測するAIを活用した、船舶の衝突リスク予測技術の有効性を検証しました。
このAI技術は、富士通研究所が開発した「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」をベースとするもので、船舶衝突リスクの検知ならびに衝突リスクの集中する動的リスクホットスポットを予測することが可能になります。今回の検証により、富士通の技術を海上交通管制業務で使用されるVTS(Vessel Traffic Services)システムに適用することで、予防的なリスク回避に貢献し、航行の安全性向上へつながることが確認できました。
今後、リアルタイムのデータ収集に対応し、富士通としても本技術を取り入れた海上交通管制や運航船舶向けのサービスを2020年までに提供開始することを目指しています。