トラステッドな未来をICTで切り拓く Driving a Trusted Future

技術の進展に伴ない複雑化してきた社会では、「AIの答えは正しいのか」といった不安やサイバー攻撃のリスク、プライバシー問題など、様々な懸念が増えてきています。人々の暮らし、ビジネス・社会における信頼をICTでどう再構築するか。2019年5月、富士通が目指す未来とその実現に向け注力するテーマと取り組みを、社長の田中と、6月に社長となる時田が紹介し、広瀬よりお客様やパートナー様との共創事例を発表しました。
【富士通フォーラム2019 基調講演レポート】

基調講演は、まず富士通代表取締役社長の田中が登壇し、富士通が掲げる2019年度のテーマに込めた思いを語りました。

今、求められているのはテクノロジーに対する信頼

富士通株式会社 代表取締役社長
田中 達也

2019年度に富士通が掲げたテーマ、そのキーワードは「トラスト」です。富士通は、豊かで夢のある未来を実現することを企業理念に掲げています。それは、テクノロジーで人を幸せにすることです。

今、私たちは第4次産業革命の真っただ中にいます。画期的なサービスが次々と登場し、わずか10数年前には夢でしかなかったことが次々と現実になり、この流れが今後も加速していくことは間違いありません。

一方で、私たちの実感はどうでしょうか。社会を取り巻く漠然とした不安。相次ぐ自然災害や、不安定さを増す国際情勢。それに加えて、未来を切り拓くテクノロジーについても、AI(人工知能)は本当に人を幸せにするのか、サイバーセキュリティや、プライバシーの問題をどう克服するのか。様々な調査でこうした懸念が浮き彫りになってきています。

このような中、企業が自信を持ってデジタル革新を進めるために必要なものは何か。そして、世の中の人々が安心してテクノロジーの恩恵を受けるために必要なものは何か。富士通が導き出した答え、それは「トラスト」です。テクノロジーに対する信頼、そして多くの企業、人々の信頼を支えるためのテクノロジー。これらを追求することで、豊かな未来に貢献したいと考えています。

そして、田中は「令和」という新しい時代を迎えたことに触れながら、富士通が2019年6月に新しい体制への移行を計画していることを紹介。次期社長に就任予定の時田について「トラストの重要性について、同じ思いを共有しています」と紹介し、時田を壇上へ招きました。登壇した時田は、まず自身の経歴について触れました。

多様性を理解できるグローバルな「肌感覚」で富士通に新たな風を

富士通株式会社 執行役員副社長
時田 隆仁

私は、システムエンジニア(SE)の出身で、長らく金融業界のお客様のシステム構築に携わってきました。直近では、グローバル・デリバリーグループの責任者としてロンドンに駐在。8カ国に1万4000人のスタッフを抱え、地球のタイムゾーンを一周カバーしてお客様サポートからオフショア開発までを手がけています。高度なスキルを持った人材を集めて、サービスのハブ機能を持たせており、今後もこのハブ機能を強化しようとしています。

このような組織を担当しておりましたので、ロンドンに住まいがありましたが世界中を飛び回り、世界各地でさまざまな文化に触れ、その多様性を肌身で感じていました。この環境で培ったグローバルな肌感覚を、今後の富士通の経営に活かしていきたいと強く考えています。

続いて、時田は2019年度のテーマである「トラスト」の実現に向けた富士通の取り組みを説明しました。

信頼を再構築するための3つの取り組み

私たちは、大きく変化する環境の中でテクノロジーに対する「トラスト」を再構築し、ビジネスの信頼を継続的に支えていきたいと考えています。そのために富士通は、大きく3つのことに取り組みます。

1つ目は「信頼を支える技術」です。複雑化するトランザクションの信頼性を保つ、サイバーリスクへの対応力を高めるなど、信頼を高めるためにテクノロジーが果たすべき役割はたくさんあります。富士通は世界中の研究機関とさらに強く連携し、テクノロジーの高度化に取り組んでいきます。

2つ目は「Human Centricの追求」です。「人のために」という目的を再確認し、2019年、富士通グループは、AIに関する倫理規定「AIコミットメント」を発表しました。英国にある富士通の研究所は、欧州委員会が採用したAI倫理指針原案を策定した「AI4People(エーアイ・フォー・ピープル)」という、ヨーロッパの権威ある団体の創立メンバーであり、早くからAI倫理の重要性に向き合ってきました。

また、富士通は国連が掲げる持続可能な開発目標「SDGs」に賛同しており、この達成に向けて貢献し、テクノロジーに対する信頼をより一層高めていきたいと考えています。

そして、3つ目は「富士通自身の改革」です。「受け身ではなく、市場の先を読んだ提案をしてほしい」というようなお客様からの声をたくさんいただきます。これを受けて、コンサルティング力の強化や、営業体制の見直しに着手しています。

