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スポーツビジネス新時代(前編)「革新をもたらすスポーツICT」

富士通は、スポーツ産業の成長にICTで貢献するため、スポーツICTに注力しています。さらなるスポーツ産業の発展を目指し、日本陸上競技連盟(以下、日本陸連)との「RunLinkプロジェクト」をはじめとする、ICTがスポーツの未来を切り開く事例を紹介します。
【Fujitsu Forum 2019 フロントラインセッションレポート】

二部構成となる本セッションの第一部では、富士通執行役員常務の阪井洋之が、富士通が取り組むスポーツICTについて講演しました。

まだ伸びしろのある日本のスポーツ産業をICTでどう成長させていくか

2019年は日本のスポーツ界にとって、重要で忙しい1年になります。今年から大規模なスポーツの国際大会が日本を舞台に次々と開催され、富士通はICTによる貢献はもとより、大会の成功に向け、精力的に活動していきたいと思っています。

富士通株式会社
執行役員常務
東京オリンピック・パラリンピック推進本部
スポーツ・文化イベントビジネス推進本部 担当
阪井 洋之

さて、なぜ富士通がスポーツICTに取り組むのか、その背景についてお話しします。 まずは、「スポーツ産業はマーケットが大きい」ということです。アメリカの市場は約50兆円。これはアメリカの自動車のマーケットとほぼ同規模です。対する日本はアメリカの10分の1程度の5兆5000億円。市場規模がGDPに占める割合でも、アメリカの3%に対し、日本は1%です。こうしてみると、日本のスポーツマーケットの今後の伸びしろが大きいことを示していると思います。

アメリカのスポーツビジネスは自動車のマーケットと同じくらい大きい

また、「スポーツ産業は成長性が高い」ということも背景にあります。海外の野球、サッカーのビジネス規模はこの20年で大変な成長を遂げました。一方、日本のプロ野球、Jリーグの規模は、増加傾向にありますが、欧米との差は年々開いているという状況です。これもまた、日本のスポーツ市場もまだまだ成長できる可能性があると言えるでしょう。

それでは、このような差はなぜ生まれたのでしょうか。その要因は大きく3つあると考えています。

1つ目は欧米では「スポーツのエンターテインメント性が格段に上がってきている」ということ。2つ目は「選手強化やファン拡大に積極的にICTが活用されている」こと。
そして3つ目は「周辺産業との連携」です。
アメリカではスポーツが周りの様々な産業とつながってチケットや放映権以外のビジネスに広がっています。特にスポーツと観光が連携するスポーツツーリズムなどは地域活性化につながっています。

もちろん、日本のスポーツ産業発展への取り組みもここ数年、大変進んできています。2015年10月にはスポーツ庁が発足。2017年4月からは数値目標も設定されました。

その目標の1つは、日本のスポーツ市場5.5兆円を2025年には約3倍の15兆円に伸ばすこと。もう1つは成人の週1回以上のスポーツ実施率を、2022年には65%にすることです。

スポーツを「見る」人、「する」人の実態を独自調査

このようにスポーツ産業の成長が期待される一方で、国民一人ひとりのスポーツに対する関心・意識はどのようなものでしょうか。富士通では2019年4月に約2000人の社会人を対象に『「見る」「する」スポーツ実態調査』を実施しました。「見る」スポーツにおいて、「4年前と比較して『見る』人が増えた競技」を調べたところ、その結果からスポーツ業界がファンを増やすための重要なポイントがわかってきました。

1つは「日本の選手が世界と戦える実力をつけている」ということ。もう1つはプロリーグ化を含めて「エンターテインメント性が格段に上がっている」ことです。ファン獲得のキーワードは「選手強化」「エンターテインメント」。この2つです。

世界トップクラスの選手が登場すると、「見る」人も増える

一方、「する」スポーツの方はどうでしょうか?アンケート調査では継続してスポーツに取り組んでいる人は58%、約6割弱の人が週1回ぐらいスポーツをしているという結果でした。さらに、これから始めたいという人を含めると約8割の方がスポーツをしたいと考えています。
スポーツ庁の目標値である65%達成のためには、「意欲はあるけど自分でスポーツをするのはまだ」という人の背中を押すような取り組みと施策が必要になってくると思います。

その競技人口拡大のためのキーワードは「エコシステム」だと考えています。これからゴルフを始めようとする人を例に考えてみましょう。まず、YouTubeの動画でフォームやコースのまわり方を勉強し、次にゴルフのレッスンに通い、それから自分に合ったゴルフ道具やウェアを購入します。そして、初心者向けコースを探してゴルフ場デビューを果たす、という一連の流れが、一例として考えられると思います。

このように、一つのことを始めるということは、関連するサービスや商品を提供する様々な企業のエコシステムを利用するということになり、競技者を増やしていくためには、業界としてこのエコシステムが盛り上がりを見せることが重要です。

