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総務省が旗を振る「ローカル5G」、地域展開に向けた取り組みとは

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今、大きな注目を浴びている「5G」。実用化に向けて、地域の課題解決のために独自の5Gネットワークを活用する「ローカル5G」が注目されています。ここでは、5Gで人々の暮らしを豊かにする総務省の取り組みを紹介します。
【富士通フォーラム2019 カンファレンスレポート】

様々な成果やビジネスチャンスを生む「5Gの地域展開」

総務省
総合通信基盤局
電波部移動通信課長
荻原 直彦 氏

携帯電話は概ね10年ごとに世代交代しています。現在、多くの人が4Gネットワークを活用し、コンピュータと同じくらいの性能を持つスマートフォンを使っています。世代が変わるごとに通信速度の向上が図られ、最大通信速度は、30年間で約10万倍にも進化しています。第4世代の携帯電話やモバイル系サービスを合わせると約1億7000万件以上の加入状況となっています。

5Gの大きな特徴は「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」の3つです。「超高速」は、従来までの世代でも開発が進んできましたが、これまでとは特に違うのが「超低遅延」と「多数同時接続」です。ネットワークでやり取りする時に発生する時間差を極限まで小さくし、高精細な映像を素早く送ったり、様々な端末が通信機能を持ち、多数かつ一度に接続したりすることが可能になります。新しい2つの通信技術が加わることで、これまでの携帯電話の発展とは異なり、新しいビジネスへの期待が高まっています。

5Gの特徴は「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」

5Gに関して私たちが念頭に置いているのは、「いかに早く地域に展開し、地域の課題解決やビジネスの発展に役立てられるか」ということです。5G/IoT時代では、サービス提供の対象領域が広がり、これまで主流だった通信サービスだけでなく、別の業界と結びつくことで、様々な成果やビジネスチャンスが生まれたり、ビジネスが効率化されたりすることが期待されています。

5Gネットワークで、人々の暮らしはどう変わるのか

5Gへの期待の大きさは、海外での実用化時期の計画が前倒しになっているところにも表れています。米国や韓国はスマートフォンを使ったモバイルサービスを2019年4月から開始しています。EUでは2020年に全加盟国でサービス展開を開始することを目指しています。各国ができるだけ早くという意識を持って取り組んでいるのが現状です。

日本では2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会までに5Gを商用化することを目指して取り組んできました。各通信事業者は2019年のラグビーW杯までにプレサービスを開始する計画で、2020年春には商用サービスが始まる予定になっています。

5Gによって超高速化や大容量通信が実現することで、これまでよりも大量の映像データを配信することができます。例えばスポーツ観戦では、スタジアムに設置した多数のカメラの映像を手元のスマートフォンで受信し、自分の好きなアングルで観戦できるようになります。ネットワークへの負荷がかかるため、5G技術によって初めて実現できるものと言えます。

また、5Gの特徴である「超低遅延」も、多くの人の暮らしを大きく変えることが期待されています。例えば医療現場では、都市部まで行かなくても、近くの診療所で専門医のアドバイスをもらえる遠隔診断や、超低遅延通信による高精細映像を用いた遠隔手術などの実現が期待されています。

農業でICTを活用する「スマート農業」も期待されます。センサーを張りめぐらせたり、ドローンを飛ばして、作物の生育状況をチェックしたり、作業管理を自動化することにより、高齢者が農業を続けることなどが期待されます。

建設分野では、ドローンを活用した高精度な測量や建機の遠隔・自動操縦などで、建設現場の仕事のやり方を変えることが期待されます。さらに、災害時の被災状況の把握や救命活動などに必要な情報を、より細かく正確でかつ迅速に得ることができると期待されています。映像に加えて音声も遅延なく一挙に送れることが5Gの強みでもあります。

地方では路線バスなどの交通手段がどんどん減少している現状があります。決まった路線、決まったレーンである程度行先が決まっているような、高齢者の移動手段を確保する上でも5Gが役に立ちます。自動運転そのものはカメラやセンサーの技術で実現可能ですが、緊急時に中央管理センターで対応したり、通信やセンサーなどの技術と組み合わせて周辺情報をリアルタイムで車内に送ることも5Gで実現できます。

ショッピングセンターでは、多数接続や低消費電力などに対応したセンサーにより、無人店舗において簡単に決済できるなど、買い物がより便利になるでしょう。

「地方で5Gが使える環境」をいち早く整備できることを重視

総務省では、2020年の5Gの商用サービス開始に向け、2017年度から3年間、研究成果を実際のフィールドで活用する実証実験「5G総合実証試験」を行っています。

実証実験は、様々な利用の仕方を想定して「本当に5Gが使えるのか」「使うためにどんな課題があるのか」などを浮き彫りにしながら進めています。これまでは技術検証がメインでしたが、地域でどれだけ有効に活用してもらえるかが重要なので、2018年末から2019年初めまでにアイデアコンテストを実施しました。785件もの提案を受け、地域における5Gの活用に関するアイデアが多数出てきました。

これらのアイデアは、2019年度の実証実験に取り込む予定で準備を進めています。また優秀賞の案件以外にもビジネスのアイデアになるような提案が多数あったため、総務省のサイトではその一部を紹介しています。

