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スポーツビジネス新時代(後編)「ランニング人口2000万人を目指すエコシステムとは?」

富士通では、日本陸上競技連盟(日本陸連)と市民ランナーの裾野を広げる「JAAF RunLinkプロジェクト(RunLink)」に取り組んでいます。スポーツの発展を目指しICTでできること、そして、富士通の取り組みついて紹介します。
【Fujitsu Forum 2019 フロントラインセッションレポート】

前編の阪井に続いては、第二部では、RunLinkのチーフオフィサーであり東京マラソンレースディレクター早野忠昭氏が登壇。市民ランナーの裾野を広げる「RunLinkプロジェクト」について説明しました。

「RunLink」でスポーツの火が消えない世の中を作る

東京マラソンをはじめ、現在、全国各地で大きな大会が数多く開催されています。2007年は東京マラソンが始まった年ですが、ランナー人口は2012年をピークに下降気味です。我々はもう一度、上昇気流に変えて行こうということで、「RunLinkプロジェクト」を立ち上げました。

JAAF RunLinkチーフオフィサー
東京マラソンレースディレクター
早野 忠昭 氏

このプロジェクトの目的は、1500万人とも2000万人ともされている潜在的なランナーを今後増やしていこうというものです。市民ランナーの方々に「RunLink」に登録をしていただくことで、安全・安心なサービスを市民ランナーに提供し、個人ごとにどの大会に参加するのが良いのかといった情報などを提供していきます。市民ランナーのため、大会主催者のため、あるいは企業や団体のために、情報を共有できるコミュニティを構築していきたいと考えています。

「ランニング人口を2040年までに2000万人にする」と目標はあっても、日本陸連だけではどうにもできません。ICTパートナーの富士通をはじめ、スポーツに関係する製品を作っている企業と一緒に、パートナーとして協力しながらエコシステムを構築し、2000万人という目標を達成したいと考えています。

ただの「マラソンレース」ではなく、社会貢献に結びつくような取り組みに

我々は「More Than a Race」というミッションを掲げています。様々な大会に参加して、「記録は何分何秒でした」と単なる一過性のイベントで終わるのではなく、参加した市民ランナーの方々に「またこの大会に参加したい」と思ってもらえるようなサービスの向上に留まらず、大会自体が地域の中で欠かせない存在になるように育てていく、あるいは、そういう考え方をシェアして行くのが「RunLink」の役割です。

RunLinkが掲げる2つのミッション

例えば、チャリティなどで広く社会貢献していくことも考えています。東京マラソンで2019年に集まったお金は5億7000万円です。大阪マラソンでは1億8000万円。そのような数字を考えるとランニングを通して社会貢献は十分にできると改めて感じます。

もう一つのミッションである「More Than a Day」とは、走ることを通じて「いつもより少しだけ良い1日を過ごしましょう」というメッセージを込めた言葉です。また、「Fusion Running」という考え方も提唱しています。Fuseとは「融合」という意味です。ランニングは正直、きついものですが、「Fuse anything you like into running」(好きなものをランニングにくっつければできるよ)という考え方です。

「Fusion Running」のコンセプトは「ランニングライフスタイル」

例えば、「走った後のビールが美味しいから、そのために走っている」とか、「音楽を聴きながら走れば苦しさを軽減できる」とか。それが「Fusion Running」の形です。つまり、ランニングとライフスタイルの融合です。そして、スポーツビジネスを考えたときに、「Fusion Running」の重要なポイントは、その裏側に必ず企業がいるということです。

例えば、旅行と美味しいものとランニングをくっつけるという発想は、旅行会社であればそういう商品開発につながります。さら「Fusion Running」では、BtoBのビジネスが生まれてくる可能性も多いにあると思います。

2000や3000と言われる大会の主催者の人達に、一緒にやっていきましょうと呼びかけ、加盟大会を増やす取り組みをしています。日本には日本陸連公認のマラソン大会が現在、約200あり、そこで100万人が走っています。加盟大会は非公認大会ですが、我々の仲間として募っていきながら、加盟大会や公認競技会の参加者を含め、全国で市民ランナーを2000万人まで増やしていきたいと考えています。

「RunLink」をスポーツ産業成長のためのプラットフォームに

本セッションの後半では、早野氏と富士通の阪井が「RunLinkプロジェクト」をテーマにトークセッションを行いました。司会は日本テレビ放送網アナウンサーの佐藤梨那氏が務めました。

日本テレビ放送網株式会社
アナウンサー
佐藤 梨那 氏

―― 市民ランナーが参加できる大会が数多くあります。「RunLink」としてはどのように支援していくのでしょうか。

早野 我々は統括団体として、集客や魅力づくりに苦戦している大会がどうすれば魅力的な大会になるかをサポートしたり、あるいは、大規模大会しか加入できないような保険をRunLinkが包括で契約して、予算規模の小さな中小の大会にも利用できたりすることなどを考えています。東京マラソンのノウハウもRunLinkに提供をして魅力的な大会を増やしていきたいと考えています。マラソン大会にはそれぞれ状況が異なりますので、なかなか難しいとは思いますが、知恵を絞れば実現できることは必ずあると考えています。

