顧客起点のデジタルマーケティングで企業を変革[後編]

~CX(顧客体験)を中心としたマーケティングの再構築の重要性と富士通社内における取り組み~

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前編からの続き)
スマートデバイスやソーシャルメディアの普及により、本格的な導入が進んでいるデジタルマーケティング。今、お客様一人ひとりの思考や行動を捉え、お客様の望む商品やサービスを提供する「顧客起点」でのアプローチが注目されています。講演の後半では「CX-Firstでマーケティングをリフレームする」「富士通が取り組むB2Bデジタルマーケティング最前線」と題し、お客様のデジタルマーケティングを成功に導くためのポイントを紹介しました。
【Fujitsu Insight 2018「デジタルマーケティング」特別講演レポート】

CXを中心にマーケティングの再構築を強調

神田氏の講演に続いて、富士通 デジタルソリューション事業本部 デジタルマーケティング事業部 事業部長である平山 将が登壇しました。神田氏の課題提起を受けてファシリテーションの鍵を握るのは「CX(顧客体験)」であり、CXを中心としたマーケティングの再構築の重要性を語りました。

「点」ではなく「面」でマーケティングのイノベーションを支援

富士通 デジタルソリューション事業本部
デジタルマーケティング事業部
事業部長
平山 将

先ほど、神田様の講演の中で「顧客に関する視点を持ったファシリテーション」がデジタル変革の鍵であるとお話がありましたが、企業は今、デジタル変革に向かい大きな変化の中にあります。消費者の趣味・趣向が多様化し、モバイルの出現により消費者の購買行動は大きく変わりました。また、商品やサービスの同質化が起きています。こうした複雑化した市場においてデジタル変革を進めるための鍵となるのがCXであると認識しています。

富士通はCX-Firstのマーケティングを徹底的に追求しています。2016年にはデジタルマーケティングの新体系となる「Fujitsu Digital Marketing Platform CX360」(以下、CX360)を立ち上げました。 これは、360℃視点、つまり全方位でお客様のことを理解しながら、顧客体験の向上を図り、マーケティングの高度化をご支援するブランドメッセージです。

お客様を中心にデータ統合やマーケティングAI、マーケティングデザインを通して、よりリアルタイムでより深い顧客理解を推進します。また、パーソナルなアプローチとして顧客起点の業務プロセス設計や施策設計によるマーケティング施策によって、徹底的な顧客起点でのリアルタイムアクションを行います。PDCAを回すことで「点」ではなく「面」でマーケティングのイノベーションを支援します。

CX360では、富士通が培ってきた技術やノウハウ、アプローチを活用して3つの価値を提供します。顧客起点のリアルタイムマーケティングソリューション「Solution CX360」、デジタルマーケティングをワンストップで支援するスペシャリスト集団「Team CX360」、社外パートナー連携によるサービス提供と共創を目指す「Community CX360」です。

CX360の3つの価値

富士通はこれまでITソリューションを主に提供してきましたが、上流のコンサルティングから実際の施策の実行まで面で支援しているのが大きな特徴です。

Solution CX360では、CX360を実現するソリューションを5つの領域で体系化しています。MAやCMS、CRM、コンタクトセンターなどあらゆるチャネルの最適化を支援するソリューションを用意しています。DMPやCDPを活用したマーケティングAIソリューションも提供しています。

CX360を実現するソリューションを5つの領域で体系化

また、Team CX360は、ITを活用しながらマーケティングを支援するための実績のあるプロフェッショナルチームです。マーケティングデザインを行う「ビジネスプロデューサー」、アジャイル開発やデータ統合を行う「データエンジニア」、AIを活用してモデリングや分析を行うデータサイエンティスト集団である「キュレーター」の3つの部隊でチームを編成し、顧客を支援しています。その経験を活かして企業の各部署間を連携させるファシリテーションを行えると考えています。現在250社以上のお客様のマーケティングをご支援させていただいております。

顧客中心主義を徹底したデルタ航空

米国のデルタ航空様の事例を紹介します。米国のデルタ航空では、顧客中心主義を徹底していてあらゆるサービスで質の高い顧客体験を生み出しています。例えば、フライトの遅延やキャンセルした場合における事前対応です。デルタ航空では、このようなお客様にとって最悪の時こそ感動を生み出すチャンスと捉え、スマートフォンでフライト遅延の情報を伝達し、代替フライトの選択、予約までワンストップで完了させることができます。これは一例にすぎませんが、他にもありとあらゆるシーンにおいて、すべてが顧客起点で設計されており、業務プロセスとシステムが連動している点が特長です。その結果、営業利益を1.8倍、株価を6倍も向上させることにつながっています。

