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市場規模1兆ドル超 !? 5Gのグローバル動向とこれからの産業

メインビジュアル : 市場規模1兆ドル超 !? 5Gのグローバル動向とこれからの産業

いよいよ世界各国で商用化が本格化する5G。新たに創出する市場規模は年1兆ドル以上と想定されています。大容量データを遅延なく高速にやり取りできる5Gは、産業界にどのようなデジタル変革を巻き起こすのでしょうか。その可能性を実際のユースケースを交えて紹介します。
【富士通フォーラム2019 カンファレンスレポート】

カンファレンスは、最初にエリクソン・ジャパンの藤岡氏が「5Gのグローバル動向と産業応用への取り組み」と題して講演し、その後、富士通の水野と、5Gが既存の産業に及ぼす変革をテーマに対談しました。

いよいよ実サービスへ、世界で起きている「5G」のうねり

エリクソン・ジャパン株式会社
チーフ・テクノロジー・オフィサー(CTO)
藤岡 雅宣 氏

5G通信の本格導入が進んでいます。2018年10月1日にアメリカの通信大手ベライゾンが5G通信を使った固定無線アクセスを開始しました。街中の電柱などに固定無線アクセスの機器を取り付け、家庭用ルーターにインターネットアクセス用の電波を飛ばしています。同社は2019年4月3日に、スマートフォン向けの5G通信サービスも開始しました。同じく米国では、AT&Tが5G通信を使った企業向けのモバイルルータの提供を開始。5G通信サービスの商用化は、米国が先陣を切ったと言えるでしょう。

初期の5G通信の本命となるスマートフォン向けサービスは、4月3日より韓国でも本格的に開始されました。ベライゾンより2時間早く発表されたため、「世界初」のスマートフォン向け5G通信サービスとなりました。その規模はかなり大きく、6大都市と85の地方都市をカバーしています。

中国の動きも見逃せません。2019年10月に建国70周年を迎える中国は、「三大通信事業者」とも呼ばれる「中国移動」「中国電信」「中国聯通」3社が中心となり、大規模な5G通信網の構築に乗り出しています。

5Gのグローバルな商用化の動き

5G通信が活躍する分野は、大きく3つに分かれます。1つ目はモバイルブロードバンドの高度化です。LTEをはるかに凌ぐ数Gbpsもの高速通信を利用することができます。スマートフォンなどを使ったインターネットアクセスや今後、用途が拡大するVRやAR、4Kや8Kへの応用が期待されています。

2つ目は、大量IoT。メーターやセンサーなど大量のデバイスをネットワークにつなげるためのIoTですが、これについては5Gでも当面はIoT向けのLTE通信をそのまま使ってカバーできるという目途が立っています。

そして3つ目がミッションクリティカルIoT。遅延が許されない高信頼の通信が求められるIoTのことで、自動運転などへの応用が期待されています。

5Gの利用が進むと予測される産業分野

5G普及の鍵を握る「ビームフォーミング」技術

一口に5G化といっても、当初から5Gの新たな無線技術を用いた通信ネットワークを構築し、単独運用するスタンドアローン型を採用することは、莫大な投資コストがかかることから現実的ではありません。すでに普及しているLTE通信を補う形で、5Gが徐々に浸透していくことになるでしょう。つまり、5G通信は「ノンスタンドアローン型」が主流となって普及していくことになるのです。

5G通信は、非常に高い周波数帯域を使う必要があります。従来は、こうした高い周波数帯は、電波の減衰が大きく、遠くまで飛ばないため実用化が難しいとされていました。この欠点を補うために、複数のアンテナを束ねてビーム化し、通信中の端末にめがけて照射する「ビームフォーミング」という技術を開発。安定的かつ効率的な通信を可能としました。