このことから、スポーツ産業の発展には3つのキーワード、「エンターテインメント」「選手強化」「スポーツエコシステム」が重要だと考えています。

スポーツ産業発展の3つのキーワード

それでは、これより、スポーツソリューションの事例を2つの切り口でご紹介します。
1つ目は「テクノロジーで高めるエンターテインメント、選手強化」の取り組みです。

2018年11月、国際体操連盟より、富士通の「採点支援システム」の導入を決定いただきました。今後の国際大会より「採点支援システム」を導入し、順次拡大する予定です。まず、国際体操連盟主催の世界選手権やワールドカップで導入します。すると、各国のナショナルトレーニングセンターや900を超える国際体操連盟加盟チームにトレーニングシステムとして導入が進むことになります。

野球の選手、球団向けには映像検索サービスを提供しています。これは、選手が自分や対戦相手のプレイを手軽に検索でき、分析に活用することができるサービスです。
様々なシーン、条件、カメラアングルの映像検索を同時に行える便利さがあることが、球団のスカウト、監督、コーチの目に留まり、国内外の球団に採用されています。クラウドを通じたサービス提供により、いつでもどこでもモバイル端末で検索・閲覧ができるようになります。

「Windsurfing Lab(ウィンドサーフィンラボ)」は、ウィンドサーフィンのトレーニング支援と大会観戦、運営支援の機能を持ったソリューションです。セイルにカメラやGPS各種センサーを搭載することによって、トレーニング時には、感覚に捉われない客観的なデータ分析が可能になり、大会時においては観客席から見えない沖合のレースの様子をCG化し、リアルタイムに観客へ伝えることができます。さらにGPSで自動追尾させたドローンのカメラで撮影したライブ映像との切り替えも簡単にできます。
(「Windsurfing Lab」 https://blog.global.fujitsu.com/jp/2017-07-07/01/

スポーツ観戦における第3の収益源の創出に向けてB.LEAGUEと共同で取り組んでいるのが「ライブ・ビューイング」です。2019年1月のB.LEAGUEオールスターゲームの本戦は富山の会場で行われましたが、我々は東京の品川で次世代型ライブ・ビューイング、「B.LIVE in TOKYO2019」を開催し、約1000万名のお客様に盛り上がっていただきました。
このライブ・ビューイングは、「ホームゲームのチケット収入」「放映権収入」に続く、新たな「第3の収益源」を生み出します。今後、専用会場・スポーツバー・シネコンといった幅広いサービスメニューでの事業化を予定しています。

いま、バリアフリー社会の実現が大きなテーマになっています。富士通では聴覚障害者の方にスポーツ観戦を楽しんでもらおうという取り組みを進めています。そのひとつが、「Ontenna(オンテナ)」というサービスです。(Ontenna https://ontenna.jp/

「Ontenna」はヘアピンのように装着し信号と光によって音の特徴をユーザーに伝えるデバイスです。この「Ontenna」によって耳が聞こえない方も健常者の方も全員が楽しめるスポーツ観戦となります。こちらは、スポーツ観戦だけではなく、聾学校での教育現場やコンサートなどでの展開を予定しています。

個人のライフスタイルに合わせ ランニングを楽しめるRunLinkプロジェクト

次に「データで繋げるスポーツエコシステム」に関する話をします。
スポーツ競技団体からすると競技者やファンの拡大、地方自治体にとっては地域の活性化、スポーツ関連企業にとってはビジネスの拡大が目的です。

まず、ご紹介するのは日本陸連のプロジェクト「JAAF RunLink(以下、RunLink)」です。「RunLink」とは日本陸連が市民マラソン大会の統括・支援を行い、個人のライフスタイルに合わせてランニングを楽しめる環境を提供し、2040年にランナー人口2000万人への拡大を目指す世界初のプロジェクトです。

このプロジェクトに富士通はICTパートナーとして参画しており、ランナー1人1人にIDを発行して、ランナーに関わるデータを一元的に管理する「RunLinkプラットフォーム」を構築します。一般的にはDMP(データマネジメントプラットフォーム)と言われているもので、プラットフォームに蓄積されたデータを活用してランナーや大会主催者、プロジェクトの賛助企業向けにさまざまなアプリケーション、サービスを提供します。

個々のランナーのデータを一元管理できる「RunLinkプラットフォーム」

「RunLink」は専用のシステムとしてプラットフォームを構築しているケースですが、リーズナブルで汎用性の高いクラウド型のソリューションとして「SmaSpo(スマスポ)」というサービスを提供します。

スポーツ競技団体にはCRM活用による集客を、来場者・観客にはe-チケットやクーポン獲得、スタンプラリーにより、楽しくスマートな観戦と観光を、自治体にはスポーツイベントと観光地を結び地域活性を生み出します。2019年の夏頃にサービスを開始いたします。

このように、富士通のソリューションはさまざまな競技への展開が可能です。

これら「テクノロジーで高めるエンターテインメント、選手強化」、「データでつなげるスポーツエコシステム」を中心とした、幅広いテクノロジーにより、富士通はお客様とともにこれからもスポーツ産業の発展に貢献します。

後編「RunLinkプロジェクト」に続く

登壇者

富士通株式会社
執行役員常務
東京オリンピック・パラリンピック推進本部
スポーツ・文化イベントビジネス推進本部 担当
阪井 洋之