異業種データ活用で、東京のビジネスエリアが生まれ変わる【後編】

前編からの続き)
登壇者の講演に引き続き、後半では進行を富士通の松木敦が務め、登壇者4名によるパネルディスカッションを行いました。(文中敬称略)

<ファシリテーター>
富士通株式会社
グローバルマーケティング本部
戦略推進統括部 グローバル戦略企画部
シニアマネージャー
松木 敦

異業種がフラットにデータを持ち寄り「共創」する機会はめったにない

 まず、今回の大丸有データ活用プロジェクトのきっかけについて改めてお聞きかせください。

佐野 丸の内は非常に高密度な街で、色々な活動が行われ、多くのデータが生まれています。三菱地所はデベロッパーという形で街のオペレーションをしており、非常にデータが集まりやすい企業だと認識していますが、このデータを十分に活用しきれていないという感覚がありました。

昨今では人口が減少したり、GAFAのような企業が業界の垣根を越えていたりしています。三菱地所も現在は賃貸料という形で収益を上げていますが、それも今後どうなるか分かりません。そのような危機感のもとで、データ活用は今後のイノベーションの核になるというのがベースの認識としてあり、今回のプロジェクトの発足につながりました。

大丸有データ活用プロジェクトによって生まれた新たな価値とは

 プロジェクト立ち上げの苦労について教えてください。

奥山 最初のメンバーを集めるのに苦労しました。基本的にはデータを出し合って、解析して何か面白いことをやってみませんか、という感じでお誘いするのですが、一度社内に持ち帰ると「やっぱりデータが出せません」ということが多々ありました。

池田 このプロジェクトは手探りでやっているところもありましたが、参加いただいた皆さんの熱意が最後まで落ちなかったのは良かったと思います。また、データジャケットという1つのフレームワークを皆さんで共有できたというのも非常に大きかったと思います。皆さんが信頼を寄せて下さったおかげで、手探りでもうまくスタートが切れました。

佐野 三菱地所としては、参画して非常に良かったと思います。12もの組織が一定の期間モチベーションをキープしつつ、かなりの頻度・密度で議論しながら形を作っていったこと自体に意義があると感じています。また、実際にデータを出し合って、色々な方とデータをかけ合わせたり、分析したりしたことに非常に大きな意味があると思います。

池田 富士通にも参画して良かったことは沢山あります。私たちはデータの流通や利活用というソリューションを起点にやっていました。「データジャケットを使うことでデータが出しやすくなるのでは」という仮説を持ってやってみて、実際にデータが集まってきたのは率直に嬉しかったです。また、データを組み合わせて新しい価値を生み出すという点で、全く専門性の違う方々が集まり、毎回議論をぶつけ合うことで新しい知見が生まれるというのが非常に大きな価値であると感じました。

大丸有プロジェクトを実際にやってみたからこそ見えてきた改善点とは

 プロジェクトをやってみて、改善が必要だと感じた点について教えてください。

奥山 例えば「色々な企業がデータを持ち寄ると自社だけでは分からない傾向が見える」とはよく言われていることですが、実際はそんな簡単ではないということが分かりました。そもそもこういう場にデータを持ち寄ることを目的としてデータを取っているわけではありませんから、データの粒度が違うことがあります。1分単位で取っているデータと1カ月単位で取っているデータをかけ合わせても意味がありません。データの利活用をしやすくするという点では、まだまだ改善点があると思います。

佐野 もう少し時間があれば、何か成功事例のような成果ができたんじゃないかと思います。あとは、データの粒度をどうするか、全てのデータの粒度を細かくして取るというのは現実的ではありません。今後はこの辺りを議論しながら、新しい方向性を見つけていければ良いと思います。

佐々木 今回のプロジェクトにおいては、「何を持って1つの成功とするか」の考え方において、三菱地所様と富士通では少しギャップがあったのかもしれません。三菱地所様のおっしゃる成功というのは、商業施設への送客や売上のアップということで、富士通が考える成功は、複数の業種が相互に価値を出し合ったり、相互に送客したりといったことでした。こうして、プロジェクトが終わってから色々とお話を伺ってみると、もっとシンプルで小さくても良いから成功事例が欲しかったというご要望がありました。意識のすり合わせもとても重要なことだと感じました。

さらに多くの企業からの参加と様々なデータを利活用した異業種共創を

 今回のプロジェクトは2018年12月でいったん終わりましたが、今後の展望についてお聞かせください。

佐野 今回はまずファーストフェーズ、まずはプロジェクトをやってみましたということです。次のステップとしては、小さくても何か具体的な、サービス化や事業化を視野に入れて皆が角を突き合わす形でやっていければと考えています。そういう視野を持ちながら、新しいデータを持っている企業にご参加いただければと思います。

佐々木 1つの方向性としてパーソナルデータがポイントになると思っています。今後、情報銀行という考え方が実現したときに、果たしてデータを実名で使うことにお客様が同意いただけるのかどうか。やはりセンシティブに扱う必要踏まえ、パーソナルデータは1つのキーとなるでしょう。

 小さくても何かしらの成果を出したいという話がありました。まだ抽象度が高いとは思いますが、アイデアレベルでこういうことがやりたいというのがあれば教えてください。

佐々木 相互に送客するということに1つの可能性があると思います。人流を見ても分かる通り、東京駅の存在はやはり大きいです。そこから丸の内エリアに人が流れてくるので、丸の内の各商業施設やホテルと、JR様とが連動して相互に送客しあってという形を想定し、そのために必要なデータを収集・分析して、実際に運用レベルまで進められたらと考えています。

 今後も、三菱地所様の取り組みを後方から支援し、様々な社会課題の解決に貢献できればと思います。本日はありがとうございました。

登壇者

三菱地所株式会社
街ブランド推進部
オープンイノベーション推進室 室長
佐野 洋志 氏

三菱地所株式会社
街ブランド推進部
オープンイノベーション推進室 総括
奥山 博之 氏

富士通株式会社
ネットワークソリューション事業本部
サービスビジネス事業部 事業部長
佐々木 泰芳

富士通株式会社
ネットワークソリューション事業本部
サービスビジネス事業部 LCMサービス部 シニアマネージャー
池田 栄次

<ファシリテーター>
富士通株式会社
グローバルマーケティング本部
戦略推進統括部 グローバル戦略企画部
シニアマネージャー
松木 敦