【第1回】進化を続ける人工知能~「人」と「AI」が共存する未来~

AI特集:Human Centric AI「Zinrai」

メインビジュアル : 【第1回】進化を続ける人工知能~「人」と「AI」が共存する未来~

現在の人工知能(AI)ブームの鍵「ディープラーニング(機械学習)」

自動車の自動走行や、話しかけた内容を理解し操作を実行してくれるスマート端末、チェスや将棋でプロとの対戦に勝利するコンピュータなど、今、人工知能(Artificial Intelligence 以下AI)が少しずつ私たちの生活に身近になってきています。

人工知能については様々な定義がありますが、富士通では「人間が知能を駆使して行っていることを、コンピュータで実現する」テクノロジーと考えています。
例えば人間は、これまで学んだことや経験を通して得た知識・知恵を使い、物事を判断したり問題を解決したりと、状況に応じて臨機応変に対応できます。ところが通常のコンピュータは、決められたプログラム通りの実行は得意ですが、その範囲を超えた処理は行うことができません。
しかし、最近では人工知能によりコンピュータがプログラムの粋を超え、人のように学習し、判断することができるようになってきました。

図1 人工知能の進化

ここで、人工知能の歴史を振り返ってみましょう。
その歴史は意外に古く、最初のブームを迎えたのは1950年代後半から70年代前半に掛けてのことです。初めて「人工知能」という言葉が作られたのもこの時期です。その後、いったんブームは去りますが、1980年代以降、第2次ブームが到来しました。この時代の人工知能は、まだコンピュータが学習し、判断するというレベルのものではなく、あくまで「人間が知識をコンピュータに教える」タイプのものが主流でした。1990年代なると、チェスのチャンピオンをコンピュータが打ち負かすという出来事が大きな話題をさらったものの、当時は人間の知識をコンピュータに教え込ませ、管理すること自体が難しく、再び冬の時代を迎えました。

図2 ニューラルネットワーク

ところが2010年代に入り、「ディープラーニング(機械学習)」という新しい技術が脚光を浴び、人工知能は第3次ブームが巻き起こります。ディープラーニングとは、人間の脳の仕組みをモデル化したニューラルネットワークの最新技術です。人間の脳は、ニューロン(神経細胞)と、ニューロン間を結んで情報を伝えるシナプスから構成されますが、ニューラルネットワークはそのニューロンとシナプスをモデル化して作られたものです。このモデルは第2次ブームの頃にも盛んに研究されましたが、当時の富士通研究所が開発した移動ロボットのニューラルネットワークはわずか3層でニューロン数は29、シナプス数は232ほど。それが、技術の進展により巨大なネットワークへと移り変わり、コンピュータがより深く学習できるようになりました。2015年に富士通研究所が開発した物体認識のネットワークは7層にまで拡大し、ニューロン数110万、シナプス数7億3000万にも及びます。

図3 ブームの移り変わりに伴うニューラルネットワークの変化

もう少し具体的に見てみましょう。

例えば、顔を見て、それが「人間の顔」なのか、「猿の顔」「犬の顔」なのかを判断するシステムを作るとします。これまでは、エンジニアが「人の顔の条件はこういうもの」というプログラムを作る必要がありました。つまり、人間がコンピュータを教育していたのです。しかし、これでは「人間の条件」「猿の条件」「犬の条件」として考えられることを全てコンピュータに教え込む必要があり、プログラムを作成するだけでも膨大な時間がかかってしまいます。

ディープラーニングでは、大量の画像データをコンピュータに読み込ませるだけで、そこから「人間の条件」「猿の条件」「犬の条件」という法則を、コンピュータ自身が獲得することができるようになったのです。
この背景には、インターネットやビッグデータが普及したことで、膨大な情報が入手しやすくなったこと、計算機の処理能力の向上、そして機械学習アルゴリズムの進化があります。

人工知能は、人間の脅威となるのか!? 人との協調のために必要なことは

このように、常に進化し続けている人工知能ですが、ポジティブに受け入れられるとは限りません。「人間の仕事を奪うのではないか」「SF映画のように、いつかは人間にとって脅威の存在になるのではないか」と否定的な意見も聞こえてきます。

そのような中で富士通は、「人と共存し、人に寄り添う人工知能」を目指して、30年以上にわたり研究開発を進めています。
人工知能の研究において富士通が大切にしているのが、「あくまでも人工知能は、人間だけでは出来ないことや、苦手なことをサポートしていくためにある」という考え方です。一見賢そうな人工知能ですが、実は人間なら簡単にできるような処理が苦手だったり、常識が通用しないことも多々あります。一方で私たち人間は、人工知能ほど速く膨大なデータを処理することはできません。
このように、得意とするエリアが異なるからこそ、「ここまでは人工知能の判断に任せる」「最終的な判断は人間に仰ぐ」などと、裁量の範囲を人間が適切に決めることで、人間と人工知能は共存していけると考えています。

もうひとつ富士通が大切にしているのは、「継続して成長できる人工知能」です。人間であれば失敗から学習したり、経験を積み重ねることで成長していきます。ところが現在の人工知能は、残念ながらそれがまだまだ十分ではありません。人工知能がある知能を獲得したとします。その後、新たに膨大なデータを投入し、さらなる知能を得た時、以前獲得したはずの知能が蓄積されず、失われてしまう可能性があるのです。
人工知能が継続して成長するためには、これまでの学習を活かしつつ、新たな能力を獲得することが必要になります。

また、富士通は人工知能が社会に受け入れられるための「社会受容性」の研究も進めています。
その一例が、九州大学 富士通ソーシャル数理共同研究部門での取り組みです。ここでは経済学、心理学、数学などを融合した学際的研究を進めており、人工知能やICTが社会に入っていく中で、倫理や心理にどのような影響を及ぼすかを研究し、私たちの生活や社会に寄り添った最適な形で人工知能を活用できるような社会的な制度や施策を設計しています。

富士通の知見や技術を体系化した人工知能「Zinrai」

図4 「Human Centric AI Zinrai」体系図

富士通は、2015年11月にこれまでの人工知能の技術を業界で初めて体系化した「Human Centric AI Zinrai(ジンライ)」(以下、Zinrai)を発表しました。
Zinraiのコアとなる技術は、人のように五感を駆使して私たちの気持ちを理解する「感性メディア技術」、機械処理できる知識を創り出す「知識技術」、スーパーコンピュータをも活用して課題解決に結びつける「数理技術」。そしてこれら3つの技術を支える「学習技術」です。日々学習しながら知能を獲得し、成長を続ける「学習技術」により、Zinraiはさらに高度化していきます。さらに、富士通のデジタルビジネス・プラットフォーム「FUJITSU Digital Business Platform MetaArc(メタアーク)」上で、「Zinrai」の技術をサービスとして提供していくことで、お客様に提供する価値を強めていきます。

人と人工知能の協調で豊かな未来を切りひらく

人工知能は、コミュニケーションを通して人に癒しをもたらしたり、医療の進化に役立てたり、ビジネスの新しい可能性を切り拓くなど、今後、私たちの生活の様々なシーンで役立てられるでしょう。
富士通は、人間がもっと心豊かに生きられる未来を目指し、今後も「人と協調し、人を中心とした」「継続的に成長する」人工知能の研究を推進していきます。