CX-Firstでマーケティングを再構築

一方で興味深い調査結果があります。「優れた顧客体験を提供できていますか?」という問いに、提供できていると回答した経営者は74%でした。ところが、実際「優れた顧客体験を実感した」と回答した消費者は全体の8%しかに過ぎなかったのです。どうしてこのようなギャップが生まれるのでしょうか。

原因の1つには、組織間の情報共有が不十分でサイロ化し、バラバラになっていることが考えられます。
部門ごとに部分最適でマーケティングに取り組んでいるため、様々な部門から異なるマーケティングメッセージがお客様に届いた結果、企業全体としてのお客様の評価が下がってしまうのです。また、マーケティングを支援する立場のコンサルティング会社や代理店、ITベンダーが部分最適化していることもあげられるかもしれません。

そこで富士通では、お客様起点のマーケティングのリフレーム(再構築)を皆さまにおすすめしています。右の図が富士通の考えるCX-First Marketingの全体像です。重要なことはこの図の一番上の赤い部分、一連の顧客体験(認知→興味→比較・検討→購入・計画→参加・共有→拡散)をしっかりフルファネルでデザインすることです。このデザインに基づいて、施策と業務プロセスの設計し、必要なソリューションを導入する。結果として発生するデータを散在させずに統合し、AIを活用して価値化。より良いお客様体験に返していくというスパイラルを回していくことがポイントです。実際に富士通で社内実践した結果、従来と比較しコンバージョンが2.5倍になりました。マーケティングの全体像をきちんとデザインすることが非常に大事なことなのです。

CX起点でのマーケティングを実現するフレームワークCXC3でお客様のデジタルマーケティングを高度化

この全体像を作っていく時にご提案させていただくのが、CX起点でのマーケティングを実現するコンサルティングフレームワーク「CXC3(シーエックスシーキューブ)」です。これは、CXを中心とした顧客理解(Customer Comprehension)、共通の戦略・目的(Common Strategy)、部門横断の施策(Cross Action)という3つの「C」で顧客体験を高度化実現するマーケティングを実現するためのフレームワークです。

CX起点でのマーケティングを実現するフレームワーク

CXC3のフレームワークを活用したケイ・オプティコム様の事例

このCXC3のフレームワークを使って顧客起点マーケティングに取り組んでいる、ケイ・オプティコム様の事例をご紹介します。同社からは顧客ロイヤルティの向上という要望がありました。顧客理解では、従来の顧客理解、顧客属性、契約情報など属性の理解だけでなく、興味関心やライフステージなど、従来より深いお客様一人ひとりの属性について理解を進めました。

次に、それらの情報を部門横断で共有しながら、CX向上プロジェクトを実践し、一連の顧客体験とそれを実現するための施策、業務、ITをデザインしました。

部門共通の目的や戦略を策定した上で、従来のチャネルであるコールセンターやメール、DMの他、新たにWebチャットやLINEなどを加え、オンライン・オフラインの施策を顧客軸で部門横断に連携しました。このような取り組みの結果、ケイ・オプティコム様は「2018年オリコン顧客満足度ランキング」プロバイダ近畿で4年連続No.1を受賞するなど、顧客満足度を向上させ続けています。

このように、常にお客様の視点でCXを評価し、社内組織を1つの方向に向かわせることで企業内の共通認識や文化を作っていくことが重要です。

お客様の目線で顧客体験を評価

富士通では、お客様にとって正しいことを追求し続ける「CX-First」を目指しています。お客様から見た顧客体験のあるべき姿を追及するため、お客様の声、マーケティングの知見を活用したカスタマージャーニー、行動分析、また、データサイエンティストによる外部データやAIの活用を通じ、様々な角度からより深くお客様を理解することに取り組んでいます。

CX360の更なる強化に向けて、富士通はエクスペリエンスデザインファームである「beBit」と協業を開始しました。beBitとの連携により徹底的な顧客起点を追求し、上流から下流までワンストップで成果の創出を目指す体制を整備しています。これは、ソリューションやデータベンダーなどとエコシステムを構築するCommunity CX360の一環として取り組んでいます。

私たちは、CX360で顧客行動を全方位から把握しながら、お客様一人ひとりの顧客体験の向上を継続的に図り、マーケティングの高度化を実現することを目指しています。今後も価値の"提供から創造へ"という支援を進めて参ります。

