「脱炭素社会」の実現へ向けて、ブロックチェーン上で電力を需要家間取引する技術

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電力会社からの要請に応じて電力の使用量を調整するデマンドレスポンス(DR)

地球環境問題が深刻化する中で、世界的に脱炭素化の動きが加速しています。脱炭素化とは、地球温暖化の原因となっている炭素の排出を抑制するために、石油や石炭といった化石燃料からの脱却を目指す取り組みです。

そうした動きの中、現在、石油や石炭を使うのではなく、太陽光発電をはじめ、水素やバイオマスによる発電など、再生可能エネルギーへのシフトが進められています。脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギーへの期待が高まるにつれて、再生可能エネルギーで発電した電力をいかに効率良く利活用するかというエネルギーマネジメントも求められています。

中でも、電力会社など電力を供給する側と、工場や商業施設、オフィスビルなど電力を使う需要家が協力して、電力の使用量を調整する「デマンドレスポンス(DR)」の取り組みが注目されています。

DRの取り組みが普及すると、例えば、電力が足りなくなると予想されるピーク時間帯に、節電に貢献した需要家へ対価を支払うことで、電力使用量の削減や平準化を図ることが可能になります。

ただし、DRには課題が考えられます。それは、電力会社から需要家に調整要請があっても、それに需要家が対応しきれずに、消費電力を予定通りに調整できないケースがあるということです。こうした課題に対し、富士通研究所はブロックチェーンの技術を活用しました。

今のDRでは企業・事業者間で節電した電力を融通し合えない

ブロックチェーンといえば、ビットコインに代表される仮想通貨の基盤技術として知られています。その技術をどう活用し、DRで電力使用量を削減することができたのでしょうか。

DRでは、電力会社から電力消費に関する調整要請が出されると、その要請をいったん「アグリゲーター」と呼ばれる仲介会社が受け付けます。そして、アグリゲーターは、受け付けた節電量をDRの制御下にある各工場や商業施設など需要家に振り分けて節電の要請を出しています。要請された期間に、要請された節電量を需要家が達成すると、電力会社から、まずはアグリゲーターに対価が支払われ、その対価をアグリゲーターがそれぞれ需要家の企業・事業者に要請された節電量に応じて配分する仕組みです。

現状のDRでは、アグリゲーターが需要家と「1対1」でやり取りし、節電量の配分や達成可否を確認しています。そのため、電力消費の目標を達成できない企業や事業者があっても、予定よりも多く削減できた企業や事業者の「余った電力の削減分を融通してもらう」といった「節電した電力の企業・事業者間での融通取引」を行う仕組みは導入されていませんでした。つまり、現在のDRでは、節電中に需要家が協力しながら電力調整することができなかったのです。

そこで富士通研究所は、これまでに開発したブロックチェーン技術を活用し、アグリゲーターと契約した需要家同士で余剰電力を相互に融通する電力融通取引技術を開発しました。

図1 これまでのDRでは、A社とB社との間での電力融通は導入されていなかった

ブロックチェーン技術を活用し電力融通取引の透明性を確保

DRでは、電力の調整要請があった場合、各需要家は短時間で節電の可否をアグリゲーターへ回答しないといけない場合があります。そこで、最初に、取引システムに登録されている売り要求から融通可能な電力の総和を求め、買い要求の中から買える分だけ順番に素早く買い要求を確定することで迅速に節電の可否を回答し、回答後に確定済みの買い要求に対し無駄なく売り要求を配分する二段階からなる電力融通取引技術を開発しました。

この電力融通取引技術を適用し、不足電力の迅速な調達と、無駄のない売り要求と買い要求の配分が可能な電力融通取引システムをブロックチェーン上で構築しました。ブロックチェーンの技術を活用することで、記録した融通取引の内容の透明性を保証し、改ざん不可能な取引内容に基づいて公正な報酬の配分が実現できます。

図2 電力量の総和から購入する分を確定し、次に無駄なく売りと買いを配分

富士通はブロックチェーン技術で再エネ活用の利用促進に貢献

本取引システムにより、要請された節電量の達成が難しい場合でも、他の需要家の余剰電力を自らの節電量の目標に合わせて迅速に購入・補てんすることが可能となり、アグリゲーターから要請される節電量を安定して達成することが可能となります。

富士通と富士通研究所では、今回開発した取引システムを使って、2018年の夏季と冬季の2期分、需要家20拠点分の消費電力の実績ログを使用し、需要家間での電力融通が可能になった場合のシミュレーションを実施しました。この結果、従来の方法に比べて、DRの成功率が最大で約4割向上することが確認できました。

DRは、次世代のエネルギーマネジメントの基盤になり得ます。ブロックチェーンの特性を活かした本電力融通取引技術により、DR成功時の報酬確保が可能となることから、DRの普及を支援し、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを促進できるようになります。

富士通では、事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーとすることを目指す「RE100」に加盟しており、炭素排出力量を削減し脱炭素社会の実現に取り組んでいきます。この一環として、本技術の実環境での検証を進め、今後の実用化を目指します。