デジタル革新の第一歩は「顧客体験」向上から

企業でのデジタル革新に関する広範な調査から、喜ばしい結果と残念な結果が見えてきました。

喜ばしい結果としては、顧客にとって最も重要なことに注力するうえで、デジタルテクノロジーの採用を加速する企業が増えている点が挙げられます。その一方で残念な結果といえるのは、実際には驚くほど多くの企業が、ことデジタル革新戦略に関して、未だに顧客のニーズを考慮できていないという事実です。

上のような傾向は、破壊的なビジネス改革についての調査やコンサルティングを行っているアルティメーター・グループのプリンシパルアナリストであるブライアン・ソリス氏が作成した、デジタル革新の状況に関する年次報告書「デジタル革新の現状(英語)」第5号から得られた結論であり、これを踏まえてソリス氏は、「デジタル化の取り組みを成功させるうえでは、顧客視点を取り入れることが重要になるケースが多い」と述べています。

同氏は、「デジタル革新の旗の下で企業が投資しているすべての取り組みを見ると、上位10位のほとんどが顧客体験に関連し、積極的な取り組みの多くが顧客を中心に据えていることが理解できます」と語りました。そして、「顧客体験の向上がデジタル革新の目的となっているという意味で、これは興味深い点です。また、このような企業の方向性が顧客にとって実際に意味のあるものとなり、ビジネスの目的がより良い顧客体験を提供することに変化している事実も示されました」と分析します。

同レポートの第5号作成にあたって、アルティメーターでは、従業員数1,000人以上のブランド、コンサルティング企業、その他の組織のさまざまなレベルで働く担当者554人に対して調査を行いました。対象地域は、北米、西ヨーロッパ、中国です。

このレポートでは、調査対象となった各社がさまざまな理由からデジタル革新プログラムを進めていることが示されています。その動機としては、約51%が「成長機会が得られる可能性への期待」を挙げ、41%が「競争圧力」を挙げました。また、EUのプライバシー保護基準であるGDPRなどの「規制基準」を挙げた人も38%に上っています。

テクノロジーの観点からは、優先順位の1位に「クラウドベースサービスへの投資」が入り、次いで「サイバーセキュリティ」、「AI」、「ビッグデータ」、「IoT」、「アナリティクス」、「モバイル」、「eコマース」が続きます。

ソリス氏は過去を振り返って、これまでは顧客の体験をいかに向上させるかを十分に理解しないまま企業が最新のテクノロジートレンドに飛びつく姿が、あまりにも頻繁に見られたことが問題だったと指摘しました。

しかし今では状況が変わり、製品を見つけるところから、ソリューションについて調べ、購入するところまで、カスタマージャーニー全体を理解するために多大な投資を行っている企業が増えています。その目的は、あらゆるデジタルへの投資を顧客体験の一部または全体の向上に、確実につなげることにあるのです。

実際、今回の調査では、自社のデジタル革新の取り組みの中心に顧客を据えている企業の割合が、前回調査の35%から59%にまで増加しています。

「これは良い意味で劇的な変化です」とソリス氏は述べ、次のように説明しています。「実は、かつてはこうした投資を行っていても、顧客体験という考え方が広く普及していなかったため、投資の真の理由までは理解されていなかったのです。それが今では、以前よりもはるかに積極的な投資を行って顧客の違いを見極め、それに応じた価値を付加することをしっかりと理解する動きが見られるようになっています。」

同氏は、このような顧客中心への移行を促進している要因は多岐にわたるとし、次のように指摘しました。

「企業はまず、売上の落ち込みや市場シェアの損失といったさまざまな形によって、現状のビジネスに改革が必要であるとの警告を受け取ります。同時に、組織内ではデータの存在感が格段に増してきており、それらの警告の数字も考慮した、数々のデータ戦略が本格的に立ち上がりつつあるわけです。これらの動きは、すべて『顧客体験』の名の下に行われており、この2つの事象が人々にカスタマージャーニーの検証を迫っているといえます。こうした取り組みの割合は年ごとに増えていくことでしょう。競争に勝ち残るうえで、このトレンドは避けて通れないからです。」

また、顧客は、市場で直接競合していない別々の製品やサービスを利用する際にも、それらをつなぐシームレスなデジタル体験を得たいという期待を抱くようになっています。さらには、企業の従業員も、自分が利用したり顧客へのサービス提供に使われるツール類の体験向上を求めるようになりつつあるのです。

「たとえばUberを利用したり、出会い系アプリのTinderを使ってデートしている人が、自分の企業のツールを使ってコミュニケーションをとったとします。すると、それらのユーザー体験が真逆であることに気づくでしょう。しかも、そうした体験の違いを生み出すための改革が、ますます重要になってきています。この意味で、この分野の大きなトレンドをひと言で表すならば、『デジタル革新とは実際には人間的なストーリーにほかならない』ということなのです。」

実は、このような変化を妨げる要因が、企業文化や組織構造、最適な人材の発掘など、これまでも課題とされてきたものであることも珍しくありません。

この点について、ソリス氏は次のように述べています。「硬直した企業文化や、利害関係者に従属しすぎているリーダーシップチーム、考え方の古い取締役会といったものを抱えている企業は、今ここで生じている問題に対して鈍感になってしまうでしょう。しかもそのような組織の場合、問題はたちどころに悪化します。ところが、顧客は企業の構造的な問題などには関心がなく、ただ自分の望みや願いを叶えてくれるのか否かということだけが気がかりなわけです。そのため顧客は、あなたの会社や業界を、ウーバーなどの新たな価値観に基づく企業と比較して評価を下します。」

これからのビジネスにおける成功は、こうした先進的で顧客体験を最重要課題に据えた企業をベンチマークにして、デジタル革新を行えるかどうかにかかっているのです。

 

この記事はVentureBeat向けにクリス・オブライエンが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。