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DX実現を加速する「Data×AI」【前編】 データ価値を最大化する目的志向型とは?

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データは「次世代の石油(new oil)」とも例えられるように、これからのビジネスを動かし、利益を生み出していく源泉とも言えます。まさにデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する原動力となるのがデータです。
しかし、実際に活用できているデータは限定的であり、殆どのデータは宝の山に埋もれたまま活用されていないのが実情です。
富士通は、「データやAIの利活用が実業務適用に至らない」という課題に対し、目的志向型ビジネスを支援するプロセス&フレームワーク「Design the Trusted Future by Data×AI」を策定しました。

DXを推進したい経営陣と、具体化できない現場

経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」

多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現に向け動き出しています。DXに関しては様々な定義がありますが、ある調査会社では、“企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること”と定義しています。

政府もDXの導入を後押ししています。経済産業省は、2018年5月に「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を立ち上げ、同年9月には「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」という報告書をまとめました。その中で、DXによりビジネスをどう変えるかといった経営戦略の方向性を定めていかなければならないという課題があるとした上で、各企業が抱える既存システムに関して、①老朽化した既存の基幹システムがDXを推進する上での障壁になる、②2025年までにシステムの刷新をしないと、それ以降、年間で最大12兆円の経済損失が発生する可能性がある――と警鐘を鳴らしています。これは、政府がDXの重要性を示しているとも言えるでしょう。実際、経営者の多くはDXの導入の成否が今後の企業の発展を左右させると考えています。

このような背景から、多くの日本企業がDXの実現に向けて迷いなく邁進している、と想像できるかもしれません。ところが実態はそうでもないようです。「経営層はDXの導入を求めるものの、現場は具体的な取り組みに着手できていない」、あるいは「経営層もDXにより実現する姿を具体的に現場に示すことができていない」というケースが多く見られます。

DXで重要なのは「目的の明確化」、それがあってのデータ利活用

では、DX実現のためには、何が必要でしょうか。
デジタル化のすべての礎となるのがデータであることは明白です。加えて重要なのは、「新規の顧客を獲得したい」「顧客の単価を上げたい」など、目的を明確にすることです。その上で、「目的を達成するためにはどのような課題解決が必要なのか」、「課題解決のためにはどんなデータが必要なのか」を考える必要があります。

もちろん、データを集めるだけでは課題解決にはなりません。データからソリューションを生み出す考え方として、DIKWピラミッドモデルがあります(図1)。DIKWピラミッドモデルとは、Data(データ)を最下層として、その上にInformation(情報)、Knowledge(知識)、Wisdom(知恵)をピラミッド型に重ねたものです。データは集まることで情報となり、情報から知識が生まれ、最後は知恵となって活用されるようになります。このような価値創出のサイクルを経て、データは初めて課題解決に向けて有効に活用されます。

図 : (図1)データは価値創出のサイクルを経て初めて有効に活用される

(図1)データは価値創出のサイクルを経て初めて有効に活用される

データの価値を表す言葉「Data is the new oil」

データを活用して知恵を生み出すツールとして有力なのはAI(人工知能)です。現在の第3次AIブームは、AI自らがデータを学習し、自律的に答えを導き出すディープラーニングという技術が登場したことで、その応用範囲をますます広げています。

データの価値を示す言葉に、「Data is the new oil(データは新しい石油)」があります(図2)。石油はそのままでは役に立ちません。精製されてガソリンになり、エンジンというツールを使って燃焼させて初めて「動かす」という目的を達成できます。データも石油と同じで、クレンジングやラベリングなどによって精製されて使いやすい形となり、AIというツールで処理されて、ようやく目的を達成できます。この例えからも分かるように、データを石油と同じように意味あるものとするために、AIの活用が求められています。

図 : (図2)データは石油と同様、そのままでは役に立たない

(図2)データは石油と同様、そのままでは役に立たない

DX実現のための必要なAIの導入の方法とは?

DXを実現する上で、データとAIの融合的活用は欠かせません。そこで富士通では、データとAIを融合的に活用しながら、目的に合ったDXをより効率的に実践するためのプロセス及びフレームワークとして「Design the Trusted Future by Data×AI(以下、Data×AI)」を策定しました。Data×AIは、お客様の目的達成を実現するための標準的なプロセス、そのプロセスを構成するのに必要なサービスや先端技術、リファレンスモデルからなるフレームワークから構成されます。

Data×AIは「人を中心としたトラステッドなより良い未来の創造をデザインする」というビジョンのもとに開発したものです。富士通では2009年から、人間を中心に据えた「ヒューマンセントリック」なアプローチを、あらゆる事業のどのようなシステムにおいても根幹に置いてきました。そのコンセプトは、Data×AIにおいてももちろん変わりません。AIは、ともすると人間の存在を排除するといった考え方もあります。だからこそ、あくまでもAIは人の判断の手助けを効率的に行うツールであり、人間を中心とした信頼できる未来を創造するという姿勢を明確にしています。

富士通が「Data×AI」を開発できた3つのポイント

Data×AIは、まだまだ実務への実装が少ないAIを、お客様の目的を達成するために導入し、定着化するまでを強力に支援するものです。3つの観点から説明しましょう。

1つ目は、グローバルに適用できるリファレンスモデルを持っていることです。Data×AIで定義しているリファレンスモデルは、日本や米国、欧州の開発拠点の知恵を結集しています。このため、お客様は様々な業種のリファレンスモデルの中から、必要なものをピックアップすることで、最適なシステムを導入できます。