デジタルに必要なのは、テクノロジーと、それをサービスに変える力です。50年の歴史を持つ、富士通研究所が生み出す画期的な技術と、富士通が持つ業種、業務、ノウハウをより一層生かせるフォーメーションに変え、お客様に「デジタルのパートナー」として選んでいただける富士通を目指します。

そして最後に、グローバルです。デジタル時代になり、価値あるサービスは、すぐに国境を越え世界中で使われます。富士通も世界に通用する価値をお客様にご提供するためにグローバル・デリバリー・センターを核に、世界中のお客様をしっかりとサポートしていきたいと考えています。

私が富士通に入社した1988年当時、富士通が発信していたメッセージは「夢をかたちに」でした。この言葉は今でも私の大好きな言葉で、富士通の中にDNAとして受け継がれています。

経営者として、社員が夢を語れる会社にするとともに、富士通はお客様のビジネスの信頼をしっかりと支えていきたい。そして、人々が「テクノロジーを信頼できる未来」、「豊かに安心して暮らせる未来」に貢献していきたいと考えています。

時田に続いて、基調講演の後半には富士通執行役員常務の広瀬敏男が登壇し、トラステッドなビジネスの実現に向けて「富士通が提供できる価値」について、お客様やパートナー様と取り組む共創事例を交えながら具体的に紹介しました。

AIなど信頼を支える富士通のテクノロジー

がんのゲノム医療における判断工程を「説明可能なAI」が大幅に短縮

富士通株式会社 執行役員常務
広瀬 敏男

AIがどんどん進化しています。すでに多くの分野で、AIは人間よりもはるかに正確な答えを出せるようになってきています。しかし、AIがビジネスや社会において、 より重要な意思決定に関わるようになった時、私たちは本当にAIの判断を信頼することができるのでしょうか。

AIが説明責任を果たせるようになれば、人間が新しい気づきを得られるというメリットもあります。さらにAIの利用範囲がこれまでよりももっと拡がるという期待も高まります。

富士通はAIが導き出した答えを説明可能にするAIを既に実現しています。

がん治療の1つであるゲノム医療研究で使われています。AIが導き出した推定結果の根拠を説明できる富士通のAI技術の登場により、これまで2週間もかかっていた、がんのゲノム医療の判断に要する期間がわずか1日へと大きく短縮されました。

フォルクスワーゲンが「デジタルアニーラ」で業務の最適化を推進

コンピュータ技術が急速に進んだ現代でも、解決できない課題がまだまだ多く存在しています。中でも、膨大で複雑な組み合わせの中から最適解を導き出す「組合せ最適化問題」は、従来のコンピュータでは解くことが非常に難しいとされています。

例えば、株式の分散投資では20銘柄の最適な組み合わせだけでも、なんと100京通り以上にも及び、従来の汎用コンピュータでは、実用的な時間内に解くことはできません。そこで富士通は、組合せ最適化問題を瞬時に解くことができる新しいアーキテクチャーのコンピュータ「デジタルアニーラ」を開発しました。

このデジタルアニーラを活用し、現在ドイツの自動車メーカー、フォルクスワーゲン様は、工場内での産業ロボットのスケジューリング、さらには在庫管理の最適化を進めています。さらにノイズを最小限に抑えるためのサイドミラーの形状の最適化など、難しい分野にもデジタルアニーラを活用いただいています。

デジタルアニーラを使うことで、これまであきらめていた領域でも最適解を素早くはじき出すことが可能になるのです。将来的には首都圏全体の渋滞の緩和、あるいは高分子の薬の開発などにも適用できると考えています。

お客様と共に創出する新たな価値

富士通は、テクノロジーは人の幸せのために存在すると考えています。全てを、人を中心に考えて、そして人のための価値を生み出していく「Human Centric」という考えをこれまで提唱してきました。

その考えのもと、富士通は2018年に理化学研究所様、国立がん研究センター様、昭和大学様と共に、産婦人科医不足という深刻な問題に対して、AIを用いて胎児の心臓異常をリアルタイムに自動検知する技術を共同開発しました。

広瀬は、共同開発に取り組んだ理化学研究所の小松氏を壇上へ招き、この開発の難しさと富士通と取り組んだことで得た成果をお聞きしました。

理化学研究所と取り組む、AIを活用した胎児心臓超音波スクリーニング

国立研究法人 理化学研究所 革新知能統合研究センター
がん探索医療研究チーム 研究員
小松 正明 氏

胎児の心臓については高度な診断技術が必要で、超音波診断は特に検査者のスキルが大きく影響します。さらに、超音波画像AI解析はとても難しく世界でも開発が進んでいません。

