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【現場レポート】「Fujitsu Forum」で見た“DX”テクノロジーで描く未来構想

富士通のビジョンや戦略、ソリューションを一挙に紹介する1年に1度の大型イベント「Fujitsu Forum」が5月に開催された。業種・業界を問わず、デジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に進む中、それを実現するための主要なテクノロジーと未来構想を、インダストリーや働き方改革などの多様な切り口で紹介していた。

今回、その場にNewsPicks初代編集長でNewsPicks Studios CEOの佐々木紀彦が訪問。富士通の首席エバンジェリスト、中山五輪男氏とともに取材した。富士通が目指す世界、そのためのテクノロジーを佐々木はどう見たか。

VISIT 1 5G

中山 佐々木さん、今日はよろしくお願いします。まずは5Gからぜひご覧ください。
佐々木 よろしくお願いします。5Gは自分の仕事にも関わっているので、すごく興味があるんです。

中山 「自分の仕事にも関わる」と言いますと?

佐々木 ちょうど1年前に、NewsPicks Studiosという映像プロデュース会社を立ち上げまして、動画にはここ数年、かなり力を入れています。高速・大容量・低遅延の5Gインフラが普及すれば、リッチコンテンツが今よりも流通するようになりますよね。

その一つとして位置づけられるのが映像。4G、LTEの登場によって、映像コンテンツはかなり広まりましたが、今以上に元気になるでしょう。映像コンテンツ黄金時代がくると確信しています。さらに、エンタメコンテンツだけではなくて、教育や医療などさまざまなシーンで活用される可能性が高いですから。

中山 その通りですね。5Gというと、「通信キャリアのビジネス」という見え方がするかもしれませんが、お客様は高速なネットワークだけを欲しいわけではありませんよね。

ネットワークは手段であって、欲しいのは課題を解決する、欲求を満たすためのソリューション。富士通はネットワーク技術を活用したITソリューションをたくさんの企業に提供してきた実績がありますから、5Gでも過去にはないイノベーションを起こすソリューションを提供できればと、スタート前からさまざまな準備を進めているところです。

佐々木 富士通は、キャリアの基地局向けのビジネスもできるし、企業や自治体向けのソリューションビジネスもある。ビジネスチャンスが大きいですね。

中山 ネットワークインフラの刷新という話が出ましたが、「ローカル5G」って言葉、佐々木さんご存知ですか。地域や様々な産業分野の個別ニーズに応じて、専用のネットワーク環境を企業や自治体が独自で構築できるようになるんです。

ローカル5Gの代表的な適用エリアには、工場、病院、スタジアムがありますが、たとえば、ある地方では高齢者が多いのに、医者も病院も足りていないとしますよね。そうした場合に、自治体や地元企業が独自の5Gネットワークを構築し遠隔医療を実現するといったことができるんです。

佐々木 それは、トータルソリューションを持つSIerとしての富士通の強みが生きそうですね。

今は5Gというワードが先行していますが、具体的にどんな新サービスが生まれるのかはまだイメージが湧かない人が私も含めて大半だと思います。

VISIT 2 AI Technology

中山 今、AIの普及において問題視されているのが「AIのブラックボックス問題」なんです。

佐々木 詳しく教えてください。

中山 AIを活用して何らかの答えを出した時、どのような根拠をもとにしたのか、どのような「思考プロセス」を辿ったのかを説明するのは、ディープラーニングの世界では困難な部分が多い、いわば「ブラックボックス」なんですね。

企業で利用する場合、根拠が不明確な答えには信頼性が無く、活用するのに勇気が必要です。だから今、各AIベンダー各社は透明性のあるAIの開発を積極的に行っています。

佐々木 富士通のアプローチは?

中山 「説明可能なAI」というコンセプトで世界初の技術を開発したんです。説明可能なAIとは、ビッグデータの因果関係を分析して、導き出した答えについて合理的な理由と根拠を提示しながら、人間が理解・判断できる形で説明ができるものです。

その中で、富士通は、判定結果の理由を説明する「Wide Learning」「Deep Tensor」といいう機械学習技術と、判定結果に対する根拠や証拠を提示する知識処理技術「Knowledge Graph」を開発し、“説明可能性”を実現したんです。

佐々木 企業にしろ公的機関にしろ医療機関にしろ、何か重要な判断を下す際にAIのサポートを受けようとした時、根拠が分からないと信憑性にかけます。医療の場であれば命に関わりますので、とくに重要です。その意味でも、説明可能性というのはキーワードになりますね。

中山 AIを語るに当たって、もう一つ見逃せないテクノロジーが大量のデータをいかにして処理するかというコンピュータパワーの問題。次世代のコンピューティングとして注目を集めているのが量子コンピュータだと思いますが、まだ量子コンピュータは実用に乏しいといえます。

そこで富士通は「組合せ最適化問題」に特化した、量子のふるまいをデジタルで再現する汎用コンピュータ「デジタルアニーラ」というテクノロジーを開発しました。

佐々木 さまざまな制約の下で数多く存在する選択肢の中から、最も効果的な組み合わせは何かという答えを導き出すという考え方ですね。データが大量であればあるほど、有効な回答が得られる一方で、コンピュータリソースも必要になります。

