2019年、ブロックチェーンはどう動くか

ブロックチェーン技術は常に進歩しているものの、メインストリーム入りはまだ果たせずに、苦戦している状況です。また、各国政府もブロックチェーン技術に対応する規制の策定に四苦八苦しており、このことが、一部企業が導入を尻込みする一因ともなっています。

しかし暗号化分野の専門家の多くが、2019年はID管理やセキュリティをはじめとする分野でブロックチェーンが前進し始める年になるだろうとの見解を示していることも確かです。そこでブロックチェーン・テック・ニューズでは、仮想通貨アンバーを開発したアンブロサスの共同創設者兼CEOであるエンジェル・ベルセティ氏と、スケーラブルなブロックチェーン技術を手がけているサイフェリアムのCEOであるスカイ・グオ氏にインタビューを行い、今年のブロックチェーン関連のトレンド予想を伺いました。

Q. グオ氏にお訊きします。2019年には、ブロックチェーンに関してどのような動きが見られると思われますか?

グオ氏 2019年におけるブロックチェーン関連のイノベーションは、IDとプライバシー分野が中心になると考えます。また、暗号化分野の規制が進みますが、そのことは逆に、我々の業界がセキュリティと職業意識の面でリーダー的存在であることを世界に示してくれるはずです。

Q. 今年は銀行による大規模な導入が見られるでしょうか?

グオ氏 おそらく銀行による大規模な導入は、今年も見られることはないでしょう。多くの銀行は、依然としてブロックチェーン技術がもたらす変化との折り合いをつけている段階にあるからです。ただし、暗号化分野と金融部門の間で、協力する動きが活発化することが予想されます。そのため今年は、そうした関係を本格化できるように信頼を築き、理解を深めることが求められる年であるといえそうです。

Q. 今年は、どのようなブロックチェーン関連のイノベーションを最も楽しみにされていますか?

グオ氏 ブロックチェーンによるデジタルIDの可能性、とりわけ分散システムによって、個人情報に対する主導権が一般の人々の手に戻ってくることを楽しみにしています。将来的には、フェイスブックやマリオットホテル、信用情報会社のエクィファクスで見られたような大規模なデータ漏洩におびえる必要がなくなるはずです。おそらくこれは、近々見られる変化の中で、最も重要かつ根本的なものとなるでしょう。

Q. 特定のブロックチェーンソリューションに関する拡張性の問題に、企業はどのように対処すると思われますか?

グオ氏 分散技術は、幅広い業界で基幹技術になると考えられます。それに伴って各種ブロックチェーンは、拡張性も含めて個々の企業の特殊なニーズを満たせるようになっていくことでしょう。例えばビットコインは単なる価値の保存手段と見なされるようになる可能性がありますが、イーサリアムはそれと異なり、開発者が新しい分散アプリケーションを生み出す際のプラットフォームとしての役割も果たす存在になりそうです。

Q. ベルセティ氏にお訊きします。2019年には、ブロックチェーンに関してどのような動きが見られると思われますか?

ベルセティ氏 機関投資レベルの資金がこの分野に流入し、そのようなトップレベルの投資家による関与や導入が増えることで、2019年は暗号通貨を支える基盤技術であるブロックチェーンが台頭するでしょう。

最近は、セキュリティトークンの急増、暗号化とブロックチェーンに関する規制の枠組みの統合、仮想通貨と価値が安定した資産を連動させるステーブルコインやアセットバックトークンの利用拡大、詐欺以外で初めて発生した暗号通貨の新規公開時の大規模障害とそれに伴う大型訴訟など、はっきりと目立つトレンドが大挙して押し寄せています。しかし、私はそうした表面的な事象よりも、むしろテクノロジーの発展やその利用と普及に、より大きな関心を寄せています。

今年は、ブロックチェーンに拡張性をもたらす新しいアーキテクチャや、ブロックチェーンとIoTとの融合、快適なユーザー体験を備えた分散型アプリケーションの登場を楽しみにしています。それらが実現すれば、いよいよ一般の人々もこのようなアプリケーションを使い始めることでしょう。

