金融サービスにおけるブロックチェーンの利用例と未来

分散型台帳であるブロックチェーンがもたらす可能性をめぐり、この数年の間、重役の会議室から技術サミットまで、いたるところで活発な議論が引き起こされてきました。ブロックチェーン技術は、さまざまな産業でのいくつかのユースケースと多数の利用例に後押しされ勢いを増しており、従来型ベンチャーキャピタルからの投資額も前年比で増加しています。Netscribesの調査によると、銀行・金融サービス業界におけるブロックチェーンの世界市場は、2022年までに46億5千万ドル規模に達すると見られます。北米が今のところ競争の先頭に立ち、最大の市場シェアを誇っていますが、これは企業により、この領域の技術開発に向けた莫大な投資がなされているためです。55.7%という過去最高のCAGR(年平均成長率)については、アジア太平洋地域が主な要因になっていると見られていますが、これはブロックチェーン技術によるソリューションに向けた投資が急増したためと考えられます。

ブロックチェーンは新しいチャンスに満ちた世界を金融機関にもたらし、データ透過性、セキュリティ強化、コスト削減、効率性とスピードの向上などのメリットを提供します。

国境を越えた取引

この10年で、国際的な直接送金と銀行間決済は改善されてきましたが、手形交換所の数が多く、しかも世界的な標準が存在しないために、さまざまな溝が依然として残されているようです。ブロックチェーンは、手数料のかさむ断片化したインフラという障壁を乗り越えるために利用されており、その目標のために、最も低い交換レートを提示する流動性提供者に向けた競争市場を作り上げています。こうすることで、現在5~20%となっている送金の平均レートは、2~3%にまで下がる可能性があります。この他に、国際的な規制機関を設置し、ブロックチェーン技術の公正利用に向けた規則を定めることも重要です。

このイノベーションを実現するため、バークレイズはJPモルガン・チェース、中国銀行、ゴールドマン・サックスと協力し、外国為替と対外決済に関するブロックチェーン技術の利用に重点的に取り組んでいます。また、ドイツのフィドール銀行はRipple Labsと提携し、多数の通貨に対応した低レートの資金移動サービスを顧客に提供しています。

保険

保険請求管理に関しては、詐欺行為を見抜くこととリスクを予防することが、あらゆる保険会社にとっての懸念事項であり続けています。調査からは、米国の全請求のおよそ5~10%が詐欺であり、損失額は1年あたり400億ドル以上に達することが示されています。ブロックチェーンは請求をミスなく適時に評価することで、この損失額を大幅に減らすと見込まれています。さらに、保険会社はすでにブロックチェーン技術のおかげで、分散ネットワークを通じ最新の地理情報にアクセスできるようになっています。そのため、保険会社は管理コストを低減し、支払いまでの時間も短縮できています。

アクサやゼネラリのような従来型の保険事業者も、請求処理を確実に行えるようにするため、すでにブロックチェーン技術への投資を始めています。

貿易金融

支払いの遅れ、明細書のコピー、手作業による契約書の作成、請求書のファクタリング、その他の繰り返される問題に悩まされているこの金融分野は、ブロックチェーンを導入することで、具体的な変革を実感できるかもしれません。銀行と金融機関はブロックチェーン技術により、リアルタイムの文書チェック、スマートコントラクトによる分散型の契約締結、支払いの自動化、規制上の透明性、その他さまざまなメリットを享受できます。ブロックチェーン技術には信頼、セキュリティ、リスク軽減、シームレスな処理をもたらす力があり、この領域はそれによって多大な影響を受ける可能性があります。

IBMは、分散型台帳技術(DLT)に基づいたビジネス向けのオープンなブロックチェーンであるデジタルトレードチェーン(Digital Trade Chain)を開発し、ドイツ銀行、HSBC、その他数行からなるヨーロッパの銀行7行間の貿易金融を強化しました。また、シンガポールのDBS銀行はスタンダードチャータード銀行およびシンガポールの情報通信開発庁(IDA)と協力して、二重融資を減らすための概念実証(PoC)を実施しました。

こういった大々的なユースケースに加え、ブロックチェーンは他でもデジタルトランスフォーメーションの波を引き起こしています。それは特に、KYC(顧客確認)文書とAML(マネーロンダリング防止)の合理化、税金の支払い、その他のクリティカルではない金融プロセスにおいて顕著であり、それによって民間セクターと公的セクターの両方と、株式環境が影響を受けています。より広い領域に目を向けると、例えばNASDAQはLinqと協力し、企業がデジタル上でブロックチェーン技術を使って所有権の割合を示せるよう手助けしています。

市場予測

ブロックチェーンの潜在的可能性は多大です。ブロックチェーン技術には以下のような多数のメリットが見込まれています。

  • データの不変性と透過性による効率の向上
  • 競争力のある価格設定とTAT(ターンアラウンドタイム)の短縮に支えられた顧客体験の向上
  • 処理時間の短縮による資本の利用可能性の向上

こういった広範囲にわたるメリットがあるとなれば、業界の主要なプレイヤーたちも、金融の新しい業務モデルを模索するため、トップクラスのフィンテックベンダーと提携しないわけにはいきません。バークレイズ、クレディ・スイス、カナディアン・インペリアル商業銀行、HSBC、三菱UFJ、ステート・ストリートという世界の大手6行が協力し、ブロックチェーンを介する金融取引の合理化に向けて新形式のデジタル通貨を作り上げたのも、当然のことと言えるでしょう。

銀行の約66%と決済代行企業の約90%がブロックチェーン技術を2020年までに導入すると見られています。非公開のブロックチェーンの導入も、銀行からの大きな関心を引き付けています。例えば、非公開のブロックチェーンシステム作成を手助けしているR3 CEVは、UBS、バークレイズ、JPモルガン、ロイヤルバンク・オブ・スコットランドをはじめとする世界の金融大手40社以上からの支援を取り付けています。この他の関連する大きな例としては、イーサリアム・アライアンスが挙げられるでしょう。イーサリアム・アライアンスは、大企業からの莫大な投資を受けて、非公開のブロックチェーンシステム構築に重点的に取り組んでいます。

業界は、フィンテック分野でのブロックチェーン利用による破壊的創造の嵐に見舞われています。銀行業とは関係のない資産管理などの金融サービスであっても、近いうちにこのプラットフォームのメリットを享受することになるでしょう。あらゆる規模の金融機関が、必要な指針を模索して、この台頭しつつある技術を現在のビジネスモデルに活用・統合し、バリューチェーン全体におけるコスト削減、生産性向上、顧客感動の社内ベンチマークを作り出す必要があります。

 

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