複数のアンテナを束ねることで安定的かつ効率的な通信を実現

ゲームや動画の送受信トラフィック負荷もエッジサーバで解決

5Gは今後、新たな市場を作り出すと期待されています。中でも、モバイルブロードバンド分野においては、爆発的に増加するトラフィックデータに耐えうる通信基盤として、5Gは無くてはならない技術になるでしょう。その市場規模は、2026年には9千億ドルにのぼると想定しています。産業界においても、5Gは新たな市場を創出し、デジタル変革を巻き起こすでしょう。その市場規模は、振れ幅が大きいものの2千億ドルから6千億ドルに達するとみています。

モバイルブロードバンドにおけるトラフィックの中心は動画になると想定され、現在でも全トラフィックの約60%を占め、2024年には約74%に達するとみられています。5Gのアプリケーションでは、スポーツにおける選手視点での映像や、VR画像、3Dホログラムなど、動画に関連するものに対する期待が大きくなっているのです。

動画が中心となる5Gの世界で重要な役割を果たすのが、エッジサーバです。スマートフォンなどのモバイルデバイス側では計算処理に限界があることから、画像処理などの複雑な計算はエッジサーバでやらせる可能性があります。そして、画面のみを5G回線で瞬時に、スマートフォンなどのモバイルデバイス側に表示させるのです。

大容量データを遅延なくやり取りして処理するコア技術がエッジコンピューティング

エッジサーバを使ったアプリケーションは、すでに数多く実用化されています。その代表例はゲームと言えるでしょう。今後、5Gが持つ高速回線を最大限に活かして、エッジサーバとスマートフォンの間でほとんど遅延のない通信を実現することが期待されます。より複雑な動きのあるリアルタイム対戦型ゲームができるようになります。そのほかにも、ヘッドマウントディスプレイやタブレット端末と、エッジサーバ間を5G回線で接続し、都市景観をVRやARで再現して建物の設計などに役立てる試みも行われています。

このように5G回線が普及すると、スマートフォンやスマートグラス、ヘッドマウントディスプレイなどが持つ処理能力を補うために、エッジサーバの重要度が増すと予想されています。エリクソンでは、5G通信ビジネスをエッジサーバの視点から支えるソリューションも提供しています。

期待される5Gのアプリケーションは幅広い

自動運転、VR、遠隔操作など産業界で5G実証実験が加速

コンシューマを中心とした現状の通信環境では、通信事業者が得ることができる収益は、年率1.5%程度しか増加しません。一方産業界での5G通信利用が普及することで、2026年には製造業などを中心に36%増加、新たに6,190億ドルもの市場が立ち上がると予想しています。実際に産業界では、製造業や自動車業界において、5Gを使った新しい仕組みの検討や標準化、制度面の整備などを行なうために、業界団体が立ち上がっています。

こうした中、産業界で5G回線を使ったトライアルが加速しています。エリクソンとベライゾンは、5G回線を使った自動車運転の実証実験を行いました。車の窓をすべて暗幕で覆い、ドライバーはVRグラスを装着。車上に設置したカメラの画像を、エッジサーバ経由でドライバーが装着したVRグラスに転送する仕組みで、問題なく車を運転できることを確認しました。これは、5G回線がもつ高速で遅延のない通信の実力を実証できた取り組みであると言えます。

その他にも、ブルドーザーに設置したカメラを見ながら、遠隔地から操作するNTTドコモとコマツの取り組みや、平昌の冬季世界大会における現場の映像を5G回線でテレビ局に送信して、放送に利用する取り組みなど、産業界における5G実用化の動きは着実に進んでいるのです。

特に自動運転にまつわるトライアルの動きは、著しいものがあります。スウェーデンでは、無人の自動運転EVトラックを実用化させるために、自動運転に支障がある場合に限り、遠隔地からトラックに設置した画面を見ながら運転する実証実験が行われています。地下の金鉱において、大型重機を遠隔運転するための検証も始まっています。中国の港では、大型コンテナを運ぶクレーンを30以上のカメラを見ながら、遠隔運転により制御する仕組みも試験されています。