2つ目は、これまで富士通がSIerとして培ってきたノウハウを盛り込んでいることです。業種を問わず様々なお客様にシステムを納入してきた経験から、各業種においてシステムを導入する際、あるいは定着化させるまでに超えるべきハードルなどの勘どころを随所に盛り込んでいます。

3つ目は、最先端のAI技術に長けていることです。現在、AIは第3次ブームと言われていますが、富士通では第1次ブームの時から30年以上の長きにわたってAIの研究を行い、他社にはない技術を蓄積しています。さらに、世界中の様々な研究機関と連携して活動しており、最先端のAI技術を取り込む環境を構築しています。(図3)

図 : (図3)グローバルに展開する研究開発拠点

(図3)グローバルに展開する研究開発拠点

プロセスとフレームワークで、データの価値を最大化

プロセスを構成する4つのフェーズ

次に、Data×AIの構造について詳しく見ていきましょう。プロセスは「目的志向設定」「データ準備」「データ利活用」「業務実行」の4つのフェーズで構成されています(図4)。

図 : (図4)4つのフェーズで構成されるプロセス

(図4)4つのフェーズで構成されるプロセス

まず、目的志向設定フェーズでは具体的な目的や課題を明確化し、さらにDataおよびAIを利用してどのように課題解決できるかを仮説設計します。データ準備フェーズでは課題を解決するために必要なデータに的を絞って、それらを効率よく収集できる仕組みを考えます。続くデータ利活用フェーズでは、データをAIで扱えるようにラベリングなどで精製、次にそれらのデータを利用して分析、目的に対するその効果を測定します。そして、最後の業務実行フェーズでは、実際の業務に適用すると共に定着化させて価値の創出を実現します。

いずれのフェーズも重要なのは変わりませんが、特に富士通が力を入れているのは、最初の目的志向設定フェーズと最後の業務実行フェーズです。AIはあくまでツールであり、目的が明確であるからこそ力を発揮します。目的がぶれてしまうと、DXの実現はままならなくなってしまいます。また業務実行フェーズにたどり着かずに、いつまでもPoC(概念実証)の段階から抜け出せないと、付加価値も生み出さないままとなってしまいます。

ともすると、各フェーズにおいて担当する部門が違う会社もあるかもしれません。その場合でも、各部門が達成すべきことを明確にして定着までこぎつけられるのも、富士通の強みと言えます。

最先端技術を備えたフレームワーク

Data×AIは、基本的には各プロセスに最適なサービス群、製品群が揃っていて、その中からお客様に必要となるものを供給するのが役割です。また前述したように、世界中にある研究開発拠点で開発中の最先端テクノロジーも各プロセスに導入できます。(図5)

図 : (図5)最先端技術群のフレームワーク

(図5)最先端技術群のフレームワーク

研究開発の世界では、AIには多種多様なカテゴリーにおいて技術が存在しています。
お客様の目的を達成するには、これらの既存の技術だけでは解決できない場合もあります。富士通は、まだ汎用化されていない研究段階の技術であっても、特定領域の課題に対して効果が期待できれば、提供の可能性を検討します。

最先端AI技術で価値創出に貢献

では、実際に実用段階に入っている先端的なAI技術についていくつか紹介しましょう。

少ないデータから解を出す「Wide Learning™」

富士通研究所が開発した「Wide Learning™(ワイドラーニング)」は、少ないデータからでも仮説を抽出して妥当性を持った解を出せるため、AIを導入する際のハードルを下げられます。AIが下した判断の根拠が分かるという特徴を持っており、人間が納得して結果を受け入れられます。「これまで現場が気づかなかった効果やリスクが分かる」「施策の優先度を考慮した判断が容易になる」といったメリットをお客様は享受できます。

データ準備を効率化する「LabelGear」

欧州富士通研究所(Fujitsu Laboratories of Europe Ltd.)が開発した「LabelGear(ラベルギア)」は、AI適用時に課題となるデータ準備を、独自の解析技術を用いて効率化するツールです。学習時に必要となるラベルが付与されていないデータに対して、似ているデータ群を自律的にグルーピングし、ラベリングできるという特徴を持っているため、学習データの生成を効率良く実行できます。
LabelGearを使うことで、ドイツの自動車メーカーは、自動車の塗装後の傷や色ムラの検出を自動化し、フィンランドの鉄鋼メーカーは、鉄板の製造時に生じる欠陥の自動検出と分類を実現しました。LabelGearは、欧州の30社以上のお客様で実証中で、学習データの作成時間を従来の1/50に削減できたケースもあります。

時系列データ分析を可能にする「TDA」

ディープラーニングを超える新しい分析手法として注目される「TDA(トポロジカルデータアナリシス)」については、フランスの国立研究機関Inriaと共同研究を進めています。トポロジーと呼ばれる数学の1分野をデータ解析に応用するもので、従来のディープラーニングでは扱うことが困難だった時系列データの分析を可能とするのが最大の特徴です。

富士通はこうした技術をお客様と一緒にさらに定着させるまでお手伝いします。そしてノウハウをさらにData×AIに取り込むことで、データやAIの活用を促進し、お客様の課題解決に貢献していきます。そして、お客様のDX構築を現実のものとし、より良い未来の実現をサポートしていきたいと考えています。

後編では企業や組織のDX実現を支援する「Design the Trusted Future by Data×AI」のビジネスを加速させた先行事例を紹介します。