5Gで変わる未来社会【第3回】

(第2回からの続き)

5Gでは、従来のモバイル通信システムには使われなかった極めて高度な技術を多数投入します。
利用シーンの拡大や効率的な運用を実現可能にする技術を紹介します。

密集エリアでの通信品質向上 超高密度分散アンテナ

超高密度分散アンテナの実証実験
(上)富士通新川崎テクノロジースクエアでの超高密度分散アンテナの実験システム、(下)実験システムの構成。複数の分散アンテナから複数の端末装置に対して、最大32ストリームでの大容量データの同時高速伝送を行う

サッカースタジアムでゴールシーンの高精細映像をスマートフォンに配信できれば、試合をより楽しめます。これを実現するためには、全端末に安定したデータ伝送ができるモバイル通信環境が必要になります。

密集エリアにおいて、全端末に高精細映像を伝送するためには、基地局を高密度に配置する必要があります。多くの端末が少ない基地局をシェアすると、端末1台あたりの通信速度が低下するからです。しかし、基地局を高密度に配置しても、基地局の各アンテナからの電波が干渉し、通信品質が劣化する欠点があります。

そこで、富士通はアンテナに付随する高周波回路の特性を補正して通信精度を向上させる「高精度キャリブレーション技術」を開発しました。この技術で、高密度に分散配置した5Gの小型基地局を協調制御して、セル(電波の届く範囲)を瞬時に変えることができる「超高密度分散アンテナ」を構築できます。通信品質の良い場所(仮想セル)を自在に作り出せるため、ユーザーに高品質なモバイル通信サービスを提供できます。

アンテナを小型・低電力化 世界最小サイズのミリ波アンテナ

1枚のパネルで4人と同時にミリ波通信が可能なアンテナ

ミリ波を利用する5Gでは、電波エリアが比較的小さい基地局を数十mおきに配置するケースが想定されるため、基地局の小型化と低消費電力化が欠かせません。しかし、従来のビームフォーミング手法では、複数端末と同時通信するには端末と同数のアンテナパネルが必要でした。

富士通は、1枚のパネルで4人のユーザーに同時に10Gbps以上の高速通信ができる世界最小サイズのアンテナを開発。アンテナ素子が発する信号の位相(角度)を高精度に制御し、信号間の干渉を抑えながら、複数端末に電波の方向を向けることができるようになりました。

さらに、10Gbps超の高速通信を低消費電力で実現できる基地局向けミリ波回路技術も開発しました。この技術では、アンテナ素子に流す信号の位相をフェーズシフタで制御し、フェーズシフタを構成するアンプの数を削減することで電力損失を最小化します。128個のアンテナ素子の消費電力を、従来比で半減となる3Wとすることに成功しました。

一定エリア内の通信効率化 MECとネットワークスライシング

一定エリア内の通信を効率的に運用するMEC

通常のモバイルネットワークは、端末-無線網-中継網-インターネット-サーバという形で構成されます。5Gは超低遅延での通信が可能ですが、それはあくまでも無線網内での遅延時間が短いことだけを保証しています。

富士通は4G時代から、「マルチアクセス・エッジ・コンピューティング(MEC)」と呼ぶ、一定エリア内の通信処理を効率化する技術を保有しています。エリア内にサーバを持ち込み、トラフィックをエリア外に出さずに処理できるようにします。MECを5Gに応用すれば、無線網内にサーバを置けるので、システム全体の遅延を大幅にカットできます。

また、5Gでは端末の形態とその利用シーンが多様なため、ネットワークリソースをフル活用する必要がない場面が多々あります。このため、「ネットワークスライシング」と呼ぶ、通信能力を個別に提供するためのリソース振り分け技術が使われます。MECを使えば、ネットワークスライシングを実行する際も、エリア内だけのネットワークリソースを制御すればいいので、きめ細かな通信制御が可能になります。