2029年の働き方は?ワークプレイスの未来はより人間中心の環境へ

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2029年の働き方とはいったいどのようなものでしょうか? 本稿は、未来学者である筆者が、自身の予想をまとめたものです。まずは、10年後の自分が職場へ向かっている姿を思い描いてみてください。今から10年経っても、オフィスで働いている人はそれなりにいるはずです。

今日は月曜日。あなたはオフィスに向かっています。ただし、2029年ともなれば、あなたが働くオフィスビルも「知覚を持つ」ようになっているでしょう。つまり、ビルには多数のセンサーやIoTデバイスが設置されており、至る所でデータの演算や共有が行われ、AIによって処理されているのです。しかも、そのAIは意思決定を行い、自らを最適化するようになっています。もっとも、あなたのビルは単独で建っているわけではありません。そのビルの周りにはスマートシティが広がり、陸にはクルマ、海には船、空にはドローンと、自律制御される乗り物や機体であふれ返っていることでしょう。

さて、知覚を持ったビルに足を踏み入れてみましょう。ビルはあなたを特定の個人として識別します。あなたのコミュニケーションにおける傾向、たとえば、内向的か外向的かを知っており、生産性が高まるのは午前中か午後かも把握しています。もちろん、あなたの同僚についても同様です。それらのデータや情報はすべて機密事項として扱われ、安全に保管される一方で、ビルが自らを最適化するために利用されます。オフィスは自らの効率化を図り、結果的に働く人の生産性が向上するようなサポートを行うと同時に、誰もが安心して働けるよう、デジタルの世界でも現実の世界でも安全の確保に努めてくれるのです。

たとえば2029年のとある月曜日、あなたの調子が上がっていないこと、つまり、あなたが疲れていて少し不機嫌であることを、オフィスビルが感知したとしましょう。おまけに、このオフィスはユーモアのセンスまで備えているとします。あなたがいつものフロアに上がろうとしてエレベーターに乗り込むと、その中は自分ひとりでした。ドアが閉まると、オフィスビルがとびきりのジョークを披露します。ともすれば憂鬱になってしまう朝に笑いをもたらし、1日に少しばかりの潤いを提供しようというわけです。

今から10年後には、陸、海、空を問わず、AIやスマートシティ、IoT、自律型システムといったテクノロジーが一体となって、そんな風にワークプレースを一変させようとしていることでしょう。

実際には、こうした先進テクノロジーの多くは、すでに私たちの働き方、とりわけ、HRと略される人事のあり方を変え始めています。しかし、このような素晴らしいテクノロジーで満たされた未来において、私たちが自分自身を見失わないようにするには、そして、仕事から人間らしさを失わないようにするには、どうすればよいのでしょうか? 後半では、そのための3つのステップをご紹介します。

1.   常に人間を中心に据える

職業人として私たちが忘れてはならないのは、私たちの仕事の中心そして目的はあくまで「人間」であるということです。すなわち「人間に始まり人間に終わる」といってよいでしょう。たとえその間をつなぐテクノロジーやプロセス、手順の数が増えようとも、私たちの仕事の始まりと終わりには常に「人」がいます。

HRやワークプレースのテクノロジー化が進んだ未来では、このことがひときわ重要です。HRテクノロジーの中には既存の仕事を奪うものも、新たな仕事を生み出すものもあり、これらがひいては人間による労働の価値を本質的に変えることになるでしょう。たとえば、特定の業務に関わる「すべての」作業をマシンが代行できるようになったとします。すると、特にマシンと人間による仕事を横並びで比べたときに、その業務をこれまでとは違った基準、たとえば効率を最重要視するような形で評価することになるはずです。

だからこそ、仕事から人間らしさを失わないようにしなればなりません。常に人間中心で物事を考える視点を失ってしまえば、あとはビジネスが悪い方向に進むのを黙って見つめることしかできなくなるからです。

2.テクノロジーのインテリジェンスを過信しない

ワークプレースやHRへのテクノロジー導入が進むにつれ、私たちの生産性は向上し、より多くの仕事をより少ない人員で短時間にこなせるようになるでしょう。このようなHRテクノロジーによって、これまでは見つけることのできなかった人材にもより簡単に素早くたどり着けるようになるはずです。さらに、ワークプレースの文化をこれまで以上にコントロールできるようになることも期待されます。