また、分散化やブロックチェーンプロトコルを利用する暗号通貨についても、ゲーム理論や暗号技術、セキュリティ、コミュニティの成長、ネットワーク効果、相互運用性といった要素がすべて考慮された、よりクリエイティブなアイデアの登場を心待ちにしています。そのようなアイデアは、これまでに見たこともないような新しい社会経済的事業モデルを切り開く可能性があるからです。それらは、政治的な判断と共に経済的なニーズから生み出されることになるでしょう。世界を一変させる可能性が最も高いブロックチェーンの応用は、このようなものだと私は考えます。うまくいけば、2019年にこれらの分野で刺激的な成果がいくつか見られるかもしれません。

Q. 今年は銀行による大規模な導入が見られるでしょうか?

ベルセティ氏 ブロックチェーンは、データの保存、保護、処理、構成を改善する効果が期待できるため、ビジネスや業界に革命的変化を確実にもたらすと見られています。一方で銀行業界は、信頼性の欠如や、極度の中央集権化、全体的な効率の悪さに、これまで最も悩まされてきました。ブロックチェーンならば、融資や金融サービスを、より簡単で、より利用しやすく、より信用できるものに変えることができます。しかし、それがもたらすものがどんなに素晴らしくとも、銀行による大規模な導入が今年見られるかどうかは、現時点ではわからないというのが正直なところです。

従来型の金融機関に対する信用度は、今も10年前と比べて少しも高まっていないと思います。これに対して、新しい大きな金融危機だけでなく、ひょっとするともっと重大な地政学的大変動でさえ今にも起こりそうな中で、統制を受けず、検閲に耐え、しっかりと上限が決められているデジタル資産としてのビットコインの核にある価値提案は、これからも引き続き重要であり続けるでしょう。

私は、暗号化技術とブロックチェーンは、今後もそれぞれの中核的な価値とメリットを提供し続けていくものと確信しています。その主な理由として、このテクノロジーのしくみを理解している人々が、ブロックチェーンと本物の暗号通貨に対して寄せる信頼が、これまでに少しも失われていないということを挙げておきます。銀行をはじめとする金融機関が時流に乗り遅れないようにするために、変革が必要なことはいうまでもありません。その変革を行う方法の1つが、日々の業務にブロックチェーン技術を取り入れることなのです。

Q. 今年は、どのようなブロックチェーン関連のイノベーションを最も楽しみにされていますか?

ベルセティ氏 私は、今後もイーサリアムがこの分野で最高のイノベーションであり続けると考えています。検閲を受けない分散された環境であらゆる契約を実行できるという分散型コンピュータの概念は大きな意味を持っていますし、多様な社会的・経済的用途を持つ可能性を秘めているといえるからです。イーサリアムにはこれまで多くのライバルが出現しましたが、イーサリアムに匹敵する回復力やエコシステムの強みを備えたプロジェクトは1つもありません。このため、少なくとも私にとっては、イーサリアムがこの分野で最高のイノベーションです。しかし、現時点では、その潜在能力が完全に発揮されているとはいえず、さらなる成長と発展を遂げる大きな余地が残されています。

Q.特定のブロックチェーンソリューションに関する拡張性の問題に、企業はどのように対処すると思われますか?

ベルセティ氏    一般に拡張性は、企業がブロックチェーン技術を導入することで対処するような問題ではなく、プロジェクトレベルで解決すべき課題ですが、すでに多くのプロジェクトでさまざまなソリューションが導入されています。

ビットコインでは、その中心的な開発者たちがいわゆる「ライトニングネットワーク」の利用を検討してきました。これは基本的にビットコインのブロックチェーン上に覆いかぶせる第2の支払処理層であり、少額の支払いや重要性の低い支払いは、すぐにブロックチェーンに保存しなくても機能することを目的としています。もちろん、最終的には保存されるのですが、このような工夫の結果、ネットワークのストレスが減り、拡張性が高まるというメリットがあります。

イーサリアムについては、ネットワークの拡張に関してどれだけ厳密に計画を立てるかをめぐって、今も議論が続いています。しかし、キャスパー、プラズマ、シャーディングなど、これまでに提案された拡張ソリューションでは、元となるイーサリアムブロックチェーンの部分的な処理の集中を軽減するために、それぞれオフチェーンまたはサイドチェーンの仕組みを採用しているという点で共通しており、解決策が見えてきているともいえるのです。

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この記事はBlockchain Tech News向けにブラッドリー・クーパーが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。