製造業でも5Gを使って生産性を向上させる取り組みが加速しています。イタリアのフィアットの子会社では、各製造機器の情報をエッジコンピュータに集約、ロボット間の制御ロジック計算を集中的に行い円滑なロボット間連携を実現しています。ドイツの研究機関であるFraunhoferとの共同試験では、ジェットエンジンの空気を圧縮するディスクの製造時において、モーションセンサーによる異常な振動を超低遅延で察知して、歩留まりを向上させる試みも進められています。

様々な業種・業界における5Gのユースケース

5Gは産業界をどう生まれ変わらせるのか

後半は、富士通の水野が登壇し、既存のサービスやビジネスを変革する5Gの可能性について、「グローバル」「ネットワーク」「産業構造」をキーワードにエリクソン・ジャパンの藤岡氏と対談しました。

富士通株式会社
理事
サービスプラットフォームビジネスグループ
副グループ長
水野 晋吾

水野 グローバルな視点に目を向けると、すでに米国と韓国でスマートフォン向けの5Gサービスが実現しています。しかし、その通信速度はLTEと変わらないという声も聞かれます。こうした実情について、どうお考えですか?

藤岡 現状は、5G特有の使い方というよりは、すでに普及しているLTEのトラフィックをオフロードする形で5Gが実装されています。このため、実質的な通信速度はLTEと変わらないのです。今後、AR、VR、4K、8Kが普及してくると、5Gがもつハイビットレートという性質が効果を発揮してくるでしょう。まだそれまでにしばらくの時間がかかるのが実情であるといえます。

水野 4Gが登場した際には、iPhoneという新しいインターフェースが提供されました。5Gの登場は、インターフェースにどのような変化をもたらすのでしょうか?

藤岡 5Gは通信速度を激的に向上させると共に、エッジコンピューティングの普及により、モバイル機器側の計算速度の低さを補うことが期待されています。このため、ヘッドマウントディスプレイやVRグラスがより広く普及するかもしれません。すでにサムスンが実用化しているような折りたたみ式で大画面のスマートフォンも注目されると思います。

水野 ネットワークの変化についてもお伺いしたいと思います。固定とモバイルのネットワークが統合されるという話がありました。Wi-Fi、4G、5G、固定的なゲートウェイといった通信手段に関係なく、移動系のネットワークに集約されると考えてよいでしょうか?

藤岡 はい。5Gで高ビットレート化してくると、固定とモバイルの境界線がなくなります。モバイルネットワークは進化のスピードが早く、新しい技術が次々と登場しています。このため、モバイルネットワークが固定系のネットワークを巻き取りつつ統合される可能性が高いのです。

水野 ネットワークの進化の過程で標準化も必要になりますね。標準化のために乗り越えるべき課題にはどんなものがあるでしょうか。

藤岡 標準化の議論はすでに始まっています。課題として挙げられているのは、3G、4G、ノンスタンドアローン型といった複数の通信手段を固定系とどのように一体化するのかということですね。そのほかにも、ユーザ側の利便性が損なわれないようにするための議論も必要になるでしょう。

水野 産業構造にも焦点を当ててみたいと思います。産業界では、5Gで何が具体的に変わるのかよく分からないという声が聞かれます。大量のデータを集約するだけであれば、5Gの技術は必要ありません。いろいろなトライアルをしていく中で、5Gが産業界にもたらす変化はどのように感じていますか?

藤岡 5Gは大量のデータを遅延なく送信できる環境を提供します。現状の工場などのネットワークでは、移動するデバイスはWi-Fiなどの無線免許が不要な無線帯域での技術に頼らざるを得ません。しかし、Wi-Fiは干渉の問題もあり不安定です。移動するデバイスの情報を、安定的に遅延なく大量に入手できる環境を提供する5Gの可能性は、産業界にとって決して小さくないはずです。

最後に水野は、「大容量データを安定的に遅延なく送受信できる5Gで、産業界には新たなサービスやビジネスがますます生まれてきそうですね」と語り、カンファレンスを締めくくりました。

登壇者

エリクソン・ジャパン株式会社
チーフ・テクノロジー・オフィサー(CTO)
藤岡 雅宣 氏

富士通株式会社
理事
サービスプラットフォームビジネスグループ
副グループ長
水野 晋吾