中山 そう。創薬、素材開発など大量データの組み合わせを高速、短時間で処理することができれば、過去にはない新発明が生まれるかもしれない。でも、今はコンピュータリソースの不足が問題で実現できいないことが多いです。

量子コンピュータでは、その課題を解決するシステムとして期待されているんですが、まだ道半ば。そこで、富士通は量子コンピュータ並みの処理能力を得られる技術を研究し、それで生まれたのが「デジタルアニーラ」なんです。

VISIT 3 製造~Digital-Twin~

中山 今回のイベントでは、テクノロジー別での展示だけでなく業種ごとにデジタルトランスフォーメーションを支援するソリューション群をまとめてご紹介しています。その中でも、一つ、見ていただきたいのが製造業です。

製造業で今キーワードになっているのが「Digital-Twin(デジタル・ツイン)」という言葉なんです。デジタル・ツインとはそのまま「デジタルの双子」の意味。フィジカル空間の情報を、IoTなどのテクノロジーを活用して、ほぼリアルタイムでサイバー空間に送り、サイバー空間内にフィジカル空間の環境を再現するという概念なんですね。

佐々木 私はデジタルツインという言葉を知らなかったんですが、物理環境をそっくりそのままサイバー空間上に創り出すという発想は非常に興味深い。富士通自体がモノ作り企業ですから自身の経験を生かせるでしょうし、製造業はIoT、AIといったテクノロジーの活用範囲が広く深い。

中山 リアルと同じ環境をデジタル世界に作って、デジタル世界でシミュレーションさせて、数分後、数十分後に何が起きるかを把握して、それをリアルの方に反映させるっていう、これからの新しい製造業の潮流になると思っています。

VISIT 4 Retail Technology

中山 インダストリーカットでもう一つ見てもらいたいのが、小売です。

ここでは、キャッシュレス決済の無人店舗を紹介しています。カートに備え付けたスマホでバーコードを読み込み、登録した決済方法から引き落とされるというシステムで、セキュリティ確保のために、富士通の生体認証技術の手のひら静脈を使えば、セキュリティと利便性を確保したかたちで買い物ができるんです。

佐々木 これは便利ですね。せっかちな私にはぴったりです。スーパーでだらだらと並ぶようなムダな時間は一気に減るでしょう。

Amazon Goをはじめ海外企業の取り組みが目立っていますが、ぜひ富士通など国内企業からも世界に広がるようなソリューションをどんどん出してもらいたいですね。

VISIT 5 Cross Industry(ブロックチェーン)

中山 佐々木さん、一通りご覧になっていただいて、興味をもった部分は何ですか。

佐々木 業種やシステムを横断して個人からパーソナルデータを預かり、預かったデータを個人に代わって管理・提供し、得た利益を個人に還元する新たな仕組み「情報銀行」には可能性を感じます。

一人ひとりが持っている、または企業が持っている情報をどう扱っていくかっていうのは、ものすごく戦略的なことだし、今後伸びしろがある分野だと思います。もうちょっとカッコいいネーミングだとなおいいですね。

今回のイベントでは「トラスト」を掲げられているの印象的でした。これからはセキュリティやデータの誠実な扱いを含めた「信頼」が企業の競争力を高める一つの武器になるはずですので。

中山 おっしゃるとおりで、先ほどのデジタルツインの話とも関係するんですが、今後はあらゆる物質や行動がデジタル上に再現されるようになると思います。そうなると、便利になるでしょう。

その一方で、リスクも高まる。だからこそ、安心・安全を守るためのソリューションはより一層注目を集めるでしょう。だから、今年のテーマとして「Driving a Trusted Future」を富士通は掲げているんです。

Overview

中山 すべてではありませんが、今回「Fujitsu Forum」をご覧になっていただいて、佐々木さんの率直な感想を聞かせてください。

佐々木 実は私、前職の東洋経済新報社、『週刊東洋経済』の記者時代に富士通を担当していたことがあったんですよ。

当時はハードウェアとシステムインテグレーションが主な業務内容でしたが、そこに新しいソリューションを加えて、SIerという枠組みを超えることが問われているなあとあらためて感じました。ブランド戦略を含めて、富士通は新しい姿を世の中に見せていく戦略が大事になりますね。

メディアで取り上げられるのは、個人向けのソリューションが大きいですが、BtoBこそ日本企業の強みが活かせる分野です。ぜひ富士通には、企業や公的機関のインフラの変革を通じて、新しいソリューションや社会の形を描いてほしいですね。

中山 そう言っていただけてありがたいですね。私の職種は、エバンジェリスト。富士通が持っているテクノロジーやソリューションをより多くの人にわかりやすく伝えることが仕事です。もっと我々のテクノロジーやソリューションが、社会に貢献していることを知っていただけるように頑張りますよ。

(取材・編集・構成:木村剛士、撮影:森カズシゲ、デザイン:黒田早希)