そこで、理化学研究所では開発の最初の段階から“AI技術者”と“専門医”が検討を重ね、実際に医療現場で役立つ基盤技術の開発に集中することで、世界に先駆けてたった数カ月で、超音波画像診断を支援するAI技術を開発できました。

今後は検査者のトレーニングやクラウド化による遠隔診断を実施することで地域間の医療格差をなくし、どこでも安心して妊娠・出産できる世界を目指します。

続けて、広瀬は、業種・業界の垣根を越えた共創の事例として、異なる業種の4社と共創で取り組んだプロジェクトを紹介しました。

異業種4社でモビリティが融合した未来の暮らしをデザイン

メルセデスベンツ日本様、竹中工務店様、西川様、ABCクッキング様と取り組んだ「EQ HOUSE」は、未来の人と車、ライフスタイルをデザインするプロジェクトです。

このプロジェクトは「デザイン思考」を用いて、富士通のデザイナーとエンジニアが、お客様と共にテクノロジーによってパーソナライズ化される未来の暮らしをデザインし、全く新しい暮らし体験をつくり上げました。

2019年3月より、富士通独自技術である「睡眠状態を解析するアルゴリズム」を基点に寝具の西川様や、食事のABCクッキング様とのコラボレーションを実践しています。

データ利活用の必要性と高まる信頼の重要性

富士通は、企業間で安心してデータ利活用ができるようにブロックチェーンの技術を用いて、新しい価値の創出にチャレンジしています。2018年には三菱地所様を中心に12社が、ブロックチェーン技術を使い業種を超えてデータを持ち寄り、新しい街づくりの在り方について研究・実証実験を実施しました。

広瀬は、現在も東京駅周辺で新たな開発に取り組んでいる三菱地所の後藤氏を壇上へ招き入れ、このプロジェクトへの思いと具体的な実証実験の内容、そこで得た新たな発見をお聞きしました。

三菱地所と業種を超えたデータ連携で新たな街づくりを

三菱地所 街ブランド推進部長
後藤 泰隆 氏

三菱地所では大手町から丸の内、有楽町に広がるこのビジネスセンターに、もっとクリエイティブな人たちが集まり、イノベーションに魅力を感じる人・企業に集まっていただきたいと考え、集まり、交流することで、創造的な賑わいが持続的に沸き起こる街づくりを目指しています。

様々な企業・スタートアップと連携し、公道での自動運転バスやタクシーの運行、AIやロボットを用いたおもてなしのサービスといった実証実験を実施してきました。また、このような活動を加速していくため、産業構造を変革するテクノロジーを集積し、独創を促すイノベーション拠点『Inspired. Lab』を2019年2月に開設しています。

さらに後藤氏は、2018年5月~12月にかけて実施した実証実験のから得た気づきとデータ利活用の重要性について紹介しました。

人流×SNSによるデータ分析で顧客導線と目的の関係把握が可能に

当初、富士通、ソフトバンク、東京大学と弊社の4社で始めたプロジェクトは興味を持った企業にも参加をいただき、最終的に12社となりました。

成果の1つを紹介すると、従来別々に分析していた人流データとSNS分析データを掛け合わせることで、丸の内を回遊する人の分析を高度化できるようになりました。例えば外国人の観光客は、東京駅から来る人と有楽町方面から来る人では、飲食とショッピングというように異なる関心があることが分かり、より具体的なレコメンド施策を打つこともできるようになると考えています。

データを利活用するためにはデータの種類と量が必要であり、日本では会社の壁を越えてデータを持ち寄ることが必要になると思います。データを利活用したいという思いは皆さんもお持ちかもしれませんが、安心してデータを交換できる環境がないことには、たぶん検討を始められないと思います。今回は、富士通が、そういった環境をスピーディーに提供してくれたことで、最初の段階からしっかり実現できたと思っています。

これからも多様なデータ利活用に積極的に挑戦し、丸の内をより魅力的な街にすることが今後の目標です。

トラストな未来の実現に向けて

最後に広瀬が登壇し、次のように講演を締めくくりました。

世界中の人々が、安心してテクノロジーの恩恵を受けるために必要なもの「トラスト」。テクノロジーに対する「信頼」。「信頼」を支えるためのテクノロジー。富士通は、これらを追求することで豊かな未来に貢献したいと考えています。

富士通がお客様やパートナー様ととともにアクションを起こし、「誰もが安心できるトラステッドな未来を築いてまいります。

登壇者

富士通株式会社
代表取締役社長
田中 達也

富士通株式会社
執行役員副社長
時田 隆仁

富士通株式会社
執行役員常務
広瀬 敏男

国立研究法人
理化学研究所 革新知能統合研究センター
がん探索医療研究チーム 研究員
小松 正明 氏

三菱地所
街ブランド推進部長
後藤 泰隆 氏