阪井 ランニングファンが1番望んでいるのは、東京マラソンのような大会を数多くやるということだと思います。東京マラソンは大変な倍率で抽選しないと参加できません。ぜひ、東京マラソンを10回ぐらい開催していただければと期待します(笑)。

早野 さすがにほぼ毎月開催はできませんが、地方の大会を東京マラソンのように育てていく取り組みは進めていきます。「RunLink」は繋がっていくことと、シェアする考え方を持っています。東京マラソンだけではなく、小さい大会でも良いものが数多くあります。そういった小さくても良い大会の情報をシェアする仕組みとして「RunLink」があると思っています。

RunLinkをテーマにしたトークセッション

―― 阪井さんからRunLinkプラットフォームの機能について説明していただけますか。

阪井 ランナー人ひとりからランニングIDを取り、その人の大会の記録や大会のエントリー履歴、あるいは走行距離、走行時間など、ランナーにまつわるいろんなデータを一元的に管理するプラットフォームです。
このデータをベースにしてランナー向けにトレーニングの支援や、大会のエントリーをサポートする。あるいはランナーに合った大会をレコメンドしたり、ランキングを表示したりする機能も備えています。ランキングが出るとすごい励みにもなると聞いています。

「RunLink」が広がっていくと、大会の主催者運営のサポートなどもプラットフォームを通してできるようになります。例えばマラソンを走るときの出走の順番を、過去の実績から位置を決めるということも、データに基づいてできるようになります。また、賛助会員となった企業には、それらのデータをマーケティングに活用していただくことを考えています。

早野 賛助会員という形を取らせていただいたのは、通常のスポンサーでは1業者1社という制約がでてきてしまいます。そういった制約をなくし、1つの業種に何社でも我々と一緒に動いて、スポーツを盛り上げたいという企業の方々を多く集めようとの考え方からです。
ランニングをベースにライフスタイルを考えたとき、旅行もあればファッションもあり、いろんなサービスが生活を取り巻いていることがわかります。多くの企業がランニングを通じてサービスを提供していくことが活性化されると、よい循環が生まれると考えています。

阪井 「RunLink」は、広くオープンなプラットフォームとして、いろいろな企業に参加していただきたいですね。そして、ぜひ2000万人のランナーの皆様に向けて、様々なサービスや商品を提供できるような大きなプラットフォームへと育てていきたいです。そういう世界をぜひ創り出していきたいと考えています。

―― 企業の方々がどんどん結びつきを強めていくことに、どんな可能性を感じていますか。

早野 大会とランナーに対するサポートがより充実していくと同時に、登録したランナーの方々に向けて様々なサービスや商品を提供するビジネスが拡大していくでしょう。

―― 2040年までの目標、長期的なビジョンをお聞かせください。

早野 世の中の流れを見ると、2020年に向けてという流れになっていますが、2020年の後が重要です。東京マラソンもそうですが、レガシーという考え方の中で「何を残すのか」。せっかくのスポーツの火が消えないような世の中を作っていかなければいけないと考えています。

ランナーの方々も大会主催者も企業も本気で取り組み、私たちの取り組みを理解してくださる人たちを増やしていく。それが当面の課題だと思っています。2000万人のランナーを掘り起こし、企業を巻き込んで行くことが我々のミッションです。

阪井 ランニングプラットフォームである「RunLink」には、パーソナルデータストア(PDS)という仕組みの導入を考えています。一例を挙げると、Aさんであれば、自分のデータをどの賛助会員に提供するのかを指定できるのです。例えばそれが、好みのサプリメントや薬を提供してくれる賛助会員であったり、お気に入りのシューズのスポーツメーカーなどには個人のデータを提供するという選択ができるようになります。要するに、データの主導権がランナー側にあるのです。データの個人情報をしっかりと守りながら、データをマネジメントする仕組みをRunLinkプラットフォームに搭載できれば、と考えております。

データを提供する個人にデータ管理の主導権があるPDS

早野 当然ですけど大会の記録をはじめとする情報は、個人のものです。今まで大会の記録は、大会や特定のサービスごとにバラバラにある状況で、RunLinkがそれらひとつに集めて、ランナー個人に返していくということをしていきます。

―― データの提供先を自分で指定できるのは安心です。ますますランナーの方々に活用されそうですね。

阪井 賛助会員の企業から良いサービスを提供してもらえるとなれば、ランナーの方々も自分の情報を提供していくようになるでしょう。そういう良い循環でできると思います。
将来に向けては、まずは、このRunLinkプラットフォームをしっかりとランナーの方々やスポーツ産業の中に浸透させていきたいと考えています。

早野 経済産業省、スポーツ庁などとも協力して、スポーツ産業のさらなる拡大という、日本の作業会の課題の一つともいえることに挑戦していく、そのためのプラットフォームになれれば素晴らしいと考えています。

阪井 まさにその通りですね。本日は誠にありがとうございました。

登壇者

JAAF RunLinkチーフオフィサー
東京マラソンレースディレクター
早野 忠昭 氏

日本テレビ放送網株式会社
アナウンサー
佐藤 梨那 氏

富士通株式会社
執行役員常務
東京オリンピック・パラリンピック推進本部
スポーツ・文化イベントビジネス推進本部 担当
阪井 洋之