富士通が取り組むB2Bデジタルマーケティング

平山の講演に続いて、富士通 マーケティングコミュニケーション本部 本部長を務める狩野 泰博が登壇し、最新の取り組み状況を紹介しました。

これからのデジタル革新はLoBが主導する

富士通 マーケティングコミュニケーション本部
本部長
狩野 泰博

B2Bのデジタルマーケティング活動は、ここ数年で実践検証のフェーズから成果を求められるフェーズに変わってきました。デジタルデータを分析してお客様の購買予兆を把握し、営業連携につなげて成果を見える化することが大事です。

ものづくりやヘルスケア、金融など様々な業種・分野でデジタル革新が起こり始めています。ちょうど1年前までは、その多くが検証段階に位置づけられていましたが、1年たった現在では、多くの企業で実践フェーズになっており、実際に成果が出てきていることが多くなっています。

その対象領域は、LoB(Line of Business)にも広がっています。富士通では、そうしたLoBにどうアプローチするのかが課題でした。これまでのやり方だけではLoBのお客様を取り込むことは容易ではありません。また、お客様のタッチポイントの情報を、営業担当者や事業部など組織ごとに、個別に管理していることが課題となっていました。

そこでお客様のインサイトに合わせたマーケティングを行うため、データドリブンなマーケティングへのシフトに取り組みました。その活動のポイントは「デジタルマーケティングの実践」「コンテンツの強化」「グローバルでの成長」の3つです。

デジタルマーケティングでは、社内に散在しているデータをデータマネジメントプラットフォーム(プライベートDMP)に蓄積しました。また、マーケティングオートメーション(MA)の仕組みを使ってリードを獲得、育成して案件化につなげ、営業部門に提供して商談獲得に向かうという仕組みを構築しました。さらに、デマンドセンターでのパイプライン創出し、特定のお客様に対してのアカウントベースドマーケティング(ABM)アプローチを展開しています。

デジタルマーケティング実践のポイント

コンテンツ強化では、デジタルコンテンツ、リアルイベントなどを並行して展開します。また、デザイン思考のワークショップを開催するなど顧客インサイトに迫る取り組みを強化しました。今回のイベント来場者も80%以上がLoB部門のお客様となっています。こうして会場にお越しになった現場の方々をこれからしっかりとフォローできるかが重要と考えています。

グローバルでの成長

また、デジタルマーケティングやコンテンツのグローバルにおける成長という意味では、海外のマーケティングの部隊と議論し要件に落とし込みながら進めています。また、ワークショップスタジオを国内2拠点に加え、海外3拠点にも開設しています。

2018年の取り組みを振り返って

2018年、富士通では「業種アプローチの強化」「コンテンツを『量』から『質』へ」「営業連携~CRMへの顧客接点情報」という3つのポイントを重点的に取り組んできました。
業種アプローチの強化では、業種のイベントに積極的に出展、2018年上半期は15イベントで1万件以上の新規リードを獲得するなど、年間では2万5000件のリード獲得を目標としています。

また、業種のトレンドをしっかりと把握し、お客様の関心ごとに応えることに努め、ターゲットごとに実践例を中心としてコンテンツの質の強化を進めました。さらに、業種ごとの事例を集めたeBookのグローバル提供も開始しました。

営業連携の強化では、様々なタッチポイントのデータを顧客接点情報として蓄積。デジタルマーケティングで発掘したリードと営業の活動が一体化してきています。

デジタルマーケティングの実践から見えてきたこと

実践していく中で、躓いたこともありました。「個人の購買行動だけでは予兆を判断できない」「担当営業が知らないお客様の接点が多数存在する」ということです。個人と組織を分析して、ABMを実践することでその解決を目指しています。また「リージョン・国でケイパビリティが異なる」ことも課題でした。その点については、グローバルでのサービス化や共通化を図っています。

これからも富士通では、お客様の「インサイト」(気づき)にフォーカスを当てて取り組んでまいります。特に、Life Time Value向上に向けたリスニング機能の強化やグローバル合同チームによる運営一体化などを今後も進めていきたいと考えています。

登壇者

富士通 デジタルソリューション事業本部
デジタルマーケティング事業部
事業部長
平山 将

富士通 マーケティングコミュニケーション本部
本部長
狩野 泰博

(登壇者の部署、役職は講演当時2018年12月時点のものです)