働き方を変える「AI翻訳」で言葉の壁をなくし、生産性向上や能力発揮を促進

多くの企業が働き方改革に取り組んでいます。富士通でも、2010年から業務を効率化するツールの使用やテレワークなど、働き方改革を実現する様々な社内実践に取り組んでいます。株式会社みらい翻訳と協業し、AI(人工知能)技術を活用した翻訳サービス「Zinrai(ジンライ)文書翻訳」の取り組みも、その1つです。

ビジネスのグローバル化がますます進展していく中、海外拠点とのコミュニケーションにおける「言葉の壁」は、業務効率化を阻む一因ともなっています。
代表取締役社長 田中達也は、「5月末から国内全社員3万5,000人を皮切りに、今年度中に全世界の社員14万人にZinrai文書翻訳を提供します。富士通は、言葉の壁を取り払うことで、社員の生産性の向上や、能力発揮を支えていきたいと考えています」と、Zinrai文書翻訳の活用を推奨しています。
このように、翻訳作業の時間短縮は、生産性の向上や、コミュニケーション活性化といった効果を生み出すと期待されています。

富士通株式会社 代表取締役社長
田中 達也

AIで文脈を考慮し、翻訳精度を上げる

「Zinrai 文書翻訳」は、AI技術を活用したニューラル機械翻訳により、精度の高い翻訳を素早く実現するシステムです。膨大な対訳データをもとに、ニューラルネットワークを利用して翻訳することで、従来のルールベース翻訳や統計的機械翻訳より自然な文章で翻訳できることが特長です。

ルールベース翻訳は単語を1つひとつ訳してから文法ルールに合わせて並べ替えます。対してニューラル機械翻訳は単語ではなく、センテンスにフォーカスして、前後の単語の関係性を見ながら翻訳します。例えば「attack」という英単語は一般的には「攻撃」と訳されますが、医学など専門用語では「発作」と訳します。ニューラル機械翻訳では、文脈を考慮して最適な訳語を選択し、翻訳を行います。

テキスト翻訳だけでなく、「Microsoft PowerPoint」や「PDF」などのファイルをそのまま翻訳できることも特長です。海外拠点や海外のお客様との間で資料をやり取りする時など、資料を丸ごと翻訳できるので業務効率の向上が期待できます。

Zinrai文書翻訳はクラウドサービスで提供しています。「ISO27001」に準拠した富士通のデータセンターで運用しており、セキュリティ面も安心です。また、翻訳に使用した文書は翻訳完了と同時にサーバから自動で削除するため、二次利用や外部流出へのリスクを低減しており、安心してご利用いただけます。

図1 Zinrai文書翻訳の機能概要

実際に使ってみた! スムーズな翻訳操作を体感

標準で提供しているユーザインターフェース(UI)を使った操作は、非常にシンプルです。まず、翻訳言語(「⽇本語⇔英語」「日本語⇔中国語」)を選択し、画面左側に原文をコピー&ペーストして、翻訳ボタンを押すと右側に結果が表示されます。

図2 実際の翻訳画面

ファイル翻訳でも基本的な操作性は変わりません。翻訳言語を選択して、ファイルをドラッグ&ドロップするだけです。例えば、20ページ程度のパワーポイントプレゼンテーション資料はわずか数分で翻訳されます。文字サイズが自動で調整されるなど、元資料のレイアウトにも配慮した翻訳が行われます。

図3 Microsoft PowerPointの資料もレイアウトを崩さずに翻訳できる

このように、テキストやファイルの翻訳が手間をかけずに素早く行えて、ニューラル機械翻訳による精度の高い翻訳が可能なのが「Zinrai 文書翻訳」の特徴です。

オフショアの翻訳業務を約40%削減

「Zinrai 文書翻訳」を全社導入するのに先立ち、富士通ではオフショア推進部署において、規定文書の翻訳業務にトライアル導入しました。従来は文書を人手で翻訳していたため、時間がかかっていましたが、Zinrai 文書翻訳を使ったところ、人手翻訳と同等の翻訳結果が得られ、翻訳業務全体の時間を40%短縮できました。さらに、翻訳結果から原文の日本語の曖昧な記述を発見することができ、日本語コンテンツの品質向上にも繋がりました。

また、社内の情報システム部門では、Zinrai文書翻訳を活用したことで、海外のメンバーとのフランクなコミュニケーションができるようになりました。特に、海外拠点へのシステム開発委託の仕様書などは、Zinrai文書翻訳の活用により、わずか5分から10分程度での翻訳が可能になりました。