5Gの周波数をNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク及び楽天モバイルに割当て

5Gの周波数は「3.7GHz帯」「4.5GHz帯」「28GHz帯」の3種類あります。3.7GHz帯、4.5GHz帯は電波の特性が似ているので、両周波数帯で100MHz幅を6枠確保し、28GHz対で400MHz幅を4枠確保して計10個の枠を設定しています。それ以外にも自営用で利用できる割当枠を設けています。

割り当てに際しては、「各地域で5Gネットワークが利用できる環境をいかに早く構築できるか」を最優先で考慮しました。4Gの電波割当てでは「人口カバー率」を条件にしたため、人口が多い都市部からの整備が中心でした。

今回は、必ずしも都市部ではなく、地方から展開することを念頭に、「面積カバー率」を採用しました。これは全国を10キロ四方のメッシュに分割し、約4500メッシュを対象に都市部・地方部を問わず広範にカバーする方法です。1つの親局を整備すれば、その10キロ四方のメッシュを整備したことにしました。

そして、全国および各地域ブロック別に「5年以内に50%以上のメッシュで5Gの高度特定基地局を整備すること」を条件としました。また、2年以内に全都道府県でサービスを開始するなど、できるだけ早いタイミングで、「地方で5Gが使える環境」を整備することを要請しています。

こうした前提条件で事業者を募ったところ、4社から開設計画の提出とともに申請がありました。まず、申請者が「絶対審査基準(最低限の要件)」に適合しているかを審査し、絶対審査基準を満たした申請者の申請に対して、希望する周波数枠が競合する場合は比較審査を実施しました。評価点数の高い事業者から順に希望する周波数枠を割り当てました。その結果、2019年4月10日に、3.7GHz/4.5GHz帯の6枠については、NTTドコモ、KDDIに2枠、ソフトバンク、楽天モバイルに1枠を割り当て、28GHz帯の4枠を各社それぞれに割り当てました。

周波数の割り当て状況

開設計画の認定にあたっては、インフラ整備の充実、災害時の事前の備え・事後対策における安全性・信頼性の向上、サプライチェーンリスクを含むサイバーセキュリティ対策を講ずることなどを条件としています。また、まだ携帯電話が全くつながらない不感地域における基地局の着実な開設に努めることも含まれています。

地域での利活用促進を目指し、「ローカル5G」をルール化

全国キャリアによるエリア整備と地域での利活用促進を両輪で進めるため、「ローカル5G」のルール化を進めています。ローカル5Gとは、地域や産業の個別のニーズに応じて、地域の企業や自治体などの様々な主体が柔軟に構築できる5Gシステムのことです。

通信障害や災害が発生した際、独自のネットワークを構築していれば、他の場所の通信障害や災害、ネットワークの輻輳などの影響を受けにくいこともあります。そうした観点のニーズに応えられるのがローカル5Gの特徴です。さらに、まだエリア展開がされていない地域でも、いち早くシステムを構築・導入する際の有効な手法でもあります。

ローカル5Gは、4.6~4.8GHz、28.2~29.1GHzの周波数を利用することを想定しています。その中でも、他の帯域に比べて検討が既に進んでいる28.2~28.3GHzの100MHz幅について、先行してルール化を進めています。

ローカル5Gは、当面は屋内、または自分の敷地内で使うことを基本に考えています。最初にリリースする100MHz分に関しては2019年内、残りの帯域も1年ほどかけて制度化できるように審議会で審議を進めてもらっています。また、周波数によっては、ルール化が難しい面もありますので、できるところから導入を始めていけるように検討しています。

ローカル5Gの実現に当たっては、4Gの技術と組み合わせてシステムを構築することが有効です。このため、「地域BWA」の帯域を自営システムでも使えるようにすることを合わせて検討しています。

ローカル5G活用の可能性は幅広い

ドローンによるスマートフォンの上空利用も実現間近

その他の移動通信システムの最近の動向としては、LTE方式のデジタルコードレス電話の利用できる電波を拡張するための検討を開始しました。2019年秋には審議会の中で方向性が固まるよう審議をお願いしています。

また、最近ニーズが多い「ドローンによる携帯電話の上空利用」に関する検討も進めています。ドローンにスマートフォンと同じ無線機能を搭載し、稲の生育情報や災害時の被災状況を調べ、その映像をそのまま携帯電話のネットワークに送るというものです。

ただ、そのまま上空で携帯電話の電波を用いると、他の基地局と混信を引き起こし、地上の携帯電話が通じにくくなるなどの影響を及ぼす可能性があります。そこで、これまでは個別に無線局の免許を取ることが必要でした。
このような中、現在、スマートフォンが上空に上がると自動的に出力を調整する「送信電力制御機能」の搭載が検討されています。

この機能を用いると混信の問題が起きにくくなることが分かったため、ユーザーがドローンを利用する前にネットで簡単に申し込みができる仕組みを2020年を目処に実現できるように検討を始めています。
総務省ではIoT、5G時代を迎え、皆様にできるだけ便利に通信を利用していただけるように環境整備を進めていきたいと考えています。

登壇者

総務省
総合通信基盤局
電波部移動通信課長
荻原 直彦 氏