研究結果:高齢者とAIチャットボットの会話が弾むのは、会話の内容が深いとき

グーグルの元CEOであるエリック・シュミット氏やアイロボットのCTOであるヘレン・グレイナー氏をはじめとする優れた有識者たちは、将来的に会話型のAIが、日頃から孤独を感じているような高齢者のおよそ4割の話し相手となるだろうと予想しています。この予想が現実のものとなれば、健康面での変革がもたらされるといっても過言ではありません。なぜなら、高齢者は孤独だというだけで死亡リスクが26%高まり、認知症発症の可能性も64%上昇することがわかっているためです。

ロチェスター大学の研究者チームが高齢者とAIベースのチャットボットとのやりとりに関して調査した理由も、同じ理由からでしょう。コーネル大学が運営する論文共有サイトで公開された「有能な対話エージェントと複数の話題について対話した際の高齢者の会話の振る舞い」という論文内の同チームの説明によると、数週間にわたって定期的にチャットボットとやりとりを行った被験者は、日常的な話題よりも、より明確な目標のある話題に対して強い関心を示し、個人的な話題になるほど自己の内面をオープンにする度合いが強まったということです。

同チームによれば、この結果は、高齢者が話し甲斐のある会話を行って健康と生活の質を向上させるための「有益な習慣」やコーチングを、こうしたチャットボットが提供できる可能性があることを示しています。そして、論文の共同執筆者たちは「議論する話題やチャットボットの声のトーンによって、それを利用する高齢者の口数や感情、自己開示などがいかに左右され、さらにそれらが時と共にどのような発展を見せるかについて調査した」ことに触れ、その結果、「被験者は、より情動強度が強く、個人的な話題になるほどチャットボットとの関わりを深めようとした」と記しました。情動強度とは「個人が示す一時的で急激な感情の動きの典型的な強さ」を意味する専門用語です。

また、同チームは、34週間にわたって行われた80もの会話セッションから自動的に書き起こされた言語データについても分析しています。被験者となった9人のボランティアは、ペットや家族、天気、運転、家事、教育、テクノロジーなどの特定の話題に関する45個の質問からなる3つの短い会話セッションを合計1520分程度行ってからアンケートに答え、自身の言葉以外の振る舞いや発話の際の言葉のリズムと音の調子に関したフィードバックを受けました。

各分野の専門家によってこの調査実験用に提案された話題は、想定される情動強度のレベルに応じて「簡単」、「普通」、「高度」という3つの区分に分類されています。「簡単」な話題というのは、誰かと知り合いになろうとした際に持ち出されるようなタイプの話題です。そして、情動強度が上がるほど、より自己の内面をオープンにする必要が生じます。

研究の分析段階でチームが注目したのは、特に、セッションや被験者、話題によって異なる「口数」、および「時間経過に伴う口数の変化」です。それから、発話1回ごとの単語数などの指標や、肯定または否定の感情の発露に加え、セッションに対する情動、声のトーンの変化、自己の内面を表に出すきっかけについて調査が行われました。

その結果、どの区分の話題でもチャットボットの声のトーンはほぼ変えずにいたにもかかわらず、被験者が「普通」や「高度」に分類された話題について話すときには「簡単」な話題のときよりもトーンを強める傾向が見られたことを、チームは報告しています。また、「高度」な話題では発話1回あたりの単語数が多く、肯定あるいは否定的な情動や衝動がより多く現れたのに対し、自己紹介時や自分の活動について話すような「簡単」な話題では、人称代名詞がより頻繁に使われる傾向にあったことも指摘されました。

論文内でチームは、「人生の目標や加齢に伴う問題のように、より個人的な話題において被験者の口数が増える傾向にあったこと、そしてそのような話題ではより強い情動を示す言葉が使われたことが確認され、さらに、一連のやりとりが進むほど、被験者による応答の平均的な長さが伸びたこと」を指摘し、「これらの結果は、高齢者との会話において『高度』な話題を扱う場合にチャットボットが有効であるということを裏付けるものであり、被験者はより情動強度の高い、個人的な話題になるほど、チャットボットとの関わりを深めようとした」と述べています。

このように、AIベースのチャットボットは高齢者と深い内容の会話を行ううえで有効であることがわかりました。そして、年齢層や文化の異なる人々を対象にしても同様の結果が得られるかどうかを明らかにする拡大調査については、今後の研究に委ねられることになっています。

 

この記事は VentureBeat 向けにカイル・ウィガーズが執筆し、 NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。