また、システム稼働後の運用や保守のフェーズでトラブルが発生した場合の緊急対応において、翻訳システムは力を発揮します。1分1秒を争う現場で、何が起きているのかすぐに訳して問題を共有し、必要な対応ができるのは大きな効果です。

理想は、「言語を意識しないコミュニケーション」

社内トライアルの後は、利用者の声を反映させながら、改善ポイントを洗い出して順次対応していく予定です。

現在の対応言語は日本語と英語、2019年4月25日からは中国語にも対応します。今後はさらに多言語への対応を予定しています。東南アジア系など需要の多い言語を中心に進めていきます。また現在はクラウド版のみですが、2019年度中にオンプレミス版も提供するほか、UIの改善や、専門辞書を選択できる機能を追加するなど、より多くのユーザーに使いやすさを実感してもらえるように取り組みます。また、テキストやファイルだけでなく、OutlookやSkype内で直接翻訳ができるプラグインも2019年上期に提供予定です。

さらに、利用者独自のシステムに組み込むためのAPI(Application Programming Interface)も提供しているので、独自システムとしてカスタマイズすることが可能です。

富士通が目指す理想的な姿は、「利用者が言語を意識しなくても業務でのコミュニケーションが円滑に進められる状態を創る」ことです。現在のシステムは、テキストやファイルを一度翻訳してその結果を元に、相手とコミュニケーションを行います。その「翻訳する行為」すら感じさせずにコミュニケーションができる状態を実現したいと思っています。理想の姿の実現に向けて、取り組んでいきます。


利用者の声

IT戦略本部 BIコンピテンシーセンター センター長 木村 光義

IT戦略本部は海外に4拠点がありますが、現地メンバーとのスムーズなコミュニケーションに課題がありました。また海外のオフショア開発拠点にシステム開発を委託する場合、これまでは、日本語で仕様書を作成し、それを英語が堪能なメンバーが英訳していたので業務負荷が大きくなっていました。「Zinrai 文書翻訳」で、ドキュメントやメールの翻訳ができることで、生産性の向上はもちろん、システムでトラブルが発生したときでも、ほぼリアルタイムで現地のメンバーと現地語でコミュニケーションでき、問題と解決策を共有できています。オフショア拠点からも「使いやすい」という声を聞いています。

IT戦略本部 BIコンピテンシーセンター マネージャー 青木 克憲

IT戦略本部には、フィリピンのオフショア開発拠点にシステム開発を委託している部門があります。そこでは、日本語の設計書を英語に翻訳して現地に渡していましたが、「Zinrai 文書翻訳」で翻訳にかかる時間や手間を大幅に軽減でき、生産性が5倍くらい高まったと感じています。具体的には、効果としては以下になります。

  • PowerPoint,Word,Excelなど様々なドキュメントの翻訳を実施しても、レイアウト崩れが殆ど無いため、翻訳したドキュメントをそのまま使える。
  • 翻訳した資料がそのまま利用できる訳質なので、日本語が得意ではない海外のメンバーに対しても、即時資料を展開できるようになります。その結果コミュニケーションの方法が変わり、オフショア時のボトルネックとなっていたノウハウの伝承についても効率が大幅に改善した。
  • 他社製のインターネットを介した翻訳は、文書の流出がネックとなり利用できなかったが、Zinrai文書翻訳により安心して利用できる。

まだトライアルの段階ですが、富士通グループ全体での活用を期待しています。

AIサービス事業本部 AI‐HQセンター マネージャー 荒滝 新菜

2018年、富士通はAIとデジタルアニーラビジネスのグローバルなHeadquarter機能を担う子会社(Fujitsu Intelligence Technology, 以下AI-HQ)をカナダに設立しました。その立ち上げと海外向けソリューション開発を日本側から支援しているのが私たちの部門です。日本の商材を海外に展開するための様々な技術資料の英語化、日常的な海外拠点とのメールのやり取りが発生します。「Zinrai 文書翻訳」は、日本語訳も英語訳も業務で十分通用するレベルで、専門用語も辞書に登録すれば順次、反映されていきます。今では10数人が日常的に利用し、生産性も確実に向上しています。


本記事で紹介しました「Zinrai文書翻訳」は富士通フォーラム2019(有楽町国際フォーラム)【5月17日】でご覧いただくことが可能です。
詳細は、こちらよりご確認ください。
富士通フォーラム2019 https://event.jp.fujitsu.com/2019/tokyo/