しかし、これらのテクノロジーが幅広い新たな可能性をもたらすからといって、特にAIの能力を過信すべきではありません。AIという名称には知能を意味するインテリジェンスという言葉が含まれていますが、あくまでも人間とは「異なる」人工の知能であることを意識することが必要です。AIベースのHRテクノロジーは、私たちが仕事を行う上で過去のどんなマシンにも成し得なかったサポートを提供してくれますが、それでも単なるツールであることに変わりありません。その目的はツールとして人間に利用されることにあるのです。それは、たとえばハンマーが所詮ハンマーに過ぎないのと同じことで、釘を板に打ちつけるのに素手を使うよりも適しているとしても、けっしてあなたが望む家を設計できるわけではないことに注意してください。

重要なのは、こうしたインテリジェントなテクノロジーに何を行わせたいのか、その目的をはっきりさせることです。テクノロジーは、あなたやあなたの従業員、そして組織を補助するためにあるという原則を常に念頭に置きましょう。信用しすぎると、AIに必要以上の権限を与えかねず、アルゴリズムによる見かけ上のインテリジェンスを過剰評価することになれば、組織そのものが窮地に陥る可能性すら生じます。テクノロジーに権力と意思決定権を与えることは、そうした危険と背中合わせでもあるという認識が不可欠です。

3.バイアスの問題を理解する

バイアスの問題が存在することは、ここ数年でAIコミュニティはもとより、テクノロジー業界全体で知られるところとなりました。AIやマシンラーニングのような自律型のデジタルテクノロジーは、学習時に与えられた情報に偏りが含まれるという問題を抱えており、そのせいで不適切な振る舞いや判断を行う可能性があるのです。

バイアスの問題は、判断を下すアルゴリズムを実行するうえでの拠り所となるあらゆるデータに偏りが存在することから生じます。設計されたシステムは、何らかのタスクや特定の領域に最適化されているはずですが、実際にそのアルゴリズムやシステムを開発しソリューションに仕立てているのは、私たち人間や組織です。そして、それらの人間や組織は、自らの文化的背景や経験に依存するバイアスを必ず内包しています。そうしたバイアスを持つ人間や組織が、特定のタスクや目的に合わせてシステムの最適化を行う以上、それらのシステムから生まれたデータや出力もまた、バイアスの影響を受けることになるのです。

このため、バイアスに関する知識を得ることはもちろん、その存在を認め、システムを精査して積極的に見つけるよう努力し、適切に対処する必要があります。

仕事から人間らしさが失われれば、ビジネスにも悪影響

上記3つのステップを要約すると、仕事から人間らしさを失わないようにしなければ、ビジネスに悪影響が及ぶということです。インテリジェントなテクノロジーに意思決定権を与えすぎ、人間による監視を怠れば、重大な判断ミスにつながる可能性があります。同様に、プロセスや手順に含まれるバイアスに気付かなければ、会社がコンプライアンスの逸脱はおろか、法令違反を犯してしまうことにもなりかねません。あなたやチーム、そして会社にとって正しい行動をとろうとするならば、仕事を進めるうえで人間らしさをより重視することが最優先事項となるはずです。

ここで、記事の最初に述べた、知覚を持つオフィスビルと月曜日の出勤時の話に戻ることにしましょう。エレベーターが月曜の朝の憂鬱な気分を吹き飛ばすために披露した面白い冗談で笑顔になり、エレベータを降りたとき、あなたはオフィスビルが常に仕事のための環境を最適化しようとしていることに気付くでしょう。ビルが自らを最適化するのは、効率や持続可能性、安全性、セキュリティの向上を図るためだけでなく、組織で働く一人ひとりの健康やワークプレースの質の向上も考えてのことです。

そこで、今後見込まれる新しいHRテクノロジーや、素晴らしい進歩の真価が問われることになります。これらのテクノロジーを適切に利用することで、従業員だけでなく組織の文化に合わせてワークプレースの最適化をはかれるでしょう。そうすれば、AIベースのシステムは組織の価値の増幅器となりえます。このようなHRテクノロジーは、組織で働く一人ひとりにとって、その能力や個性を生き生きと伸ばす拡張機能の役割を果たすようになり、あなたのワークプレースでより人間らしさを重視するうえで役立つはずです。

 

この記事は Business2Community 向けにブライアン・ディビッド・ジョンソンが執筆し、 NewsCred パブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。